五章
第29話 カウワーヌ・ダンジョン50層
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029_カウワーヌ・ダンジョン50層
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順調に『カウワーヌ・ダンジョン』の探索が進み、広大たち3人は50層へと至っている。
15層を越えた辺りから冒険者の数は劇的に減り、30層になると滅多に姿を見ることはなくなった。
43層で冒険者の姿を見たが、それが最後だった。43層ということを考えれば、ミスリル級の冒険者であろう。
冒険者ギルドで聞いたが、過去に勇者パーティーが62層に到達したのだとか。それでも62層は最上層ではないらしい。
勇者パーティーでさえ壊滅しそうになるくらい、62層の魔物は強く罠は厭らしいものだ。
1層から30層までは砂漠だが、31層からは極寒の地。50層は極寒だけでなく吹雪いている。温度調整つきのインナーを着ていても、凍りつくくらい寒いエリアだ。
吹雪きのおかげで視界も悪い。だが、広大は時空支配によって気配を察知でき、チュニクスはその鋭い感覚で魔物の気配を感じる。
コウは危機感知があり、さらに魔力感知というスキルを入手したことで、視界が悪くても魔物の接近に気づけるようになった。
「スノーハウンドです」
雪のような白い毛は極寒の地でも凍りつかず、牙を剥きだしにして3人に飛びかかってくる。
「聖なる結界」
コウの神聖魔法による防御結界に、スノーハウンドが阻まれる。
「穿て、スターアロー!」
チュニクスが新しく手に入れたスキル・矢弾創成は、属性矢でも創り出せる。
天に向かって放たれたその矢は、いくつもの星となり、それがスノーハウンドに降り注ぎ、その白い毛皮を貫いて血の色に染めた。
「ホーリーボム」
オーリーの杖の先に光が収束し、飛翔。吹雪いた大気を斬り裂きスノーハウンドに着弾した瞬間、それは弾けるように光を解放すると、ビッグバンのような巨大な爆発を起こした。
巨大な犬型のスノーハウンドは、33オグス級の黄色アイテムブロックを残して消え去った。
「完勝だね、コウ、チュニクス」
「これも上限解除薬のおかげよ」
「まさかまた上限解除薬を飲めるとは思ってもいませんでしたから、ダイ様にもっと恩返しをしないといけません!」
2人は上限解除薬100をそれぞれ1本ずつ飲んでいる。あのメガロガメロからドロップした上限解除薬200よりは効果は低いが、それでもレベル上限を100も上げてくれた。
おかげで50層でも十分戦えるだけの戦力になっている。
広大が戦わなくても2人が強いから、戦闘はそこまで苦労しない。
2人でも苦労するような魔物が現れたら広大が出て瞬殺する。
戦闘が終われば広大がお金とアイテムブロックを回収し、3人で小型雪上車に乗り込んで進む。この小型雪上車と防寒具がなかったら、途中で心が折れていたかもしれない。本当に文明の利器はありがたいと思っている広大だった。
雪煙を上げて走る小型雪上車が急ブレーキした。ボス部屋の巨大な扉が雪の中に聳え立っている。
50層のエリアボスともなると、軽く30メートルを超える巨体だ。そんな化け物を閉じ込める門、それがボス部屋の扉なのかもしれない。
エリアボスは白い鱗のトカゲだった。その巨体からドラゴンか!? と広大は心をときめかせたが、スノーリザードであった。
「ちっ」
「ダイ君。舌打ちしたー」
ドラゴンでなくて、非常に残念。
「ダイ様にはあの程度のトカゲでは相手にする意味もないということなのでしょう」
不敵に笑うチュニクスが、背に担いでいた弓を手に取った。
「コウ。いきますよ」
「まったく……了解」
「援護は?」
「要りません!」
「要らないわ!」
2人はゆっくりと前に進みゆく。
コウの均整の取れたスタイルと、メリハリがあるチュニクスの後姿を、広大は見送った。
戦いは一進一退を極めた。
スノーリザードの体を覆う鱗はまるでダイヤモンドのように美しく硬い。その鱗を破壊してダメージを与えるのは、至難の業だ。
対してコウとチュニクスは、スキルを駆使して戦う。
コウは守りの盾があり、どちらかというと前衛も熟す。それでもスノーリザードの攻撃を受けたら、さすがに大きなダメージを受けるだろう。
「フレアアロー!」
