第43話 賠償金徴収

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 043_賠償金徴収

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 アバロン5世が謁見の間に入ったところで、広大は城内の全てに聞こえるように穴を通じて言った。


「召喚せし者を暗殺するなど、あってはならぬ。よって天罰を下す」


 まるで神の声かと思えるような演出だ。

 城内にいる皆がその声を聞き、慌てた。


「落ちつけ! 何者かが城に侵入した! 探すのだ!」


 サライド老師の一喝。

 だが、次の瞬間、城は激しい揺れに襲われた。


「な、何ごとだ!?」

 玉座に縋りつくアバロン5世、そして床に這いつくばる家臣たち。


 広大は城の地下に穴を開けたのだ。

 支える土台がなくなったことで、まるで大地震のような揺れが城を襲ったのである。


 立っていられないほどの揺れが30秒ほど続き、城は一気に崩落した。

 城内にいた者の多くは生き埋めとなり、城外にいた者がわずかに生き残った。


 生き残った者たちは、口々に神罰だと言った。

 アバロン5世が異世界から召喚した人を暗殺し、騙して人間の国を攻めたから天罰が下ったのだと。


 アバロン5世をはじめとする王族が生き埋めになり、主要な家臣も軒並み死んだことで、戦争をしているどころの話ではなくなった。

 前線への補給が滞り、前線を維持できなくなった軍はあっけなく崩壊したのだ。

 箍が外れたことで内戦状態に陥ったことを、広大は知らなかった。





 広大はシュリーデン帝国の帝城にやってきた。期限の1カ月の日がきたのだ。

 国はミスリル貨10万枚、公爵は1万枚、侯爵は5000枚、伯爵は3000枚、子爵は1000枚、男爵は500枚を賠償として支払うとなっていたが、さて、どれほどの賠償が行われるのか。


 第五皇子あらため、皇帝はすでに謁見の間で待っていた。

 その横には宰相補佐となった第四皇子の姿もあった。


「……今、どこから?」

「俺たちのことはいい。賠償金は用意できたか」

「国に関しては用意した。支援をと言ってきた貴族にも、対応している」

「ほう、支援するだけの余力があったか。もっと吹っ掛けておけばよかったか」

「それは勘弁していただきたい……」

「今さら金額を増やすようなことはしない。俺はあの老害と違って約束はしっかり守るからな。もちろん、今日ここに賠償金を持ってこなかったヤツもしっかり滅ぼす」

 新皇帝は疲れた表情で力なく笑うしかできなかった。


 謁見の間にうず高く積まれた金箱を全部確認するのは面倒だが、やらなければいけない。ただし、時空操作で異空間に収納したものは、数を知ることができるので、その中に収納するだけで数は勝手に計算してくれるのだ。


「皇帝からの賠償金はしっかり受け取った。これは請書だ」

 皇帝に請書を渡すと、チュニクスが次の者を謁見の間に入れた。


「フェルドバルド・フォン・アルンドート公爵だな」

「そうだ。これがミスリル貨1万枚になる」

 台車に載せた金箱が運ばれてくる。

 これも収納して数を数える。

「フェルドバルド・フォン・アルンドート公爵からの賠償金、しっかりともらった。請書だ」


 次から次に貴族たちが謁見の間に入ってくる。

「10枚足りないな」

「そんなはずは!?」

「間違いない。今日中に持ってくればよし、そうじゃなければ賠償の意志なしとして滅ぼす」

「た、頼む! もうこれ以上は!?」

「屋敷を売ってでも作ってこい」

 広大は一切の妥協をしない。約束は約束だ。1枚不足でも許さない。


「あ、悪魔! お前は悪魔だ!」

「その悪魔を怒らせたんだ。諦めろ」

「ぐぬぬぬ……」

 その貴族は皇帝に泣きついてミスリル貨10枚を借金することになった。

 その光景を見ていた貴族の中に、皇帝に借金を申し込む者が数人現れた。彼らは意図的に少ない数を持ってきたのだろうが、広大は甘くなかったのだ。


「これで終わったか。チュニクス、きてないヤツはどれだけいる?」

「はい。伯爵が1人、子爵が3人、男爵が2人です」

「意外と少なかったな。まあいい。おい、宰相」

「なんだろうか」

「今のヤツらの屋敷と領地がどこか教えてくれ」

「分かった。こちらへ」

 空になった金箱がまさに山のように積み上がった謁見の間を後にする広大たちを、皇帝は大きなため息を吐いて見送った。


 その翌日、王都の貴族街から、伯爵の屋敷が1軒、子爵の屋敷が3軒、男爵の屋敷が2軒、消失した。

 さらにその数日後には、同じ貴族の領地の屋敷も消失したのだった。

 屋敷内にいた者は全てその庭先の放り出され、当主とその家族だけは消息不明になったと皇帝に報告が上がってきた。


「愚か者たちが。あの者らが甘い相手でないと、なぜ分からぬのか。はぁ……」

 広大と対峙したことがある皇帝には分かるのだ。あれは異常なのだと。肌に粟を生じるほどの恐怖の塊なんだということが、本能のようなもので分かっていた。





 広大は天空城を自分好みに改造していた。

 ダンジョンマスターになった広大の膨大な魔力に支えられた天空城改造は順調に進んでいる。

 また、地球の広大の家に小さなホールを繋げっぱなしにし、アマスの広大の居住スペースでもネットの電波が届くようになっている。


「ダンホン。屋敷の配置は終わったか」

「はい。ダイの指示通り、配置しました」

 広大が帝国から持ち帰った貴族の屋敷は、天空城の迎賓館のように使う予定だ。もちろん、訪問客の予定はない。

 家具や美術品は品の良いものはそのままだが、趣味の悪いものはダンジョンの能力で別のアイテムに変わっている。

 それに、屋敷内にあったお金は全部回収している。結構な金額を貯め込んでいたとだけ付け加えよう。


 また、貴族の当主とその家族は奴隷としてここで働いている。

 城の掃除や雑草むしりなど、なんやかんやしている。そういったことをしたことがない人たちばかりだから失敗ばかりしているが、チュニクスが根気よく指導している。

 ただし、やる気がないため、覚えは悪いのだった。


 ダンジョンの中のことなので、奴隷が掃除をする必要はないが、これが彼らへの罰なのだ。





「なあ、ダンホン」

「なんでしょうか?」

「このアマスでもこのスマホみたいに通信ができないかな」

「そのスマホを解析してもいいですか?」

「分解したり壊さなければいけど」

「問題ありません。私にスマホを向けてください」

「おう」

 魔導石から光が発せられ、スマホに当たった。

「解析が終わるまで一分ほどお待ちください」

「おう」

 一分ほどでダンホンの解析が終わった。


「そのスマホに私の分体をコピーしておきました」

「はい? 分体って何?」

「ダンジョンコアの機能をコピーしたのです。アマスでも地球でもそのスマホを使うことは可能です」

「マジか……。だけど、他のスマホにもダンホンの分体をコピーしないと使えないんだろ?」

「問題ありません。地球のネットにはすでに繋がっておりますので、分体を世界中のスマホに送っておきました」

「ぶふっ……ウィルスかよ……」

 その日、世界中のスマホだけでなく、ネットに繋がるありとあらゆるコンピューターに、ダンホンの分体が入り込んだのでした……。


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