第27話 予想外の来客
「あッ……ああ……ッ……」
目を開けると、街の景色が一変していた。
人の温かみはなく、鉄屑の残骸すらなく…………そこには、なにもない世界が広がっていた。
『あ……ぁ……ッ……あ…――――』
ここにいた無数の命が、もうこの世にないことに気づいた瞬間、
『――――あぁぁぁああああああああああああああああああああーーーッッッ!!!!!』
悲しみを通り越したなにかが自分の中から溢れた。
「――…ハァッ……ハァッ……ッ!!」
目を開けると、そこに広がっていたのは、跡形もなくなった更地ではなく、見慣れた天井だった。
「……またか……クソ……」
吐き捨てるように呟くと、「はああぁぁぁ……」と長いため息がこぼれる。
――久しぶりに寝付きがいいと思ったら、これだ……。
「………………」
額に腕を当て、ぼーっと天井を見つめていると、ふとコタツの上を手で探った。
だが、その手に当たるものはなにもない。
――あれ、どこいった……? ……あ。
ふと横を見ると、ひっくり返った端末が床に落ちていた。
――どうしてそこに……?
恐らく、寝返りをしたときにコタツの上から落ちてしまったのだろう。
「ふぬぬぬっ……!」
コタツから目一杯に伸ばした手で端末を
「……八時半、か」
ガチャ――
「――入るわよー。あら、起きてるじゃない」
「ん? ……っ!! お前……」
部屋に入ってきたのは、アイラだった。
「授業はどうしたんだよ? 今日は平日だぞ」
「ふふっ、これから受けるのよ」
「はあ?」
アイラは腰に手を当てると、ドヤ顔でクゥールを見下ろす。
「“英雄”の特別授業を、ねっ?♪」
………………………………………………………………。
「……ね、ねぇ、黙ってないでなにか反応してくれない?」
アイラを見つめるクゥールの真剣な瞳が逸れることはない。
「………………」
「な、なによ。人の顔をじっと見て」
「…――風呂、入ってきていいか?」
「……っ!? そ、そういう意味で言ったわけじゃないわよッ! バカじゃないの!?」
「なんだよ、つまんねぇーの」
そう言って頭の後ろで手を組み、
「『つまんない』って言わないでもらっていいかしら?」
「おぉー」
どうやら、アイラのツッコミ力は着実に成長しているらしい。
――勉強の方は…………おっと、それ以上は止めとくか。
「……授業をサボったんだな?」
「まっ、そんなところよ。まさかこのアタシが、仮病で授業を休む日がくるなんてね」
と言いながら体をプルプルと震わせているが、その顔は……
「ふっ、気分はどうだ?」
「っ……意外と、悪くないかも……」
クゥールから目線を逸らすその顔は、どこかワクワクしているように見える。
「お前、バカだけど皆勤賞は取るタイプだろ」
「う、うっさいわねぇ!! いいじゃない、
ぐぅううう~~~。
――まったく……。
「いい音鳴らすなぁ……その腹。
「……病気で休んだことにしてるから、食堂には行けなかったわ」
「お前にしては徹底してるな、師匠は嬉しいぞ……っ」
目頭を押さえるクゥールだが、その目に浮かぶ涙はない。
「いやいや、そこは『
「俺が言うと思うか?」
「いいえ、
ぐぅううう~~~。
「……またか」
「あぁ……あははは……。えっと……なにか食べさせて……?」
「……しょうがねぇーな」
と言いつつも、その顔はどこか嬉しそうだった。
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