第64話 サードスキル発現条件
〈シドウ様。おみ足の調子が戻られるまでの間、私が介添を〉
そう言ってワルキューレ──ラーズグリーズは深いスリットの入ったロングスカートをめくり、ボーンサンダルを履いた足を差し出した。
〈足首を掴んで下さい。低空を飛んで移動します。小走り程度に速度を抑えますので、エイハ様も十分に追従可能かと〉
握力的に結構キツいんじゃないのかソレ。
まあ縮地で小刻みに移動し続けるよりはマシだろうし、ありがたく運んで貰おうかね。
〈それとワルキューレは、基本的に下着を身に着けませんので。古くからの慣わしです〉
何言ってんだコイツ。
……うわ、ホントに穿いてねぇし。
どうしよう。この移動方法思ったよりツラい。片手の握力だけで自重を支え続けるとか、割かし強度高めな筋トレに該当するんじゃないのか。
天才かつ最強な俺が四年かけて練り上げたパーフェクトボディじゃなかったら、早々にギブアップしてるぞ。
〈シドウ様。先程のボーパルバニーについてですが〉
「あ、ああ。なんだ」
大丈夫か俺。適当な休憩場所まで持つのか俺。だがキツいから別の方法にしてくれなんて口が裂けても言えないぞ。
耐えろ俺。天才は基本的に努力しないが、もしする時は白鳥のように水面下で、だ。汗水垂らす姿を他人に見られたら、そいつを洞爺湖か阿寒湖まで連れて行って秘密裏に消さねばならん。
〈恐らくこの階層では十分に能力を発揮しきれなかった筈です。正規の場で相対した際は、今回よりも数段上の力量であると想定を〉
「……そうか。だが、そいつは俺も同じことだ」
次なる小目標は、二十階層でサードスキルの獲得。
アレが手に入れば、いよいよ準備が整う。
「この程度の負傷なら数日あれば癒える。エイハに治させて、アイツが内密に進めている人助けを妨げるにも及ばない。お前が提供した情報の報告や、レアに対するマウンティング返しやらで時間を潰した後は、さっさと特級まで上がるとしよう」
「承知致しました。私も貴方様の矛として、凍土に巣食う震えるもの達へと、オーディンより賜りし光熱の砲雷を存分に振る舞いましょう」
…………。
何言ってんだコイツ。
「お前、まさかサードスキルを発現させるための条件を知らないのか?」
「……? はい、二十階層の到達報酬であること以外は」
怪訝そうに小首を傾げるラーズグリーズ。
まあ、これは確かCランクのガーディアンから提示された情報。レアリティとかセキュリティレベル的なものが高いのかもしれない。
「サードスキルは──十六階層から二十階層までを召喚符無しで踏破することが発現条件だ」
〈なんと〉
そうでもなけりゃ、いくら鈍臭い姉貴だって達成まで十ヶ月もかかるワケねぇだろ。
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