第28話:王女様『たち』の暴走
「……ふえ?」
この上なく間の抜けた声がアンジェの唇から漏れ、一秒前まで猛回転していた思考が完全に停止した。
そんな彼女が現状を理解するよりずっと早く、次のアクションが起こる。
「ふふっ、ちっちゃくて可愛い。それにとってもすがすがしくて気持ちいいですねぇ♪ もっとこの清らかさを感じさせてください♪」
「へぶっ」
アンジェの前に両膝を突いて彼女を抱きしめた
――わ、すごい、シャル様と同じくらいおっきい。いいなぁ……じゃなくて! え、何これ!? なんで私抱きしめられてるの!? と、とにかく離れないと……!
一拍遅れてその柔らかさを認識したアンジェの意識が明後日の方向に逸れかけるが、理解が追い付かなさすぎる状況が一周回って彼女の理性を取り戻させる。
アンジェが戸惑いながらも態勢を整えようとする中、次の衝撃は背後からやってきた。
「……セリ姉さまずるい。私も」
どこか眠たげな声が聞こえたかと思えば、その小さな背中に寄り添うように何者かがぎゅっとしがみついてきた。アンジェとそう変わらない小柄なその体は
彼女はアンジェの首筋のあたりに顔を埋めると、普段は抑揚に乏しいはずの声を微かに弾ませて。
「あぁ……このすっきりする感じ、やっぱりアン姉様からだったんだ……えへへ、すっごい落ち着く……ねぇ、今晩いっしょに寝ていい……?」
文字通り姉の背中に甘えるような、警戒心などまるで感じさせない声色でアンジェにねだってきた。それはまさしく、年少者に対する本能的な庇護欲をかきたてるもので。
――あ、かわいい。……じゃなくて! 違う! いろいろとちがーうっ!!!
またしても流されかける理性を、心の中で盛大にツッコミを入れることでどうにかつなぎとめた。
冷静に考えれば、厳密にはアンジェはまだシャルロットと婚約しただけであり、義姉とすら呼ばれる筋合いではない。そして、そんな――少なくとも現時点での――他人が一国の王族、それもまだ十歳ほどと幼い女子と同衾するなんて許されないはずなのだ。
……見た目十歳のアンジェ相手であれば、仲良し少女同士のじゃれあいにしか見えないし問題ないのでは? などと言ってはいけない。
だが、この場にはアンジェのそんな良識が通じる相手などいようはずもなく。
「あらいいですね! じゃあ私もご一緒して良いですか? ふふふっ、アンジェちゃんと一緒ならよく眠れそうですねぇ♪」
抱きしめる力を緩めたセリーヌが、今度はアンジェに頬ずりしながらそんなことをのたまう。よく手入れされたなめらかな肌が頬を撫でるのは心地よかったが、アンジェの脳内はそれどころではない。
何せ、自分のことを疎ましいとさえ思っているのではないかと考えていた二人が、どちらも明らかに好感度が振り切れたような振る舞いをしているのだ。ある意味、もともと友人として好いてくれているという実感があったシャルロットが同じように迫ってきたときよりも、その衝撃は大きかった。
――! そ、そうだシャル様! シャル様ならっ!
混乱の極致にあったアンジェの思考が、この場にいるもう一人の王女を思い出すに至ったのは、その瞬間のことだった。
以前よりアンジェに対して並々ならぬ感情を抱いていたシャルロット。彼女であれば、自分の婚約者が他の女と一夜を共にすることに対して異を唱えてくれるに違いない。特に、シルヴィはまだしもセリーヌは大の大人。いくら実の姉妹とはいえ少しくらい危機感を持ってくれることだろう。
そんな希望にすがるように、アンジェはシャルロットがつい先ほどまで物凄い浮かれっぷりで歩き回っていたあたりへと目を向ける。
すると、そこには。
「メリッサ、もう少し奥に……そう、そこで良いですわ! さぁお姉様、シルヴィ、寝床の準備ができましてよ! あ、ただしアンジェ様の隣はわたくしの特等席ですのでそこだけはお忘れなきよう!」
だだっ広い応接間の一角を確かな存在感で持って占領する、大人五人は余裕で寝られそうな巨大なベッド。
それを一人で運び込むメリッサと、ご機嫌な様子でメリッサを手伝いつつ満面の笑顔を向けるシャルロットの姿があった。
「何してるんですかメリッサぁぁぁぁぁっ!!! それになんで婚約者が自分以外と寝るためのベッド用意させてるんですかシャル様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?!?」
アンジェ渾身の絶叫が、王城中に響き渡った。
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このお話を某生成AIくんに校正してもらおうとおもったら規約に違反しているとかなんとかで上手くいきませんでした。
別にエロくもグロくもないはずなのに何故……?
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