転生少女と第二王子2
エルネストの話によると、エルネストもいい加減婚約者を決めなくてはならない年齢になったので、婚約者探しをしているのだが、難航しているらしい。
どの貴族の娘と婚約しても、貴族同士の派閥のバランスのようなものが崩れるらしい。そこで、いっその事平民と婚約してはという話が出た。平民と婚約すれば、派閥のバランスが保たれる上に、王族が国民を身分によって差別していないというアピールにもなる。
しかし、平民なら誰でも良いと言うわけではない。貴族のしきたり等についてある程度理解があり、且つ国民に愛される人柄でなければならない。
「そこで、僕が君を推薦したんだ。もちろん、君が僕と結婚したくないなら、頃合いを見て婚約解消してもいい」
「いやいや、無理があるでしょう。確かに、お嬢の側にいるから貴族のしきたりはある程度わかりますが、私っすよ?王族に求められる品格の『ひ』の字もないっすよ。もっと適した人材がいるでしょう」
「僕が君を推薦したのには、もう一つ理由がある」
「……一応聞きましょう。その理由とは何っすか?」
「僕の命が狙われる可能性があるから。君は運動神経が良いから、僕が襲撃される事があって、それに巻き込まれたとしても、君が逃げられる可能性が高いだろう?」
確かに、エルネストは命を狙われても不思議ではない。エルネストは貴族の不正を調査する仕事を手伝っていて、既に不正を働いた貴族の恨みを買っている。
しかし、アニエスを選ぶというのはどうにも腑に落ちない。貴族のパワーバランスとか尤もらしい事を言っているが、エルネストの周りの人間がエルネストと平民との婚約に納得するとは思えない。エルネストが語った理由は全て嘘と考えていいだろう。この婚約には裏がある。
アニエスが無言で考えていると、ブリジットが言葉を発した。
「アニエス、あなたこの婚約をお受けなさい。ルヴィエ家に仕える人間が王族になるなんて、ルヴィエ家にとっても名誉な事だわ」
ブリジットに言われたら、断れない。アニエスは、溜め息を吐くと言った。
「……承知したっす。この婚約……謹んでお受けするっす」
それを聞いて、エルネストは嬉しそうに笑うと、また爆弾発言をした。
「実は明日、王城で夜会があるんだけど、そこで僕の婚約を発表する予定なんだ。君にも出席してもらうから、早速ドレスを買いに行こうか」
「は?私が婚約の話を受けるかどうかわからないのにそんな予定立てたんっすか」
「うん。君には絶対断らせないつもりだったからね……ブリジット嬢、アニエスを借りるよ」
「ええ、ぜひこの風変わりなメイドを素敵なレディにして頂きたいわ」
そしてアニエスは、引き摺られるようにエルネストに馬車へと連れて行かれた。
走り出した馬車の中で、アニエスは向かいに座るエルネストをちらりと見た。エルネストは、サラサラの金髪に青い目。とても美しい顔立ちをしている。一方、アニエスは黒いショートカットで、横の髪を少し伸ばしている。目は少しつり上がっていて、瞳は紫色。自分ではこの外見を気に入っているが、美人とは言えない。
自分がエルネストの隣に立って、周りはどう思うだろうか。アニエスは、不安でいっぱいだった。
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