第81話 能ある鷹は爪を隠さず
なんかもう、受けた衝撃と言うか感動が大き過ぎるあまり、
ただ、俺もレアも、気付いたら一階に着いたエレベーターから出て来るところだった。
──
「え……な、ど、どうされたんですか、その格好……!?」
突入許可証の確認などを行うために常時エレベータールームへと詰めている協会職員が、俺達を見て泡を食ったように駆け寄ってきた。
確かに、どうされたんですかってレベルだよな。この
「コスプレ……なワケ……十五階層から、降りて……? まさか……サードスキル!?」
俺のナイスガイ係数が高過ぎるあまり声を上げて叫んだ職員の言葉に、周囲の意識が一斉に俺達へと集約され、ガヤが巻き起こる。
無理もない。こんな大魔王級の美形を目にしたら、誰もが注目するに決まってる。
良いだろう。この俺の尊容を拝覧する栄誉を許す。存分に網膜へと焼き付けるがいい。ただし失明しない程度にな。太陽の直視は人間が長く耐えられる行為じゃない。
ふと近くの女性探索者と目が合ったら、その瞬間呆然とへたり込んでしまった。
ただでさえパーフェクトな俺が生物としての位階など押し上げたら、異性への刺激が強過ぎる模様。
「あ、あの……取り敢えず、スキルの解除を……」
一転、大騒ぎになりつつあるエレベータールームの喧騒を見渡した職員が、引き攣った表情で俺に請う。
だがしかし、かいじょ? カイジョ? なんだろう、聞いたことのない単語だが。
不世出の天才であっても、未だ全知全能にはあらず。こちとら国語辞典じゃないんだ。知らない言葉のひとつふたつ、そりゃあるさ。
あ、いや、待った、もしかして解除?
そっか解除ね、了解。お安いご用だ。
──え、解除?
何を?
「無理だ」
「はい?」
「無理だ。カッコ良過ぎて解除出来ない」
「なんだこの人」
困惑しきった職員が、今度はレアの方を見る。
「あの……」
「……美し過ぎて……ああ、ダメ……自分を……直視、できないっ」
「なんだこの人達」
そんなこんな、何度も頼み込まれて仕方なく、不承不承ながらも
探索者用の訓練場が設けられている関係上、白い塔の一階も一応
「元に戻った俺も、やはり宇宙規模でナイスガイだ……」
「元の私もやっぱりスペシャルな天才儚げ美少女……甲乙つけ難いわ……」
諸々の報告のため個室に通され、役職付きの職員が何人もやって来て、てんやわんや。
特級危険区域活動許可証をポケットに突っ込んで白い塔から出たのは、エレベーターで一階に降りた数時間後の話である。
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