第15話 本性(神崎朱音視点)


お昼休み、場所は旧校舎の空き教室。

人が滅多に通らない場所。

現在は物置として使われており、古くなったソファなどが置いてある。


「ねぇ。あんた何考えてるわけ?」

片桐かたぎりを半ば無理やり?いえ、分かったと言っていたし、無理やりではないわね。


「な、何というと…?」


ずれた眼鏡や、乱れた服装を直す彼は真面目っぽく見える。

そう。


…真面目っ。つまり、表面上だけだ。


とぼけるんじゃないわよ。あんた、明らかに猫被ってるじゃないの。なによあの初めて会った時の挨拶。あんな作り笑いでこの私を騙せるとでも?」


仁王立ちをし、ビシィッと指を差す私に対し、


「ははは。何を言い出すかと思えば。それはとんだ誤解ですよ。」


やれやれといった様子である。


「嘘おっしゃいな。そろそろ本性表したらどう?その為に、わざわざこの空き教室まで来てあげたんだから。」


すると、片桐かたぎりは目を見開き、驚いたと思えば、なにやら怪しい笑みを浮かべていた。


「ほら。何よその笑み。怪しさたっぷりじゃないの。」


「アハハッ。いやぁ、あまりにも朱音あかねさんが自信満々に言うもんでね。」


「そりゃそうよ。私に見抜けないものなんt「まだまだですね。」…は?」


「よく考えてもみてください。ここは旧校舎。しかも、昇降口から一番遠い空き教室。」


「…?何が言いたいのよ?」


「分かりませんか?しょうがない人ですね…。まったく。」


眼鏡を取り、前髪を上げた片桐がずんずんとこちらに寄ってくる。


「な、なんでこっちに来るのよ。止まって。止まりなさい!」

寄ってくる片桐かたぎりに対し私も一歩、また一歩と後ろへと下がる。


そしてついに、


・・・・・トンッ


「…っ!!」

後の壁に背中が当たってしまった。


「フッ。もう逃げられませんねぇ?」


気が付いた時には、悪魔の笑みを浮かべた片桐かたぎりが目の前にいた。


「こ、来ないで!」


これ以上近づかせまいと、両手で彼を押そうとするが、


「無駄ですよ。そんなの。所詮しょせんは貴方も女性。非力には変わりありません。」


片手で両手を掴まれ、頭の上に固定される。


「なっ!?は、離しなさいよ!」

せめてもの抵抗として、片桐かたぎりを睨む。


「ハハッ。なんですかその顔…。」

すると、片桐かたぎりの顔が、私の耳元に来て


「誘ってんの?」


「んなっ!?」

びっくりするほどの低い声で、囁くと同時に耳にキスをしてきた。


「…んっ!?」


「えぇ…?なんですか?耳弱いんですか?あなた。」

ニヤニヤと、笑みを浮かべながらこちらを煽ってくる片桐かたぎり


「う、うるっさいわよ!というか、今のがあなたの本性なのね!」


「さぁ…?どうでしょうね?」

というと、片桐かたぎりが私から離れていく。


「い、いつか絶対に本性暴いて、その余裕無くしてあげるわ!覚悟してなさい!」


「へぇ?どうぞ?やってみて下さい?」


「フンっ!かおるにも言いつけてやるんだから!」

そう言って扉を開け、廊下に出るが、


「は?行かせるわけねーだろ。」

という声が聞こえた瞬間、



無理やり教室の中へ戻され、ガチャッという音が聞こえた。




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