第53話 プレゼントボックス

 それからどうにかハテナを起こすことに成功すると、アイラが疑問に思っていたことを尋ねた。


「ねぇ、ルナちゃん。どうしてアタシをここに連れて来たの?」

「あ、それは――」

「それについては、わたしが説明する」


 と言って猫のシールがびっしりと貼られたアタッシュケースを机の上に置いた。


 ――可愛い……。


「……えっと、それは?」

「プレゼントボックス」

「へっ? プレゼント…ボックス……?」


 ――なにそのワクワクドキドキする言葉は……。


「そこに手を当てて」

「え、手?」


 アイラが手のひらを見せると、ハテナがコクリと頷く。


「……手を……当てる」


 恐る恐るアイラがケースの中央に手のひらを当てた瞬間、パチッパチッとロックが外れる音がした。どうやら指紋認証のシステムが組み込まれているようだ。


「開けて」

「…………っ」


 アイラはゴクリと唾を飲み込み、ケースをゆっくりと開けた。


「――――…っ!! これって……」


 中に入っていたのは、衝撃吸収用のスポンジに挟まれたコンパクトフォームの魔剣だった。


 紅色を基調としつつ、所々に金色のバラの装飾が施された、まさに絢爛たるそのデザインにアイラは一瞬で目を奪われた。


「こ、これって……っ」

「あなたの特殊な魔力に対応できるように、わたしが設計した大型魔剣。その名も――――“アグナ”」

「……ッ!? これが…アタシの……魔剣……?」

「そう。これがあれば、魔剣を使い捨てする必要は…――」

「ありがとーーーーっ!!!」


 アイラは大きく広げた両腕でハテナの小柄な体を強く抱きしめる。


「っ!! ……ふっ。苦しゅうない」


 抱きしめられたハテナは大人の笑みを浮かべながら、アイラの背中を優しく擦る。


「……これで整備科に謝りに行く必要もなくなる」

「うッ……!!」


 ――い、痛いところを突いてくるわね……。


 アイラが離れると、ハテナは撫でられた部分を舐める猫のように制服の表面をポンポンとはたく。


 ――もしかして、イヤだった……?


 思わず抱き着いてしまい申し訳ない気持ちになるが、それ以上に目の前に鎮座する自分用の魔剣に意識が向いていた。


「ちなみに“アグナ”という名前はクゥールが付けた」

「え、アイツが?」

『じゅるじゅる……』


 ――じゅるじゅる?


「そして、デザインはルナが担当した」

「!! そうなの、ルナちゃん!?」

「ク、クゥールからお願いされて……。えっと、アイラさ――」

「…………っ!!」

『はうはう……』


 ――はうはう?


「……ふっ、ふふ……っ」


 意味のわからない寝言の連続とあまりの嬉しさに、思わず笑みがこぼれた。


 すると、そのやり取りを見ていたルナが、なにやら心配そうな表情を浮かべていた。


「? どうしたの?」

「ア、アイラさん……」

「ん?」




「…………肋骨ろっこつは、大丈夫なの?」




 ………………あ。

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