第68話 特級探索者
「……助かった……まさに地獄に仏……」
ダッシュで便所まで駆け込み、十分ほどで戻って来たオッサン。
なんでも金で十五階層到達報酬の使用権を買った臨時チームのメンバー二人が並んでる最中、揃って便所に行った後、自分も催したらしい。
「正直、あと一分も持たないところだった……危うく、この歳でとんだ汚名を被ることに……!!」
ちなみに同行者二人が戻ったのはオッサンの離脱から約三分経った頃だ。
俺達が通りかからなかったら、その未来が訪れていたやも知れない。
──このオッサンの名は、
元は陸自のレンジャーで、亡くなったオジキの部下だった人。崩界以前からも少しだけ面識があった。
五年前に協会が発足される以前から代理政府の依頼を受ける形でダンジョンに入っていた、謂わば探索者のプロトタイプみたいな一党の、今となっては皆無に等しい生き残り。
ウルティなんちゃら……ヘカートだかヘカーテだか、近代以降の銃は趣味じゃないんで忘れたが、後ろに背負ってる馬鹿でかいライフルのモデルガンから見ても分かる通り、ファーストスキルは俺と同じ魔弾で、セカンドスキルは付与。
ワイバーンにタロスと、恐らく他には姉貴くらいしか居ないであろう複数枚のDランク
何故こんなに詳しいのかと言えば、サードスキルを発現させるために結構な期間この人とチームを組んでた姉貴が、数度話題に挙げていたのだ。
ついでに歳は三十歳。でもかなり老け顔。なのでオッサン。
「……ところで……雑賀……ああ、姉の方は……来ていないのか……?」
「姉貴は協会専属の二級達に
「そうか……」
ちなみに
あんな性格キツい鈍臭の何が良いのか知らんが、俺の個人的見解を述べさせて貰うとまんざら脈なしでもないから、あと何回か粘ればいけると思う。まだその気があるならな。
「……お前と……そっちは……コレか?」
「ゾッとするようなこと言わないでくれる!?」
「シドウ君。この天才儚げ美少女を捕まえて何がゾッとするようなことなのか、そこのところ詳しく聞こうじゃないの」
グローブを嵌めた手で小指を立てた
冗談じゃねぇ。コイツと付き合うくらいならボーパルバニーを口説いた方がマシだ。
「……雑賀に初めてフラれた時も、同じようなことを言われたっけな……「貴方と付き合うくらいならマンティコアに口説かれた方がマシよ」と……う、ううう、うっ」
人前だと言うのに、さめざめ男泣きを始めた
すげぇな、この人。そんなチクチク言葉を通り越した罵詈雑言吐かれたのに二回目トライしたの? スナイパーは我慢強い人間にしか務まらんとは聞くが、ここまで来ると我慢強い通り越して単なるマゾだな。
「ついでに、二度目の時は……私服のセンスが最悪だから嫌だ、と……」
相当マシになってるじゃん。一回目と二回目で好感度の違いが歴然じゃん。
さっさと三回目行けよ。数回どころか、多分あと一回で落とせるぞ。
「これ……最近買った服の、自撮りなんだが……どう思う……?」
フラれた戒めなのか、懐に入れてあった写真を見せられる。
…………。
うわ超ダセェ。やっぱまだ当分無理だわコレ。
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