第166話 落とし子
思いもよらぬところで、思いもよらぬ自らの出生の秘密を聞いた俺とレア。
そして、それぞれの反応はと言うと。
「ほーん」
「そう」
大体こんな感じだった。
〈……其方達……リアクションが薄くないか?〉
「いや、実際どうでもいいからな」
「ええ」
オヤジとオフクロの深夜プロレスの結果で産まれようが、どっかの橋の下で拾われようが、俺にとっては瑣末事。
雑賀ガトウと雑賀エリカ以外の両親など想像出来ないし、する必要も無い。
レアの場合は、もっと別の意味合いで言っているのだろうが。
「──どうでも良くないわよ!!」
うわびっくりした。
いきなり大声出すなよ姉貴。
「え!? はぁ!? アンタ私と血繋がってなかったの!?」
「みたいだな。まあ薄々そうかもなーとは思ってたが」
曽祖父母の代まで遡っても誰一人似てねぇし。尤も俺みたいな日輪に等しいナイスガイが何人も居たら、それこそ地球温暖化がヤバかったと思うが。
つーか、そもそも俺って日本人なのか? 造形整い過ぎてて人種判別できねぇのよな。
「何よそれ……私の五年間の鬱屈はなんだったの……抱き続けた自己嫌悪を返して……」
なんだか俺よりも姉貴の方がショックを受けた模様。
やむを得ん。ここはひとつ天才的な慰めの言葉でもかけてやるとしよう。
「どんまい」
およそ弟に向けるものとは思えぬ目で睨まれた。
敢えて雑な感じに元気付けようって試みだったが、そんなに怒らなくてもいいのでは。
「……帰ったら父さんのことはシバくとして……周防には、謝らないと……」
頭を抱えて盛大に溜息。人前にも関わらずクールぶった振る舞いが剥がれ落ち、すっかり素が出ている模様。
恐らく俺同様、血縁のことなど全く重要視していなくて今まで伝えなかったのだろうオヤジは兎も角、
けっこう脈はある方だと思ってたんだがな。まあ比較対象が悪い。何せ、俺だ。
「……王子様は……時間すら越えて、あの時ボクを……」
あとエイハもエイハで、妙なスイッチが入ってる。
男に入れ上げると持ち前の博愛精神や奉仕願望が悪い方に働いて脳がバグるタイプか。諸々込みで人生苦労しそうだな。
…………。
少しだけ真面目に考えるならば、この二人に関しては、やはり俺が責任を負わなければならないのだろうか。
いやどうしろと。好きか嫌いかで言えば細かい意味合いは置いといて間違いなく両名とも好きだし、放ってもおけないが、重婚罪は懲役二年だぞ。代理政府代表の長男が実刑判決とか、オヤジが記者会見でフラッシュ焚かれながら頭を下げる羽目になってしまう。
〈シドウ様。勇士とは古来より札束風呂に浸かりながら何人も女性を侍らせるものです。勝ちまくりモテまくり、それこそがエインヘリャル〉
頭の中でラーズグリーズが囁いてきた。だいぶ歴史の浅い古来だな。
お前の言う勇士って、そんな怪しい雑誌の裏表紙を飾ってるような存在なのか? それでいいのかワルキューレ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます