第13話 アイススパイダー狩り
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013_アイススパイダー狩り
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アルガナス森林のダンジョンの5層。
広大たち3人は、数日かけてアイススパイダーを狩り続けた。
アイススパイダーは体高2.5メートルはある巨大な蜘蛛型の魔物で、糸で獲物を絡めとる以外に氷の魔法を使ってくる面倒な相手だ。
広大たち3人は、毎日冒険者ギルドにアイススパイダーのアイテムブロックを大量に持ち込んで換金している。
300個ほどのアイテムブロックから、アイスシルクは1つしか出ていない。
「さて、今日も狩りますか!」
「コウさんはこういった地道な狩りでも腐らないのですね。多くの冒険者はこのような不毛な狩りは嫌がるのですよ」
広大の楽しそうな姿を見たユーナは、不思議そうに首を傾げた。
「ん? なんで? 素材集めは基本中の基本だろ? 真面目にコツコツと狩りをしないと、出るものも出ないと思うけど?」
色々なゲームをやり込んだ広大にとって、ドロップ率が極めて低いアイテムを手に入れるために、魔物を狩り続ける作業は苦痛ではない。むしろ苦労したら苦労したほど、この上ない達成感が得られるのだから止められないのだ。
アイススパイダー狩りを初めて20体ほどだった。銅色のスキルブロックがドロップした。
「スキルブロックのドロップ率もかなり低いな。これを開けたら、開けた人がスキルを覚えるの?」
「スキルブロックを開けますと、巻物が出てきます。ですから、誰が明けても問題ありません」
「それなら巻物を売ることもできるの?」
「はい。スキルは安いものでも金貨5枚で引き取ってもらえます。購入する時はもっと高くなりますが」
「ほうほう」
金貨5枚は50万円相当の価値になる。なかなかのお値段だ。
ただ、スキルを覚える枠が99枠ある広大だと、出たものを全部取得していってもいいくらいである。
「帰ってから開けるから、風魔法が出たらユーナのものだね」
「なんの役にも立ってないのに、申しわけありません……」
「いやいや、荷物持ちしてくれれるから、それで十分だよ」
再びアイススパイダー狩りを始め、その日も100個近いアイテムブロックを入手した広大たちは、冒険者ギルドに入った。
換金所でアイテムブロックを開封し、出てきたアイテムを職員が鑑定して引き取っていく。
そして残り20個程のところで、目当てのアイスシルクが出た。
「やっとか。ふ~だな。アイスシルクはこちらで引き取ります」
珍しいアイスシルクは冒険者ギルドとしても欲しかったが、冒険者の判断が優先される。
全部のアイテムブロックを開封し終わると、3人はアシャモの防具店を訪ねた。
「アイスシルクを持ってきました」
「早かったな。見せてみろ」
アイスシルクを確認したアシャモは、3日後に取りにこいと店を閉めてしまった。これから作業に入るようだ。
「それじゃあ、最後はスキルブロックだね。どこか落ちつける場所に案内してくれるかな」
「はい。こちらに」
ユーナの案内で品の良いレストランに入った。ユーナと店員は顔見知りのようで、すぐに個室へ案内される。
「飲み物は何にいたしますか?」
ギャルソン(給仕)の質問に広大とチュニクスが果実水を頼むと、ユーナも同じものをと頼んだ。
「ここ高そうだね」
広大は高級そうな店構えに気後れする。
「個室があったほうがいいと思い、ここにしました」
ユーナは通い慣れていて、個室が使いたかったからここにしたと言う。
「スキルを覚えるから、人目があるところよりはいいでしょう」
チュニクスはここで問題ないとほほ笑んだ。
全員に飲み物が行き渡ると、注文の前にスキルの件を片づけることにした。
「風魔法が出たらユーナに、それ以外は俺かチュニクスが使うでいいかな」
「はい。そのお約束ですので、私は問題ありません」
「私はコウ様の指示に従います」
頷いた広大は、ユーナの前にアイテムブロックを差し出した。
「ユーナが開けてくれ」
「ありがとうございます。開けさせていただきます」
アイテムブロックを開ける時は、欲しいスキルを強く念じると出てきやすいという迷信があるそうだ。それをチュニクスから聞いていた広大は、ユーナにスキルブロックを開けてもらうことにした。
ユーナはアイテムブロックを手に取ると、ごくりと喉を鳴らす。目を閉じ、集中し、気合いを入れる。
「開けます!」
目をカッと開けたユーナが、アイテムブロックを捻る。
スキルブロックから光が放たれ、現れたのは時代劇に出てきそうな巻物だった。
「時代劇の小道具みたいだな……。チュニクス、鑑定をお願い」
「はい。お任せください……これは弓術でした」
「弓術か。ユーナには悪いが、これはチュニクスに使ってもらうよ」
「はい。風魔法ではなかったので、どうぞチュニクスさんがお使いください」
実際に弓を使うチュニクスが、このスキルを得るのが一番いいという判断である。これには、誰も異存はなかった。
チュニクスが開けると、巻物がスーッと消えていく。
開けた人の器量に空きがあれば、それでスキルを覚えるのだ。
「どう? 何か変わった感じがするの?」
「はい。何かが入ってきた感じがします」
チュニクスはアイテム鑑定を持っているが、人物鑑定はできない。スキルについては冒険者ギルドの鑑定の魔道具か、ダンジョン内の鑑定の神器で確認するしかない。
「おめでとうございます、チュニクスさん」
「おめでとう、チュニクス」
「ありがとうございます。これもお2人のおかげです」
チュニクスはこれで器量が3/5になった。
「それじゃあ、食事にしようか」
鈴でギャルソンを呼び、お任せで料理を頼んだ。
料理が運ばれてきて、楽しい食事会が始まった。
「ユーナの風魔法だけどさ、俺としてはあと10日粘ってダメなら、他のダンジョンにいきたいんだ。どうかな?」
「私は今日で終わりだと思っていましたから、10日もいいのですか?」
「いつ出るか分からないから、10日の期限にした。それで出なかったら、アルガナス森林のダンジョンは諦めてもらいたい」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
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