第10話 自覚


・・・・・・なぜこうなった。

目の前には、【女子更衣室】の札が。


「ほら。そこに立たれても邪魔よ。さっさと中へ入りなさい。」

と、朱音あかねちゃんに押され、更衣室へ入ることになった。


周りは下着姿の女の子ばかり。

今すぐ逃げ出してトイレで着替えたい。

そう思ったが、朱音あかねちゃんが逃がしてくれなさそうなので、渋々と目を閉じ、着替え始める。


「えっ?あんた。そんな派手な下着着てるの?」

朱音あかねちゃんが、僕の下着姿を見て、驚いた声を出した。


今の僕は、黒い下着を身に着けており、お母さんに

「ご、ごめんなさい。これしかなかったわ」

と苦笑いで言われ、仕方なく着けたものだ。


「ち、ちがうよ!朝起きたらこの姿だったから、お母さんに急遽借りたんだよぉ~!」


すると朱音あかねちゃんは、

「あぁ。そういう。あの男共に見られなくてよかったわ。」

と安心したように言った。


「う、うん。そんな似合ってなかったかな…?」

(ま、まぁ。似合ってないのは僕だっ分かってるけどさ…。)


「えっ!?」

「いや、そうじゃなくて、男子が見たら襲われそうだからよ…ボソッ」


なにやら朱音あかねちゃんがボソボソと呟いているが、うまく聞こえなかった。


それからしばらくし、教室に戻ると、男子達も着替え終わっていた。


体育終わりで暑く、お腹あたりの制服を摘まみ仰いでいると、慌てた様子で朱音あかねちゃんが声を掛けにきた。


「ちょ、ちょっとかおる!あんた女の子っていう自覚持ちなさいよ!」


「っえ?な、なに?急に。僕なにかした?」

突然のことに頭が追い付かなく、あたふたしていると、


「それよそれ!現在進行形で仰いでいるじゃない!」


仰いでいる制服に指を差しながら、朱音あかねちゃんは注意してくる。


「え、えぇ?だって暑いじゃん~!」

実際、さっきまで男子達がここで着替えていたので、熱が籠っているのだ。


「まったくもう。周り見てみなさいよ。みんなあなたの事見てるわ。」

やれやれといった様子で額に手を当てる。


「・・・?・・!?////」

周りを見てみると、確かに皆こちらを見てるのだ。

すぐさま仰ぐのをやめ、机に突っ伏す。


「あ、そうだ。かおる?」


「な、なぁに?朱音あかねちゃん?」


「一緒にお昼食べない?」


「!!いいの!?」

顔をバッと上げ、ニコニコと笑う。


「え、えぇ。いいわよ。」

(まったく。犬みたいね。彼女。)

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