第61話 試練達成
「ああ、認めてやるよレア。お前の言う通りだ」
てかチクチク言葉で指摘などされずとも、本当は最初から理解していたことだ。
あまりにも天才過ぎる俺の才覚と器量で誤魔化し、ゴリ押し続けてただけで──
「俺に射撃のセンスは無い。そこだけ綺麗さっぱり欠けている。あまりにピンポイント過ぎて草も生えん」
ボーパルバニーの一挙手一投足にまで意識を這わせつつ、ガンスピン。
どのような状況であれ、余裕だけは失うべきではない。焦りは視野を狭く、暗くする。
「天から百物を与えられ、そこから更にもう百物を神の懐から掠め取って行ったこの俺に、まさか苦手分野などというものが存在したとは。五ツ星にあるまじき瑕疵だ」
故にこそ、それを認めず、目を逸らし、違うと吠え続けた。
そうする方が素直に認めるよりも余程にカッコ悪いと、どこかでは分かっていながら。
「……とは言え、苦手はものは仕方ない。得手不得手は個性でもある。窮極の天才かつ最強のナイスガイな俺は、その欠落を余りある突出で補うとしよう」
もう無駄弾を撃つのはやめだ。リソースの浪費でしかない。延々と魔弾を撃ち続ければ俺だって消耗するんだ。
ゼロ距離でしか弾が当たらないのなら、ゼロ距離でのみ引き金を引く。
そして、どんな奴が相手だろうとも、確実にゼロ距離まで近付くために手を尽くす。
言うなれば、そう──『ゼロの魔弾士』とでも呼んでおくか。
何か文句がある奴は、校舎裏か便所でたっぷり話し合おう。
「エイハ。俺が時間を稼ぐ。その間に少しでも遠くへ離れろ」
「ッ……だ、駄目だ、そんなの! 言った筈だよ、ボクはキミの盾になるって! だから、時間稼ぎならボクが──!!」
顔面蒼白で反論するエイハ。
何を言ってるんだコイツは。
「馬鹿野郎。俺は、俺の身代わりにさせるためにお前を助けたワケじゃない。この前も、あの時もな」
第一、ノーライフキングを一撃で斬り捨てた攻撃力を相手に、治癒の使用直後でパフォーマンスが落ちてる魔甲じゃ完全に役者不足。例え万全でも耐えられるかどうか。
チェーンソーの前に紙粘土の盾を置いたところで、持ち主ごと裂かれて終いよ。
そもそも。
「俺は死ぬつもりなど毛頭無い。あんな脳みそすっからかんのウサギ相手に俺の命をくれてやるなど、これっぽっちも釣り合わん」
完全に等価交換の法則に反してやがる。
まあ俺の命と等しい価値の何かなど、セカイの命運とか人類の未来とか、そういうレベルの話になってしまうのだけれども。
器がデカ過ぎて困る。いや困らない。流石俺。
〈お? お? 悪口? 悪口? 失礼な、ピンポン玉くらいは詰まってるもーん!〉
「自分で言うか」
適当に骨刀を振るうボーパルバニー。
その太刀筋通りに飛ぶ斬撃──恐ろしく鋭利な真空波が、数百メートル先の岩を豆腐も同然に両断する。
〈よーし、次はダルマ落としだ! 輪切りにして積み上げて、下から順に蹴っ飛ばしちゃうぞー!〉
「やれるもんならやってみやがれ、たかだかウサギ一羽風情が」
だらりと銃口を垂れ下げ、片足立ちのまま姿勢を落とす。
そして、いざ縮地を発動させようと爪先を踏み締める直前──
──懐から、
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