転生少女と文化祭2

 あっという間に学園祭当日を迎えた。アニエスは、ピンク色のワンピースを着て、学園の庭にある屋台に立っていた。隣には、同じ色のワンピースを着たコレット。このワンピースは、この屋台でのコスチュームだ。


「沢山売れるといいわね、アニエス」

「そうっすね、コレット様」

 アニエスは無表情だが、テンションが上がっていた。実は、前世を生きていた時からお祭りが大好きなのだ。


 二人が一生懸命呼び込みをしていると、ブリジットとフレデリクが屋台に遊びに来た。

「来てあげたわよ。クッキーを一袋頂戴」

「お、美味しそうじゃないか」

「ありがとうございます、お嬢、フレデリク殿下」

 アニエスは、微笑んでクッキーを手渡した。


 去って行くブリジットとフレデリクの背中を見送りながら、コレットが言った。

「美男美女のカップルでお似合いよねえ……。でも、アニエスとエルネスト殿下のカップルだって負けてないわね。エルネスト殿下は言うまでもなく格好いいけど、アニエスもかわいいし」

 以前はアニエスに嫉妬していたコレットだが、今はアニエスを褒めちぎるようになっている。


「そうだ、剣の模擬戦、もうすぐエルネスト殿下の出番じゃないかしら。こちらの人手は足りているから、アニエス、見に行ってきなさいよ」

「え、いいんですか?」

「ええ、行ってらっしゃい」

「……では、お言葉に甘えさせて頂くっす」

 そう言って、アニエスは屋台を離れた。


 そして、アニエスが模擬戦の行われている体育館に向かっている時、周りが騒がしくなった。見ると、遠くの空に何かがいる。よく見ると、それは青い色をしたドラゴンのようだった。――つまり、魔物。


 アニエスは、ドラゴンのいる方に走り出していた。あのままだと、ドラゴンが人を襲ってしまう。

「アニエス!」

 走っていると、声が聞こえた。エルネストだ。

「外が騒がしいから来てみれば……あれは魔物か?」

「そのようっすね」

「それで、アニエスは何でドラゴンのいる方に向かってるの?嫌な予感しかしないんだけど」

「……薬草実習の件で、私の血で魔物が退散する可能性が出てきました。理由は分かりませんが、私の血で皆を助けられるのなら、助けたいっす」

「……止めても無駄なんだろうね。僕も一緒に行く」

「止めても無駄なんでしょうね。怪我をしないように気を付けて欲しいっす」

 そして二人は、再びドラゴンの方へと走って行った。


「おーい、アニエス・マリエット、エルネスト殿下」

 また呼び止められた。見ると、ロックが手を振っている。ロックは、アニエス達の方に駆け寄ると言った。

「君達、何であっちに向かって走ってるの。まさか、あのドラゴンを倒す気?」

「そのまさかっす」

「騎士団に任せたらと言いたい所だけど、騎士団が来るまでの間に犠牲者が出そうだね。……せめて、これを持って行って」


 ロックがアニエスに手渡したのは、黒くてゴツゴツした石。

「これは?」

「ナディア・フーリエが魔術を使う時に使っていたのと同じ種類の石だよ。書庫の資料を整理していた時に魔術の本を見つけてね。彼女が使っていた石の種類がわかったんだ。僕は珍しい鉱物を集めるのが趣味で、たまたま家にあったから今日持って来た。使えるかどうかわからないけど、時間が合えば君に見せたいと思って」

「ありがとうございます、お借りするっす」

 アニエス達は、礼を言ってその場を後にした。


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