炎の矢がスノーリザードに降り注ぐ。氷のような体のスノーリザードは、高熱の矢の雨を嫌がって暴れる。
怒りに我を忘れたスノーリザードが大きく口を開いた。
ゴーッ。吹雪のブレスが発せられた。ただでさえ凍える寒さなのに、そのブレスのおかげで離れて見ていた広大は、心臓まで凍るかと思う寒さを感じた。
コウとチュニクスは極限の集中力で、吹雪のブレスを躱した。追いかけてくる冷気が、チュニクスの尻尾を少し凍らせた。
「大事な尻尾を、よくもやってくれましたね!」
弓を引き絞ると、そこに矢が現れる。燃え盛る矢の熱量は、まるで太陽を思い起こさせる。
「燃やし尽くしなさい! ソーラーフレアアロー!」
チュニクスの怒りの炎は、スノーリザードには大きなダメージを与えた。
現代知識に毒されつつあるが、その分科学的な知識を蓄えているチュニクスの一撃は、スノーリザードにとって脅威の攻撃だったのだ。
「私もいるわよ! いけ、ホーリーメテオ!」
神聖魔法による巨大な隕石が、落下の断熱圧縮で高熱を蓄えてスノーリザード目がけて進む。
チュニクスの怒りの炎に焼かれるスノーリザードは、避けることもできずにホーリーメテオをその巨体に受ける。
激しい衝撃によってダイヤモンドのように硬い鱗が剥ぎ取られ、その熱によって融解し、質量によって押し潰された。
「おめでとう、コウ、チュニクス」
広大は2人とハイタッチした。
「ダイ君が後ろにいると思うと、心に余裕ができてなんとかなったわ。ありがとう」
「はい。ダイ様のおかげで無事にスノーリザードを倒せました。本当に感謝いたします」
「2人は大げさだな。それがコウとチュニクスの実力なんだから、誇っていいんだよ」
広大は何もしてないと、2人を持ち上げる。
実際に広大は見ていただけだ。それが2人に安心感を与えたとしても、戦ったのはコウとチュニクスでなのだと、太陽のような笑みを浮かべる。
「お、ドロップは銀色のスキルブロックだ。いいスキルが期待できそうだね」
35オグス級の銀色のスキルブロックに、期待が膨らむ。それを時空支配の収納スペースに保管すると、51層への階段が現れる。
階段を上って51層に入ると、そこで転移ポータルに触る。末尾が1の層に転移ポータルがあり、これに触って登録しておくといつでも使えるようになるのだ。
転移ポータルに登録しておけば、1層の転移ポータルから一瞬で移動できるようになる。
スキル・穴を持つ広大には微妙なものだが、一般的には便利な移動手段なのだ。
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名 称 コーダイ・アナヤマ
種 族 ヒューマン
情 報 男 19歳 地球人 冒険者
状 態 健常
職 業
レベル 350 / 999
攻撃力 3515 / 9999
防御力 3520 / 9999
スキル 穴 改変 棍棒術 体術 剛腕 加速 爆破魔法 時間魔法 ドロップアイテム品質向上 頑丈 スキルブロックドロップ率上昇 千里眼 先読み 再生 防御術 鑑定眼 土魔法 時空支配 盾術 絶対領域 築城術
器 量 21 / 99
適 性 コレクター 探究者 匠 国士無双 猪突猛進
才 能 博学多才 現実主義 夢想家
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名 称 チュニクス
種 族 森狐獣人
情 報 女 20歳 冒険者
状 態 健常
職 業 道先案内人
レベル 300 / 360
攻撃力 1850 / 2220
防御力 1755 / 2100
スキル 斥候術 アイテム鑑定 弓術 幻影魔法 矢弾創成 狙撃威力上昇
器 量 6 / 10
適 性 冒険者 探検家 狩人
才 能 探索
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名 称 コウ・シマサキ
種 族 ヒューマン
情 報 女 19歳 地球人 冒険者
状 態 健常
職 業 氷の聖女
レベル 335 / 370
攻撃力 2695 / 2980
防御力 2700 / 2990
スキル 聖女の才 神聖魔法 氷結魔法 魔法威力上昇 守りの盾 風魔法 錬金術 薬術 危機感知 魔力感知
器 量 10/ 20
適 性 聖女 魔女 薬師
才 能 癒し 鼓舞
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