第19話 まさかの遭遇


「ほ~ら!いいから早く見せなさい!」


「い・や・だ!引っ張らないで!」


僕たちが今何をしているかというと、試着室のカーテンを引き合っている。


私服を選び、着たのはいいものの、恥ずかしくて試着室から出られずにいる。


「あ、足元に虫…。」


「え、ウソ!?ひゃっ!?」

まんまと騙された僕は、足元を見た瞬間に、カーテンを引かれてしまった。


「っ!?な、中々に似合うじゃないの。」

朱音あかねちゃんは顔を赤くし、背けた。


「な、なんで背けるの!?やっぱり似合ってない?」

背けた理由を聞くが、朱音あかねちゃんは何も言わない。


今の僕の服装は、

白く、ちょいひざ下くらいまであるワンピースを着ている。

股がスースーして落ち着かない。


「と、とりあえず、それは購入!絶対!」


「え、えぇ?わ、分かったよぅ。」

そうして会計を終えた僕は、ベンチに座ってぐったりとしていた。


「頑張ったわね薫。はい、ジュース。」

朱音あかねちゃんがジュースを買ってきてくれたみたい。


「うぅ~。ありがと朱音あかねちゃん~。」


「結構買っちゃったわね。私服。」


「そうだね~。まぁ、必要になるし、仕方ないね。」

そうして一息ついているところに、


「なぁなぁ。そこの女の子達。今暇?俺たちと遊ばねぇ?」

ナンパだ。3人かな?


「ごめんなさい。私たち暇じゃないので。

ね?かおる。」


「え?う、うん。忙しいね。朱音あかねちゃん。」

朱音あかねちゃんが合わせろという目で、こちらを見てきたが、


「へぇ?かおるちゃんと朱音あかねちゃんっていうのか~!大丈夫大丈夫!少しの間だけでいいからさ!」


諦めが悪いのか、男性達が僕と朱音あかねちゃんの腕を掴んだ。


「い、痛っ。」

「ちょ、ちょっと!離しなさいよ!」


「まぁまぁ。怖くないからさぁ~!」


連れていかれる…!そう思った時だった。


「おい」

「すみません。」


「…!!」

低い声が聞こえ、後ろを確認したら、

「な、中条なかじょう君!?それと、片桐かたぎり君!」


片桐かたぎり。遅いわよ。早く助けなさい。」


「おう。綾瀬あやせ!そいつら友達?じゃねーなら承知しないけど?」


「畏まりました、お嬢様。」


中条なかじょう君は男性達を睨み、片桐かたぎり君は、右手を左胸に当てながらお辞儀をしていた。


「な、なんだよ。彼氏いたのかよ。さ、さっさと言えよな!?」

その様子にビビった男性達は、足早に去っていった。


「あ、ありがとう。中条なかじょう君。片桐かたぎり君。助かったよ。」


「いえいえ。神崎かんざきわたるに連絡くれたからな。そのおかげだ。」

中条なかじょう君は、朱音あかねちゃんに指を差し、僕の頭を撫でてくれる。


「そ、それより朱音あかねちゃん!」

聞きそびれたことあったんだ。


「な、なによ?」


「なんで、片桐かたぎり君とそんなに仲良いの?連絡先持ってるし、片桐かたぎり君はお嬢様とか変なこと言ってるし!」


「っえ、えぇ!?な、なんのこと?気のせいじゃない?というか、それを言うならかおるだって頭撫でられてるじゃない。」


「うっ。話逸らさないでよ~!中条なかじょう君が頭を撫でるのは、きっと撫でるのが好きなだけだよ!」


「っえぇ。」

「ぐふっ」

「フフッ」


「あ、あれ?」

中条なかじょう君は明らかに悲しそうに地面に両膝を付いており、朱音あかねちゃんは呆れている。

その様子を見て、片桐かたぎり君が笑っていた。


中条なかじょう…どんまい。」

と、朱音あかねちゃんが中条なかじょう君の肩に手を置いていた。なぜか、あわれみの目を向けた。


「あ、あれ?どうしたの?」

僕は状況が分からず、困惑こんわくしていた。


綾瀬あやせさんは、本当に涼真りょうまが撫でるのが好きだと?」

片桐かたぎり君がそう聞いてきた。


「えっ?う、うん。前も撫でられたし、よく撫でられるよ?」

前にもされたことを説明すると、朱音あかねちゃんと片桐かたぎり君がニヤッと笑いながら中条なかじょう君を見ていた。


「な、なんだよ!文句あるか!?」

中条なかじょう君が顔を真っ赤にしながら、ワーワーと騒いでいた。


「ふーん?撫でるの好きなんだね?」

「なるほど。撫でるの好きと?」


「で、でもでも、撫でられるの好きだから…いいよ?」

と首を傾げ、恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にして中条なかじょう君に伝えると、


「っ!わ、わぁぁぁ!?い、いいから!とりあえず一緒にご飯とか行こうぜ!」


「お、いいですね。」

「さんせーい。中条なかじょうの奢りでいい~?」


「い、いいから早くしろ!」


中条なかじょう君も、顔を真っ赤にして、そそくさと歩いて行ってしまった。

その後に、続くように片桐かたぎり君、朱音あかねちゃん。


さらにその後ろを、慌てたように着いていく僕。



今日は騒がしい1日になりそうだなぁ。

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