第82話 新たな特級
週末が明けて学校に行くと、俺とレアが特級探索者に昇級したという話が既に出回っていた。
まあ、このクラスにも何人か誕生日を迎えて探索者活動に就いてる奴は……居たかどうか忘れたが、ああも注目を浴びた以上、丸一日あれば人伝てに情報を耳に入れる者くらい出て来る道理。
そもそも、別に秘匿されるような話でもなし。普通に正規の筋道を通っての昇級なのだから後ろ暗いところなど何ひとつ無い。
寧ろ協会としては大きく喧伝し、今後の活動を盛り立てたいところだろう。
「そう言えば雑賀くんって、あのアウラ様と同じ苗字だよね?」
小首を傾げつつそう尋ねてきたのは、クラスメイトの女子生徒。名前は知らん。
ぶっちゃけると俺が名を覚えている学友はレアと、あと五所川原……じゃなくて木下・カルーアブルー・悠真だけだ。なんだカルーアブルーって、ふざけてんのか。
「ああ、当然だろう。鈍臭……もとい、雑賀アウラは俺の姉だ」
「すごーい! 姉弟揃って特級! しかも記録も大幅更新! 登録から四週間でとか正直意味分かんないけど!」
ファフニールの件が無ければ、もう一週間詰められたんだがな。
しかし天才は焦らない。些細な記録などにも拘らない。
おっと。昨日のレアとの九九戦目の、バンシィ狩りが有耶無耶になったから改めて行った勝負の結果を手帳に書いておかなければ。
種目は格ゲー十本先取で、十勝九敗につき俺の勝ち……と。
「霧伊さんも一ヶ月ちょっとでの昇級だよね! うん、そっちも普通に意味分かんない!」
「シドウ君が二級に上がるまで二週間もかけていなかったら、もう少し詰められたわ。でも他の猿……探索者と臨時チームを組んで足を引っ張られたくはなかったし」
普段は深窓の令嬢ロールであまり他人と口をきかないレアも、今日は機嫌が良いのか割と饒舌。
ともあれ学友達よ、各々思うままに賞賛を述べるがいい。俺は全人類から神と崇められて然るべき天才オブ天才、最強オブ最強のナイスガイだ。普段は恐れ多すぎるのか遠巻きにされることも多いからな。こういう時こそ遠慮は無用だぞ。
…………。
ところで。隅の方で何やらイラついてる二人。
ああ思い出した。クラスで誕生日が最も早いから協会への登録申請に一番乗りし、しばらく学友達に囲まれていた奴等。名前は知らんが。
親の七光だのコネ昇級だのとは、一体誰のことを指しているのか便所で詳しく聞こうじゃないか。場合によっては石狩川でスイミングな。
雑賀家、中でもオヤジは徹底した実力登用主義だぞ。そうでもなければ、こんな
寧ろエイハの熱意に折れ、チームに迎え入れた俺の方が縁故枠を設けているまである。
とは言え、天才かつ最強でナイスガイな俺は、結局のところ誰と組もうがそいつを霞ませてしまうので、そも実力よりも心意気を選考基準に置いている。
尤もエイハも、蓋を開ければ俺から一ツ星を勝ち取った天才だったが。類は友を呼ぶ。
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