第22話 50オグス級青色アイテムブロック

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 022_50オグス級青色アイテムブロック

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「今日も大量ですね」

 冒険者ギルドの換金所でアイテムブロックの数を見た職員が、満面の笑みを浮かべた。


「今日はダンジョンボスを倒しましたので、換金は今回で最後です」

「それは残念です。では、買い取りを始めましょうか」

 広大がアイテムブロックを捻ると、アイテムが出てくる。15層の魔物ともなると9オグス級がほとんどで、それなりの換金額になる。


 ほとんどのアイテムブロックをアイテムにし、換金したところで黄色のアイテムブロックになった。

「これはオーリーの杖ですね。魔法の威力が上昇する魔道具です」

「それはこっちで使います」

 広大はオーリーの杖をコウに渡した。


「ありがとう。大切に使うわ」

「いい装備も実力の内って言うから、もっと良いものを揃えよう」

 コウが女神のような美しい笑みを返してくれると、広大も嬉しくなる。


 黄色のアイテムブロックの換金は進む。9オグス級ともなれば、魔道具が出やすい。

 黄色から今度は青色のアイテムブロックになる。青色はたった3個しかないが、そのうちの1個はあのメガロガメロからドロップしたものだ。さすがにいいものが出るだろうと、広大はその青色のアイテムブロックをカバンに戻そうとしたのだが……。


「お、お待ちください!」

 職員が焦った顔をして広大を止めた。まるで幽霊を見たかのような表情だ。


「どうかしましたか?」

「そ、その青色のアイテムブロックを見せていただけないでしょうか?」

 広大はメガロガメロのアイテムブロックを売る気はない。見せてくれと言われただけなので、見せるだけならとカウンターの上に戻す。


「こ、これは……。少々お待ちください!」

 職員が三度頭を下げて、汗をダラダラと流して換金部屋から出ていってしまった。


「どうしたんだ?」

「恐らくはそのメガロガメロのアイテムブロックが原因でしょう。なにせ50オグス級の青色ですから」

「チュニクスの言う通りだと思うわ。それしか考えられないもの」

「つい出してしまったが、マズかったかな……」

 しばらくすると、先ほどの職員がもう1人を連れて部屋に入ってきた。


「お待たせして申しわけありません。こちらは私の上司になります」

「イビニアと申します」

 イビニアは礼儀正しく、礼をした。

 彼女はエルフのように耳が長いが、エルフとは何かが違う。そこでチュニクスが「シルフです」と耳打ちする。

 それで広大は手を打ち、納得した。シルフは精霊族と言われる種族で、エルフに似ている容姿をしていると以前チュニクスに教えてもらったことを思い出したのだ。


「どうも、俺はダイといいます。こっちはコウ、そっちがチュニクスです」

 コウとチュニクスが黙礼すると、イビニアは微笑みを浮かべながら返礼した。


「お手数をおかけいたして申しわけありません。その青色のアイテムブロックを見せていただけないでしょうか」

 イビニアの要望に、メガロガメロのアイテムブロックをスッと差し出す。


「ま、間違いないです。これは50オグス級です。青色の50オグス級です!」

「ダイ殿。失礼ですが、これをどこで?」

「ダンジョンですけど?」

「もしかして15層のメガロガメロのですか?」

「ええ、そうです」

 シルフもエルフ同様美人が多い。イビニアもご多分に漏れず絶世の美女である。そのイビニアが大きく目を見開くが、綺麗な人はどんな表情をしても美形である。


「この50オグス級のアイテムブロックを、当ギルドに預けていただけないでしょうか!」

 ガバッと身を乗り出し、鼻と鼻がくっつきそうなくらいの顔の距離。

 染みもシワもないイビニアの顔は、まるで美の女神の彫刻のように見えた。


「ゴホンッ。これはこちらで使うつもりなので」

 コウの手が広大の顔を押しのける。


「そ、そうですか。そこをなんとかなりませんか?」

 イビニアは必死で頼み込むが、さすがに広大たちもこれを預ける気にはならない。

 絶対にいいものが出る。予感はしないが、予想はできる。


「あのメガロガメロをどうやって倒したのですか?」

「それは秘密です」

「どうしてもですか?」

「ええ、どうしてもです。そういうのは、俺たちの生命線なので」

「……分かりました。これ以上は聞きません」

 イビニアはとても残念そうに流し目をした。広大はドキリとしたが、そこにチュニクスが割って入る。


「他のアイテムブロックを片づけましょう」

「そうです。早く片づけましょう」

 コウも入ってきてアイテムブロックの青色をコウが捻った。


「これは偽装のネックレスですね。容姿やステータスを偽装できます」

「それはこっちで使います」

「はい。悪いことには使わないようにお願いします」

 念を押されたが、悪用なんてする気はないので微笑みで返事をする。


 最後の青色アイテムブロックは、チュニクスが捻った。

「スーパーポーションです。どんな怪我や病気でも治します。部位欠損も再生させるものです」

「それもこっちで使います」

「承知しました。では集計をしますので、しばらくお待ちください」

 職員が集計した金額を了承し、広大たちは代金を手にする。


「ダイ殿、コウ殿、チュニクス殿。今日はありがとうございました。もしあの50オグス級の青色アイテムブロックを手放してもいいという時は、是非声をかけてください」

「それはないので、諦めてください。それでは、ありがとうございました」

 イビニアはしつこいなと思いつつ、広大ははっきりと拒絶した。


「そういえば、ダイ殿たちは昇級を拒んでいるとか、理由を聞かせてもらってもいいですか」

「鉄級で不便はないからです」

 シュライド共和国のアルガナスの町で冒険者登録し活動していた時もそうだったが、広大たちは黄銅級に昇級できるのにしていない。

 黄銅級までは構わないかと思っているが、青銅級になると指名依頼があるためだ。

 指名依頼は商人や貴族などから名指しで依頼されるもので、チュニクスのように騙されることもあるため昇級はしなくていいと考えていた。


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