第23話 上限解除薬200

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 023_上限解除薬200

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 地球の家に帰った広大たちは、50オグス級青色アイテムブロックを囲んだ。

「さて、こいつを開けるのだが、諸君心構えはいいかね?」

「いつでもいいわよ」

「ダイ様のタイミングで開けてください」

「しからば……」

 妙に時代がかった口調の広大がアイテムブロックを捻る。


「これは薬品か」

 小型の瓶に入った黄色の液体が出て来た。まるで栄養ドリンクのような色だ。


 チュニクスの目が見開かれる。アイテム鑑定を使ったのだろう。

 広大も鑑定眼を使うと、なんと上限解除薬だった。


「これを飲んだらレベル上限が200ポイント上昇し、それに伴って攻撃力と防御力の上限値も上昇、さらに器量も3枠増えるらしい」

「聞いた限り、かなりいいものね。恐らくアマスでオークションにかければ、かなりの額が動くようなものだと思うわ」


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 ・名称 上限解除薬200

 ・階級 精霊級アイテム

 ・効果 レベルの上限値を200ポイント上昇させる。それに伴い、攻撃力と防御力の上限値も上昇する。さらに器量の上限値を3枠増やす。

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「俺は多分これ以上増えないと思うから、コウかチュニクが飲めばいいよ」

「現在のレベルを考えると、チュニクスが飲むのがいいわね」

「これはとても貴重なものです。もう二度とドロップしないかもしれません。そんなものを私が飲むなんてできません」

 広大とコウが譲ると、チュニクスが慌てた。


「何言ってるのよ。チュニクスがこれを飲んでもレベル上限は私のほうが上なのよ。それにダイ君についていくんでしょ? レベルが60のチュニクスでは、いずれついていけなくなるわよ。これを飲めば、少なくともダイ君を除いた人類最高峰の一角に食い込めるレベルになるのだから、もっと彼のために働けるようになるはずよ。それでも飲まないの?」

 コウも飲みたいと思っているが、今後のことを考えたらチュニクスが飲むほうがいいと判断した。


「うっ……いいの……でしょうか?」

 チュニクスが上目遣いで許可を求め、広大は大きく頷いた。

 こうしてチュニクスのレベル上限が200ポイントも上昇することになった。


「さて、次はこの金色スキルブロックだ」

 これまでにも多くのスキルブロックを手にしたが、50オグス級の金色は初めてだ。期待で胸が膨らむ。


「何が出るか楽しみだわ」

「きっとダイ様の役に立つスキルが出ると思います」

「それじゃあ、開けるね」

 広大がスキルブロックを捻った。

 表れた巻き物を鑑定すると……。


「時空支配。空間と時間を支配するスキルみたい」

「時空支配というと、異世界にもいけるのかな?」

「いけるみたいだよ。ただし、結構消耗するらしいから、使い時を間違えたら大変なことになるかもしれないよ」

「それほどなの?」

「俺の穴と違って、その時空支配は相当魔力を消費するらしいよ。魔力は鑑定の神器でも俺の鑑定眼でも見えない隠しステータスだからね、気をつけるのに越したことはないさ」

「ほしいけど、やっぱりいい。これはダイ君が使って」

「え、俺? なんで俺? それに異世界じゃなくて、短距離ならそんなに魔力は使わないみたいだよ」

「短距離でも私だと魔力切れが怖いもの。その点、ダイ君なら滅多なことはないと思うのよ」

「コウがそう言うなら、チュニクスは?」

「私はコウより魔力が少なそうですから、遠慮しておきます」

「そうか……じゃあ、俺が使おうか」


 チュニクスが上限解除薬200を飲み、広大が時空支配を取得した。その代わりではないが、偽装のネックレスはコウが使うことになった。


 もしコウが国やなんらかの組織に狙われても、容姿を変えることができれば逃げる役に立つだろう。もっともコウがレベル上限の270まで上げてしまえば、それこそ大がかりな軍隊が相手でない限り彼女を無力化するのは難しくなる。


「次のダンジョンに入る前に、あれを取っておこうか」

「そうね。私たちも18歳だし、自動車の免許はあったほうが便利だものね」

 レベル上げの合間に運転免許を所得する勉強をしてきた。運転テクニックは、異世界アマスに車を持ち込んで乗り回して身につけた。

 2人ともレベルが上がったおかげか、勉強したことはすぐに頭に入った。

 明日住所がある東京の免許センターへいくことにしたのだ。

 学校にいってないと身軽に動けるのがいい。


「ダイ君は本当に大学に進学しないの?」

「ああ。大学にはいかず、表向きはデイトレーダーをするよ」

 異世界召喚の騒動のおかげで学校に通えない広大を含めた11人は、本来なら出席日数が足りない。

 政府(文科省)は例外として、広大たちに高校卒業の資格を与えるとしている。

 もちろん、大学進学時はしっかりと入試を受けて合格しなければいけない。

 だが、先ほど少し触れたが、レベルが上がったことで広大たちの知力はかなりのものになっている。勉強したことはほとんど忘れないのだ。


「ダイ君だったら、デイトレーダーでも儲けられると思うけど、今の世の中、学歴は大事よ」

「学歴に縛られるつもりはないかな。それにいつまで地球で暮らすかも分からないからね」

「まさかアマスに移住するつもりなの?」

「そうなるかもしれないし、ならないかもしれない」

 広大が地球にいる必要があるのは、広島の祖父母と北海道の祖母がいるからだ。3人ともそれなりに高齢だから、広大よりも早く亡くなるだろう。その後、広大がこの地球に縛られる理由はなくなるのである。


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