第16話 危険(神崎朱音視点)


…ガチャッ?


「な、なんでカギ閉めたのよ。」


「は?邪魔されねぇようにだけど?」


「あ、あんた。その口調…。」

思いっきり変わってるじゃない。


「あぁ、もうお前相手に面倒だしな。ってか」


腕を掴まれ、ソファに無理やり押し倒された。


「今なんつった?言いふらすだ?させるわけねぇだろ。」


「な、なんでよ。なんであなたはそこまでして本性を隠すのよ。」

そうだ。元はといえば、こいつが隠してるのがいけないのよ。


「んぁ?そんなの、言うわけねーだろ。」


「は、はぁ…?なによそれ。」


「色々事情あってな。変装中…。というか、それで猫被ってるわけ。」


「あっそ!てか早くどいてくれない?」


「無理。綾瀬あやせってやつに言いふらすんだろ?」


そりゃそうよ。だって、


「あなたが危険なんだもの。危ない奴は遠避けないと。」



「あっそ。じゃあ、絶対に言わせないようにしてやるよ。」


「はっ。やれるもんならやってみなさいよ!女性に乱暴するなんt…んっ!?」


私はなにをされている?

片桐かたぎりの顔がすぐ目の前にある。

呼吸も苦しい。


これは…。


「ぷはっ!?あ、あんたなにs…「うるせぇ。」…んぁっ。」


キスだ。これ。なんで、キスされて…るの…?


「口開けろ。」

その言葉にイラっとした私は、逆に固く閉じた。


「…チッ。おい。」


「ひゃっ!?…んっ!?」


耳を触られ、つい声を上げてしまった。


その隙をみて片桐かたぎりは、口の中に舌を入り込ませてきた。


「…あっ……んぁっ……」

自然と声が漏れてしまう。

こんなの変。私の声じゃない。


「ふ~ん?中々にいい声出すじゃん。」


初めての感覚に、頭がボーっとしてきた頃、


「これくらいで我慢してやる。」


「………」


と言われ、唇が唾液の糸を引きながら、離れていった。

口の端からは、よだれが垂れ、呼吸も苦しい。


「もし言ったりしたら、こんなんじゃ済まないから。」

「あと、お前のスマホに俺の連絡先入れといたから。呼んだらすぐ来いよ。それじゃ…。」

そう言って片桐かたぎりは教室から出ていった。


一人になった私は体を起こし、


「なん…で…。」


なんで…。キスしたの…。



その後は早退し、忘れようとすぐに寝た。


かおるからは心配されたが、何もなかったように振舞った。


ただどうしても、この胸のドキドキだけは収まらなかった。

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