第9話 七日目の朝
「オレ達に備わったチート能力の実在、とうとう突き止めたぞ!」
朝も早いってのに、大声で何寝ぼけたこと言ってんだろコイツ。
いや、早朝だからこそ実際寝ぼけてるのか。顔洗え。
「ジャッカルさん。他のお客さんも居ますので、騒ぐのは程々に」
「む、済まない若女将」
俺達一行が逗留してる宿屋の娘さんに注意され、佇まいを直すジャッカル。
「おはようございます。今朝のご飯はバケットとベーコンエッグですよぉ」
「焼きたては匂いから違うな! が、欲を言えば俺様、米が恋しくなってきた頃だ!」
ナイフでパンを切り分けながら挨拶するカルメン。それを空きっ腹抱えつつ、どこか物足りなさそうに見るシンゲン。
気持ちは分かる。一週間連続で米が食えないのは俺も辛い。おにぎり食べたい。
「…………すやぁ」
――起きろハガネ。飯だぞ。
「…………むにゃ……寝てない、寝てない、わ」
椅子に座ったまま居眠るハガネを起こし、五人で食卓を囲む。
しかし、この朝食の度に出る謎の野菜、マジでなんなんだ……。
「喜べ! これで我々もチート持ちの仲間入りだぞ!」
食い終わって早々、またジャッカルが騒ぎ始めた。
俺達は、これを特有の発作みたいなものとして扱ってる。病名は勿論、思春期に患う奴が多いアレだ。二十歳まで引きずるとは可哀想に。
昨日はステータス画面を開こうと試行錯誤してた。踊ろうとも叫ぼうとも、結局出なかったが。
……どうでもいいけどコイツ、結構身長あるのに座高低いな。
座っただけで、ひと回り小さく見える。
「うーむ。つっても俺様、別にチートなんぞ要らんのだが。男は裸一貫で崖を登るもんだ」
「…………与えられただけのものを……ひけらかす、恥知らずには……なりたくない、わ」
流石、素で人ならざる領域に踏み込んだバケモノ達は硬派ですこと。
俺は貰えるもんなら取り敢えず貰いたいね。人間だもの。
「そもそも、ジャッカルさんが仰ってる不思議な力とか、流石に信じ難いんですけどぉ」
疑わしげに小首を傾げるカルメン。
いや、二頭身と八頭身を行き来する不思議生物が言う台詞かそれ。
考え方次第じゃ、この面子で一番のUMAだぞアンタ。
「クハハハハッ! 御託を並べる前に刮目せよ!」
高笑いしながらスマホの画面を突き出すジャッカル。
朝食の最中にでも撮ったのか、俺達四人が写っている。
だからどうした。
「…………食べてる姿を撮るなんて、悪趣味、よ」
「それについては謝ろうハガネ。ごめんなさいね」
ここまで謝意が薄っぺらなゴメンナサイとか、十六年の人生で初めて聞いたわ。
しかもハガネ相手に。俺なら無理、絶対無理。怖過ぎ。
――で、その写真がなんなんだ。
「よくぞ聞いてくれたキョウ! 昨晩寝る前に気付いたんだが、スマホに覚えの無いアプリが幾つか追加されていてな! その中に、写真の画像を解析できるものがあったのだ! ビバ鑑定スキル!」
曰く、写ってる物品や人物などの詳細を明らかにできるとのこと。
そして試しに自分を解析した結果、チートの存在に関する表記を見付けたらしい。
「ホントにあったんだな、異世界特典。俺様てっきり厨二病の妄言だとばかり」
「クハハハハッ! 失礼千万なニシローランドゴリラめ、だが許す! 今日のオレは気分がいいからな!」
シンゲンからの中傷もどこ吹く風、再度高笑うジャッカル。アンタも大概失礼だよ。
今回の発見が嬉しくて仕方ないのか、やたらテンション高い。
あ、いや、大体いつもこんな調子だったわ。
「待て、しかして希望せよ! このオレが君達に隠された超常なる力を今、丸裸に暴いてくれようぞ!」
言うが早いかジャッカルはアプリを起動し、俺達の写真を解析にかける。
どうでもいいけど仰々しい台詞の割、絵面かなり地味。
「……まあ、四人分の解析を終えるまでには八時間ほど要るのだが。付け加えると、マシンパワーを食いまくるせいで他の機能も殆ど使えなくなる」
なっげぇなオイ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます