角度

石村まい

角度



渡り漁夫ラヂオのやうな声で来る


とろろ昆布の襞おそろしき余寒かな


絵葉書をつるんと落とし冴えかへる


散髪のけふは菫に近き椅子


パレットにみづの自由よ山笑ふ


光とは託さるるものいかのぼり


ガラスペンに泡の迷へる日永かな


くるぶしの魚影に似たり草朧


風船を手放す角度にてもらふ


しゃぼん玉の影たづさへて終はりけり


春光やパンの二倍のかみぶくろ


甘皮の地層見てゐてのどかなり


ざらめまた指に見つけて雪の果


めたさに変はる不思議や風車


春眠のなづきに櫂の揺れてをり


たましひへその尾をもどす花筏


乳液の乾くはやさや鳥曇


ねぢあやめあなたの喉に仏など


ティーカップに頬のありけり花疲


行く春のシロップに果皮しづめけり

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角度 石村まい @mainbun

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