第42話 天空城のダンジョンコア

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 042_天空城のダンジョンコア

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 三度目の呼び出しで、桂小太郎は徴兵制度を撤回すればいいと気づいた。

 その数日後には、国防大臣が徴兵制度の再導入を断念すると発表があった。


「国防軍は撤回しないのね」

「したいの? 国防を強化しないと、また岩谷さんや秋津さんたちのような拉致被害者が出るかもしれないよ?」

「そ、それは……」

「まあ、コウがどうしてもと言うなら、協力はするよ。よく考えてみなよ」




 徴兵制度の撤回から十日後、世界連邦機構の多国籍軍にこの国の国防軍も参加する姿があった。


 多国籍軍の派遣により、C国は五つの国に分割統治されることになったが、旧共産政権が根強く残っている地域では新たに樹立した国に対して攻撃が行われている。

 そのため、新五カ国と多国籍軍は、その地域に侵攻を開始した。


 R国は併呑された国が再び独立を果たし、さらに侵攻を受けていた国も国土を回復している。

 また、そういった国々の侵攻により広大なR国は国土を減らし、さらに七カ国の国が誕生することになった。

 このJ国も長年不法占拠されていた北方の島々を取り戻すことができ、さらに樺太を併呑するにいたった。樺太に関しては七カ国がJ国への併呑を了承しており、多国籍軍に参加した国々を含め、七カ国ともしっかりと調印がなされた。

 また、R国の大統領は、捕まっていない。戦争犯罪者として指名手配されているが、今後どうなるかは不明だ。


 まさに激動というべき世界情勢ではあるが、広大とチュニクスはアマスへと向かった。

 まず『カウワーヌ・ダンジョン』へ向かい、ダンジョンマスターの権限を一部与えている前ダンジョンマスターと会う。


「おい、あの天空城は、どうやれば俺の管理下に置けるんだ?」

「えーっと……たしか城のどこかにある魔導石に魔力を込めると、活動を再開するんじゃないかな?」

「疑問形かよ」

「だって、私のダンジョンじゃないもん」

「……そうだな。俺が悪かった」

「どどどどどうしたの!? なんか悪いものでも食べた? 脳みそ腐った?」

「ぶっ飛ばすぞ、お前」

「ひゃい!」


 今度は天空城に向かい、城のどこかにあるという魔導石を探した。

 そして城の奥でそれらしきものを、チュニクスが発見した。

「ダイ様。これではないでしょうか」


 十メートル四方の部屋の中心に、両腕で持ち上げられそうな普通の石が置いてあったのだ。

「これが魔導石? たしかに石には見えるというか、石以外には見えないな。とりあえず、魔力を込めてみるか」


 広大が魔導石に手を触れて魔力を流す。

 魔法は普通に使うが、魔力を意識して動かしたことのない広大だったが、意識してみると魔力というものを感じることが出来た気がした。


 魔力を注ぎ込まれた魔導石は徐々に灰色から白になり、さらに魔力を込めると青く光り出した。

「これ、どれだけ魔力を注げばいいのかな?」

「申しわけございません。私には……」

「いいよ、チュニクスが知っているわけないもんな」


 そんなことを話していると、魔導石が浮いた。

 さらに光は徐々に強くなっていき、やや眩しいLEDライトくらいの発光量となった。

「浮いたよ、これ」

「浮きましたね」


 すると、今度は部屋全体が明るくなり、廊下にも灯りがついていく。だが、どこにも光源はないのである。


「この魔導石の光とは考えられないな」

「明らかに異常です」

「まるで壁自体が発光しているようだ」

 さらに、入り口が音もなく閉まった。これまで扉はどこにもなかったのに、閉まったのだ。


「閉じ込められたのか?」

 穴があるから広大はまったく焦っていない。


「あ、開きました」

 チュニクスが扉に近づいたら勝手に開いた。

「自動ドアかよ」


 そして魔導石の周囲にいくつものホログラムが浮かび上がった。

「『天空城・ダンジョン』を再起動します。これよりよろしくお願いします、マイマスター」

「これが魔導石で決定だな」


 この魔導石がダンジョンの核であり、魔物の生産からダンジョンの成形まですべてがこの魔導石を通して行えるのである。

 そして、魔導石はダンジョン毎に形が違う。『カウワーヌ・ダンジョン』では鏡のようなものだった、ここでは空中に浮かぶ光る石になっているのだった。


「マスターというのは、俺のことか?」

「はい、マイマスター」

「なら、これからはダイと呼んでくれ」

「分かりました。ダイ」

「で、お前のことはなんと呼べばいいんだ?」

「おいでも、お前でも、ワンコでも好きに呼んでください」

「ずいぶんと卑屈だな……前のマスターがクズだったと聞いたが、そこまでなのかよ。はぁ……。じゃあ、お前は……なんにしようか」

「『なんにしようか』で登録します」

「却下!」

「………」

「今のは撤回する」

「分かりました」

(こいつ、冗談なのか本気なのか分からん……しかし、どうしようかな。天空の城だからラピ●タはあきらかにやりすぎだな。滅びの言葉で崩壊しそうだ。やべー、名づけって難しいんですけど)


 広大は考えに考えた。たっぷり十五分は考えて、スマホまで取り出して調べた。

 スマホは地球に小さな穴を繋げれば、電波が届くのがいい。


「よし、お前はダンホンだ!」

「……時間がかかった割に、イマイチですね」

「うっ……」

 広大はダンジョンコアの精神攻撃に轟沈した。


「ダンジョンコアが名前を選ぶのですか!?」

「ダンジョンコアでも意志はあります。ちゃんとつけてほしいと思っただけです」

「ちゃ、ちゃんとつけたじゃない! ダイ様があれほど必死に考えたのですよ! それがたとえウ●コでも受け入れるべきでしょ!」

「さすがにウ●コは拒絶します」

「もののたとえよ!」

 そんなやり取りがあったが、ダンジョンコアの名前はダンホンで確定したのであった。





「さて、ダンジョンコアの名前も決めたし、ケジメをつけにいくか」

「ケジメですか?」

「俺をこの世界に召喚し、そして帝国の老害バカが俺にコンタクトを取る原因になったヤツだ」

「ああ、あの国の王ですね」

「結局、魔王討伐じゃなく、人間の国に侵攻したことだし。罰は必要だろ?」


 城の中に穴を繋げて、アバロン5世とサライド老師、あの時の顔があるのを確認した。

 そのついでに元クラスメイトたちの今を確認したのだが、城を出て自立(?)しているようだ。


 元クラスメイトの半数は、現在戦場にいっており、残った半数は冒険者をしてる。

 冒険者としての評判はよくない。力があるため、かなり横暴なことをしている現場を目撃した広大であった。


「俺がやり返す相手は、元クラスメイトではないから、放置でいいか」

 彼らを呼んだのは、この世界の人間だ。だから、何をされても、それはこの世界の人間が受け入れるべきだろう。少なくともこの国の人間は、受け入れるべきだと広大は考えている。


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