第17話 強き心


俺は有能ではない。

その為に女子を励ますのも話すのも昔より苦手なタイプだ。

そうだな、一言で言えば、臆病、と言えるかもしれない。

リア充とは違う。

だけどその中だが。


大切な彼女が出来た。


彼女の名前は星空という。

名前の由来は聞いた事は無いが...とても素晴らしい名前だと思う。

10年間彼女は彼氏を作らなかったと言っており。

そして俺がただ好きだとそう言ってくれた。


俺はそんな彼女を見守っていた。

そんな彼女と俺はかつての星空のイジメっ子だったという女子に出会った。

俺はその女子との会話で考える。

この先の未来とかを、だ。


「...でもこうしてイジメっ子だった女子に出会って私は...」

「...ああ」

「何か考えさせられたなって思う。昔の私だったら恨みばっかりだっただろうけどね」

「...そうだな。確かに」

「私、貴方に出会って良かった。本当に」

「...俺もお前から学ぶ事が沢山有る。...だから良かったと思う。本当にな」


そして俺達はトイレに行ってからそのままみんなの元に戻ろうとした時。

1つの本棚が目についた。

それは学生用の棚だ。

つまり参考書などが難しいのが置いてある。

その本棚を熱心に星空は見る。

俺は「?」を浮かべた。


「どうした?」

「...あ。実はね。私、将来、小学校の先生になれたらなって思って」

「へえ。小学校の先生か」

「似合わないかな」

「...いや。お似合いじゃないかな。そもそもお前は根性も有るし...」

「そうかな。アハハ」


俺は参考書の本棚の子供と接する為の本を見る星空を見た。

そうしていると加寿子にまた会った。

加寿子はビクッとしながら「...」となる。

落ち込んだ感じを見せた。


「加寿子」

「...何?優くん」

「...その。お前がいじめを行った事は決して許される問題じゃないと思う」

「...うん」

「だけどそれで思いつめるのは間違いだ。お前は...あくまで瑞とは違う」

「...そうだね」


そうして見ていると加寿子が「...盗み聞きして申し訳無いけど私も小学校の先生を目指している」と言い出した。

すると「そうなの?」といち早く星空が反応する。

そしてその姿に「うん」と返事をした加寿子。


「何でお前は小学校の先生になろうとしているんだ?」

「...子供が好きだから」

「...私も同じだよ。...子供って可愛いよね」

「...」


加寿子は「...」と考え込む。

そんな姿に「大丈夫だ」と声を掛ける。

すると加寿子は顔を上げた。

それから「え?」と言ってくる。


「お前が思っている以上に彼女は。星空は強くなった。...もう大丈夫だから。そんなに心配する必要は無い」

「...」

「...そんな事で寿命を全うしてほしくない。悩み過ぎる人生なんかクソだぞ」

「私は仮にもいじめを行った。だから反省は要るよ」

「要るよ。確かに。だけどお前は瑞と違って謝った。...この点が大きな違いだぞ」

「...君は優しいね。...私は裏切者に近いのに」


そう言いながら眉を顰める加寿子。

俺はその姿を見つつ次にかける言葉を模索していると星空が切り出した。

「私、思うんです」という感じで、だ。

それから「貴方の様な純粋な人だったら...いや。許せない部分はありますけど。だけど...もう十分反省した。...だからもう顔を上げて下さい」と話す。


「...その。...もし良かったら...そんな感じなので教えて下さい。教師の知識」

「...でも私は...」

「...今この場所で私は貴方を頼ってみたいです」

「...」


オドオドする加寿子。

それから俺をチラチラ見てくる。

俺はその姿を見ながら加寿子の背中を叩く。

そして笑みを浮かべる。


「大丈夫。教えてくれるか」

「...」


加寿子は「なら」と言いながら本を手に取る。

それから「あっちで教えてあげます」と言った。

だがその言葉に星空は首を振る。

「友人達の前で教えてくれますか」という感じで、だ。

その言葉に加寿子は「...え?」となる。


「いや...私は」


断りを入れる加寿子だったが。

遠くから声がしてきた。

それは日向達である。

そして俺達を見てから「?」を浮かべた。



「成程な。そういう人なんだな」

「そうだな。...だけど決して悪い子じゃないから」

「そうか。お前らが言うなら」

「...」


バツが悪そうな顔で加寿子は困惑している。

居場所が違うという感じだ。

俺はそんな姿に笑みを浮かべると「俺は梛野日向です」と梛野が自己紹介した。

それから渚も「大和渚です。...日向の彼女です」という感じで、だ。


「...私は...大場加寿子です...」

「加寿子ちゃん。どういう名前を書くんですか?」

「加える寿と子です...」

「良い名前だな」


直ぐ打ち解けそうな感じになっていく。

俺はその2人の姿に苦笑しながら加寿子を見た。

その中で加寿子は何か言いたげな顔をした。

その姿を見続ける。


「その!...私は...悪人です」

「...」

「...何でこんなに優しくしてくれるんですか?」

「それは簡単だよ。...私達はそうは思えないから」


星空はそう言いながら加寿子を見る。

加寿子は「...え」という感じになった。

俺は「大丈夫だ」と声を掛ける。

「お前なら受け入れるよ」とも、だ。


「...」


加寿子は涙を浮かべる。

そして「...ごめんなさい」と涙を拭う。

それから顔を覆った。

机に涙が落ちる。


「...そんな資格は無いのに」

「俺達はあるって思う」

「私も思います」

「私も」


そんな感じでみんな反応する。

そして俺達は顔を見合わせてから前を見る。

加寿子は「...有難う」と呟いた。

それから星空を見た。


「...星空さん。貴方には多大な迷惑を掛けた。今はお詫びさせて」

「大丈夫です。...加寿子さん」

「...」


そして俺達は改めて勉強を始めた。

今度は加寿子も入って、だ。

それから問題を黙々と解いていく。

30分が経過した。

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