第6話 外国へ
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006_外国へ
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チュニクスは森狐族の獣人で、緑色の髪の上に狐の耳がある。また尻尾もちゃんとあり、お風呂に入って手入れするとふわふわだった。
「こんなに気持ちよいものが、この世界にはあるのですね」
風呂上がりのチュニクは頬が朱に染まり、濡れた髪を拭く仕草が妙に色っぽく見えた。そんなチュニクスに広大はドギマギし顔を逸らすのだった。
「風呂が気に入ったようでよかったよ」
女性用の下着は、祖母のものしかない。さすがに祖母の下着をつけさせるわけにはいかないし、ブラジャーはチュニクスの大きさに合わなかった。
悪いと思いつつ、広大の未使用のボクサーパンツを穿いてもらい、ブラジャーはなしの状態でティーシャツと短パンを着てもらっている。
その姿は思春期の広大には、さすがに目に毒であった。
すぐにネットでチュニクス用の下着や服を注文した。
「ポーションで助けてくださっただけでなく、奴隷から解放してくださり、こんなに優しくしていただき、どうやって恩返しをすればいいのか……」
「そんなことを考えなくていいよ」
「いえ、一生をかけて恩返しをさせていただきます」
「お、重いね……」
「それほどのことをコウダイ様はしてくださったのです」
「ま、まあ、一生というのはあれだけど、俺は君の世界のことを知りたいんだ。だから、一般常識やダンジョン、魔物などのことを教えてくれたらそれでいいよ」
「私が知る限りのことをお教えさせていただきます!」
すでにチュニクスは奴隷ではない。助けた恩はあるが、一生をかけた恩返しは広大自身が望んでいない。重すぎる話だ。
チュニクスを助けて5日。彼女は地球の暮らしに慣れすぎるくらい慣れていた。
情報はテレビやネットでいくらでも取れ、美味しい食事を三食食べ、炊事洗濯清掃をそつなくこなしている。
洗濯機や掃除機などの家電の扱いなどは、広大より手慣れた感じだ。
鼻歌を歌いながら掃除機をかけている彼女の姿は、家庭的な女性を体現化しているように見えた。
「ねー、チュニクス」
「はーい。どうかしましたか、コウダイ様」
洗濯を干し終わったところで、広大が縁側に出てきた。
「これなんだけど、何か分かる? あの熊を倒したときのものなんだけど」
チュニクスたちを襲っていた熊は、ブラッドベアという魔物だった。
そのブラッドベアからお金とガチャカプセルがドロップした。
お金は以前聞いたから、今度はガチャカプセルがなんなのかチュニクスに確認する。
「これはドロップアイテムです。これは青色ですから、アイテムでも希少なものが手に入ると思います」
ガチャカプセルは正式にはアイテムブロックという。この他にスキルブロックがドロップすることがある。
アイテムブロックはアイテムの希少度が低いほうから赤、黄、青。
スキルブロックは希少度が低い方から銅、銀、金。
その色で得られるアイテムの希少度がある程度分かるようになっているのだ。
今回広大が得たアイテムブロックは、かなりいいものが出ると期待できる青色であった。
「へー、これにアイテムがねぇ。青色のアイテムブロックは、希少度が高いものが出てくるのか。開けてもいいかな?」
「問題ないと思います。しかしさすがはブラッドベアのドロップアイテムですね。青色は滅多に出ないのですよ」
「ふむふむ。楽しみだね。それじゃあ、開けるよ」
アイテムブロックを捻ると、アイテムブロック自体は一瞬で消え去る。同時に光の集束が始まって、何かの形を模っていく。
「お、これは指輪?」
意外と小さなもので、宝石もついていないシルバーの指輪が現れた。
「指輪はいいけど、どんなアイテムなんだろうか?」
「私はアイテム鑑定のスキルを持っていますので、お任せください」
「おお、頼むよ」
チュニクスに指輪を渡して、鑑定をしてもらう。
「これは認識阻害の指輪です。気配を消すだけじゃなく、ステータスも偽装できるものです。階級は精霊級で、上から2番目の階級になります」
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・名称 認識阻害の指輪
・階級 精霊級アイテム
・効果 装着時、非装着者から認識されにくくする。また、ステータスを偽装することも可能。装着者の意志でオン・オフができる。サイズ自動調整機能あり。
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アイテムの階級は6階級あり、一般級、魔道具級、上級魔道具級、ユニーク級、精霊級、神級となっている。
精霊級は滅多に出ない希少なもので、アイテムの価値は計り知れないものになる。
「これがあれば、ステータスを偽装できるのか。凄いね」
「はい。素晴らしいものです。できれば、コウダイ様がこれを持っていることを、誰にも知られないようにするべきです」
「それって、襲われるってことかな?」
「場合によってはそうなります」
「うへー。世知辛い世の中だね」
広大はこの認識阻害の指輪をはめている時は、グローブをつけるようにすることにした。
広大とチュニクスは、異世界にやってきた。
チュニクスは怪我の後遺症もなく、しっかり食べたことで肌の色艶もよい。
広大はチュニクスの案内で王都サギノスから離れ、別の町へと向かった。
暗殺者が広大を投げ入れた大河は、西から東に流れている。だから西側へ向かうことにしたのだ。
広大が生きているとは思われてないだろうが、何かのきっかけでニアミスした時に東よりは西のほうが誤魔化せると思ったのだ。それに西側のほうが外国が近いのである。
しかもその外国は獣人でも差別されない国で、チュニクスにとっては生活しやすい場所らしい。
「コウダイ様。魔物です」
「どっち?」
「左前方30度。数は1体ですが、急速に接近してきます」
「あいよ」
チュニクスは索敵能力が高く、魔物の接近を素早く知らせてくれる。広大にはない能力なので、非常にありがたかった。
森から狼の魔物が飛び出してきた。
「ロンリーウルフです」
「ホール」
広大のホールで頭部に穴を開けられたロンリーウルフは、激しく横転して動かなくなった。
「相変わらず一撃必殺ですね」
「そういうスキルだったから、助かっているよ」
チュニクスがお金とアイテムブロックを拾い、広大に渡す。
「赤色か」
「普通は赤色ばかりです。黄色もたまに出ますが、青色は本当に出ないのです」
バンバン出たら希少とは言われない。広大はそう納得して、背嚢の中にアイテムブロックを放り込んだ。
2人はのんびりと西へと進んでいく。魔物によく出遭うが、ホールで瞬殺でしていった。
歩き疲れたり、食事の時は北海道に帰る。本当にマイペースな旅である。
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