第130話 第二のプラン
「お、居た居た。おーいキョウ、ハガネ!」
カジノ近くの食堂で、椅子の高さが合わず食べ辛そうだったハガネを膝に乗せて食事していたら、二頭身形態のカルメンを乗せたピヨ丸に先導されたジャッカル達の姿が。
「とぉうっ」
──へぶっ。
弧を描くようにジャンプし、俺の顔面へと張り付く形で着地する二頭身カルメン。
求肥を思わせるモチモチ質感。人体って不思議。
「首尾は上々だったぞ。やはり西方で俺が掴んだ情報は正しかった」
──もががもがっが。
「はっはっは、そうだろうそうだろう。もっと褒め称えてくれても構わないぞ」
──もがもがが。
「なっ……流石にそんな……仮にも公衆の面前だぞ、えっち……」
「ジャッカル、キョウが何言ってるのか分かるのか?」
「いや全然」
だろうね。だって少なくともエロ呼ばわりされるようなことは言ってないし。
つーかカルメン、そろそろ離れて。
「きゃふんっ」
顔に張り付いたままのモチモチをひっぺがし、空いた席めがけてポイっと投げる。
空中で一回転したカルメンは元の八頭身に戻ると、その長い脚を組んで椅子に腰掛け、軽く伸ばした腕にピヨ丸を留まらせた。
「まあ冗談は兎も角、収穫について話そう。ああいうカジノのVIPルームには各都市の有力者も顔を出すからな、情報収集には打って付けなんだ」
それで拠点を移す度、盛り場に入り浸ってたのか。
……純粋に荒稼ぎを面白がってる部分も大きいと思うけど。
「さて。諸君には、この剣闘都市が今まさに興行シーズン真っ只中だということは話したと思う。そして三ヶ月ほど続くシーズン中には、当然目玉となるイベントも複数開催される。オレ達の目的は、その中のひとつであるコレだ!」
そう言ってジャッカルが懐から引っ張り出し、テーブルに叩き付けた一枚のポスター。
──
「然り! ロカロカだけで五つ、ナナナ共和国全土合わせて八つ存在する剣闘団体が一堂に会し、代表選手を二名ずつ選出してトーナメント形式で頂点を競う歴史ある祭典だ! 今代の共和国大統領が私財を投じて新設した大会ゆえ、開催されるのは今回で二度目だがな」
歴史ってなんだっけ。
「八つの団体合同……? よく分からんが、それってスゲェのか?」
──ボクシングで言うWBAとかWBC間のチャンピオン同士が試合する王座統一戦みたいな感じじゃないかな。
「そう、まさしくそういうことだキョウ! 物分かりの良い君には飴をやろう!」
そろそろハッカ味以外も欲しい。
「つまり、そこにシンゲンさんやハガネちゃんを参加させて南方にも名前を売るのがジャッカルさんの目的ですかぁ? でもそんな大きな大会、各団体に所属してるワケでもない人が参加できるものなんでしょうか」
首を傾げたカルメンの尤もな問いに、ジャッカルがよくぞ聞いてくれたとばかりに両腕を広げた。
「心配無い! 確かにロカロカを本拠地とする五団体は既に枠を埋めているだが、実力的に一枚劣る他三団体は飛び入り参加可能の予選を近日中に催し、そこから一人ずつ代表を選出する腹積もりだ!」
成程。自分達の抱える剣闘士達じゃ勝ち目が薄いから、一か八かで在野の腕自慢を出そうってか。それなら負けても一応の面子は保てるし。
「しかも! 俺が事前に掴んでいた情報通り、前回優勝の団体が連覇を狙う必勝の策として、この南方五大国で活動する特級傭兵を雇い入れている! これは南方に名を売る絶好の機会だ!」
そこまで説明されて、ようやくジャッカルの目論見が読めた。
その特級傭兵とやらを大観衆の中で叩きのめさせるってのが、手っ取り早く名を上げるプランとやらの二つ目である模様。
「三団体の代表選出戦はそれぞれ明後日、四日後、五日後に開かれるぞ! 各自の参加登録は済ませておいたから、頑張ってくれ三人とも!」
「おう、任せとけ! 俺様一回剣闘士ってヤツをやってみたかったんだ!」
「お似合いですもんねぇ」
張り切るシンゲンに対し、褒めてるんだか貶してるんだか微妙なラインの言葉を送るカルメン。
確かに裸同然の格好で闘技場に立つ姿とか、ハマり役通り越して違和感ゼロだけども。
「すやぁ」
ちなみにハガネはお腹いっぱいになったからか話が始まってすぐ寝てたが、まあ大丈夫だろう。寧ろこんな猛獣ロリを相手に戦わなきゃならない予選の方々が哀れだ。
………………………………。
……………………。
…………。
うん? 三人?
──なあジャッカル。その大会に参加するのって、シンゲンとハガネの二人だよな?
「クハハハハッ、何を言ってるんだ! 当然、君の出場登録も済ませておいたに決まってるじゃないか、キョウ!」
さも当たり前とばかりに高笑いながら、地獄みたいなことを言い始めたジャッカル。
その横では頑張ってくださいねぇ、とふわふわニコニコ顔のカルメン。
…………。
嘘だろ先生。
俺が一体何をしたって言うんだ。
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