第32話 樟葉エイハ
「まずは自己紹介、させて貰えるかな」
取り敢えず予定通り億疋屋まで、予定と違って三人で訪れた俺達。
隣にパフェを貪るレア、対面に青髪女という配置。
「ボクは
「待て待て待て、AVの導入かよ。んなとこまで真面目に観てる奴なんて居ねぇんだ、名前だけ分かりゃいいっつーの」
「私の方が二センチ高いわ。勝ちね」
「何の勝負だレア」
やたら緊張と言うか、かしこまった様子の青髪女改めエイハ。
しかし高身長麗人系青髪ボクっ娘か。属性欲張りセットの盛り杉謙信だなオイ。
年下の女を子猫ちゃんとか呼んだらキャーキャー叫ばれそうなタイプ。まあ現実に居るワケねぇか、そんな奴。
「俺は雑賀シドウ。見ての通り天才かつ最強のナイスガイだ。で、こっちは」
「見ての通り天才儚げ美少女の霧伊レアよ。よろしく」
「う、うん……よろしく……」
ほう。俺達の名乗りに疑問を挟まないとは、多少なり分かってる側の人間か。
そこらの連中には、天才の放つ威光を感じ取れていないらしいからな。偉大な者とは輝いて見えるのが常識だってのに。
「ところで貴女、コーヒーだけでいいの? 今日はシドウ君の奢りよ」
さらっと俺持ちにしようとするんじゃねぇ。悪魔が。
「えっと……甘いもの苦手で……」
「そんな存在、居る?」
居るだろ、そりゃ。どっちかって言えば少数派なのは間違い無いだろうけどな。
俺もアイスとか好物だし。
「で? さっきは何故俺を『王子様』なんて呼んだんだ? そりゃ俺みたいな高身長でスタイルもパーフェクトな超イケメンを見たら脊髄反射で讃えたくなるのは全人類のゲノムに刻み込まれた共通の習性と言っても過言じゃないのは確かだが、それなら王子様より王様、王様よりも神様の筈だろう?」
レアが二杯目のパフェを注文した頃合、そう尋ねる俺。
さっと頬を赤らめさせたエイハが、口ごもりつつ答える。
「ご、ごめんね。キミの名前を知らなくて、ずっと心の中でそう呼んでたから、つい」
「……ずっと? 貴女、シドウ君と会って、まだ二日か三日でしょ?」
億疋屋までの道中で、レアにはエイハとの関係性を軽く説明しておいた。
たまたまダンジョンで鉢合わせ、一階まで連れ帰った救助者だ、と。
故にこそ、もっと前から俺を知っているような口振りに違和感を覚えた模様。
つーか俺自身そうだし。天才は人の顔を忘れないから、面識があったなら百パー覚えてる筈なんだが。しかもこんなキラッキラの宝塚系、特に印象強いだろ。
「違うよ。ボクがシドウと初めて会ったのは、四年前の旭川だ。それ以降、暇を作ってはキミを探してた」
……四年前?
「旭川……ってことは、もしかして」
エイハの言わんとするところを察し、語末を濁らせるレア。
それを引き継ぐように、本人が解を紡ぐ。
「覚えてないかな。ボクはあの日、キミに救けられた母娘の片割れだよ」
…………。
そうか。そういうことか。
「ああ。勿論」
よく覚えてるよ。
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