第111話 スキップ
「二十一階層から、直接二十四階層まで向かうだと?」
怪訝そうに眉をひそめたオヤジに、俺は義手と右腕を広げて頷いた。
「ああ。ボーパルバニーの奴がやってたことを、こっちでもやる」
移動の原理そのものは、俺の縮地と大きく変わらない筈。
問題は二十四階層へとどうやって照準を合わせるか、だが……。
「あの戦闘以降の二十一階層で過ぎ去った時間は、俺達四人の体感とリンクしてる。まだ一日ちょっとだ」
であれば、ボーパルバニーが階層移動を行った際の空間の揺らぎが、まだ残ってるかも知れない。
そいつを道標として、ありがたく使わせて貰う。
「針先程度にでも穴さえ開けられれば、
あと必要なのは、空間という無形の存在へと直に攻撃を命中させる手段。
そしてボーパルバニー同様、Cランクに相当する出力。
「出力だけならラーズグリーズのオーバーロードで事足りるが、可能なら温存を図りたい。何より、ダンジョン内の捻じ曲がった空間に穴をこじ開けるなんて滅茶苦茶なことをやってのける方法ともなると、知っている可能性があるのはやはりボーパルバニーと同じCランクか、それ以上の奴だけだ」
麒麟、八咫烏、イフリートからは、既に可能な限り情報が抜かれている。
未知を抱える可能性があるのは、新顔のファフニールのみ。
「……分かった。三十分以内に手配させる」
「助かる。ま、オヤジの面子を潰さず済むよう、キッチリ二十五階層まで辿り着いてやるから安心しな」
「そんなことはどうでもいい。生きて帰るとだけ約束しろ」
「ハッ! 俺の心配なんざする暇があるなら、自分の毛根を労わってやるんだな! 白髪染めも使い過ぎるとハゲる原因になるらしいぜ?」
「私はハゲてない! あとそれは都市伝説だ! ちゃんと調べた!」
知っててからかっただけなのに大層怒った後、デスク上の電話でかけ始めるオヤジ。
併せ、深呼吸を繰り返して多少顔色の良くなった姉貴が、軽く肩を回しながらこっちに歩み寄って来た。
「私もすぐ支度するわ。周防にも連絡を入れておくから」
「それには及ばねぇ。何せ俺が縮地で運べるのは一人までだ。当然レアを連れて行く」
その言葉を聞いた姉貴が、再び顔から血の気を引かせる。
「なっ……二人で戦う気!? いくら手負い相手だからって……いいえ、手負いだからこそ今度は最初から本気で来る! もう前の手も使えないわよ!?」
んなもん分かっとるがな、俺を誰だと思ってやがる。天才に手抜かりはねぇ。
第一。
「あのウサギは俺を御指名だ。なのに身内同伴じゃ、シャンパンタワーどころかボトルも入れてくれやしねぇ」
尤も、格好だけなら明らかに向こうの方が酒を注ぐ側だが。
今更過ぎてアレだけど、なんで
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