第八章 少女への“贈り物”と残された“謎”

第51話 ZERO

 ――英雄の伝説には…………実はまだ続きがあった。




 今から二百年前。英雄が地球に平和をもたらし、忽然と姿を消した直後、岬に避難していた住民たちの目の前に、突然一振りの剣が現れ、地面に向かって突き刺さったという。


 それがのちに『英雄』と呼ばれる謎の存在が残していった剣――――『黒き剣』だったのだ。


 驚いた住民たちは感謝の意を込めて、その剣を崇め奉ったという。






 それから月日が流れ、約三十年前。


 魔獣の目撃情報が相次ぐようになり、その対抗策を模索する中で、“四人”の優れた学者たちが岬の先端に刺さっていた『黒き剣』の分析を行うことを決めた。


 各国首脳の許可の下、厳重な監視体制を敷くことを条件に分析作業が実現した。


 そして、数ヶ月後。分析のため、学者の内の一人が剣に触れた瞬間、剣から黒く光る粒子が溢れ出たため、四人が慌てて剣から離れると、その粒子はゆっくりと消えたという。


 その後。分析を進める中で、当時の目撃者が残した日記に『星みたいに綺麗な光だった』と記されていたことがわかり、後日、改めて順番に触れてみると、やはり光る粒子が剣から溢れ出した。


 その不思議な現象に見入っていると、一人が言った。


 当時、“黒いオーロラ”が発生した際、“小さな光の粒”が空気中に広がり、やがてそれが地上を飲み込んだという記録が残っている……と。


 二百年前の学者たちは、このオーロラが体に悪影響を与えることはないと結論付けたが。


 ――そのとき、人々の体内でなにかが起きた。


 と推測を立てた四人は研究を続け、ついに、人間の体から発せられる特殊な周波数を捉えることに成功した。


 それが――――“魔力”だったのだ。


 そして、苦労の末、人類は遂に“魔具マグ”の実用化という希望を手に入れたのだ。


 魔具の起源になった『黒き剣』には、敬意を表してこう呼ばれた。




 新時代の起源になった存在――――――“ZERO”

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