第16話 乗り越える
☆
私は優くんに誘われて図書館にやって来た。
一星曰く「おにーちゃんを独り占めのChance!」と目を輝かせていた。
私はその言葉に苦笑いを浮かべながら「もー。冗談はよして」と言いながらも内心はドキドキしていた。
何故かといえば図書館デートは初めてだから。
というかまあデートじゃないが。
「よし。この辺りで休憩すっか」
梛野くんがそう話す。
私はその言葉に「賛成です」と言う。
大和さんも「さんせー。頭がパンクする」と言いながらうな垂れる。
優くんが「みんなお疲れ様」と言った。
その言葉にみんな「だね」と話す。
「ねえねえ。星空ちゃん」
「うん?何?」
「キスはしたの?」
私は驚愕した。
それから大和さんを見る。
大和さんはニヤニヤしながら「ね?」と反応をしてくる。
私は赤くなる。
「お、オイ。渚...」
「大事だよ。これ。キスしているかしてないか」
「いやまあそうかもしれんが!」
「アハハ。で、どっちなのかな?お二人さんは?私、気になるな」
大和さんは私を期待の眼差しで見てくる。
私はその笑顔に意図を汲み取り「...」となる。
それから私は「キスしました」と告白する。
すると大和さんは「なる」と言いながら私に笑みをまた浮かべた。
「だそうですが?日向さん。キスも最近はしてくれませんね」
「いや、無茶だろ渚。俺はキスは...」
「そうやって逃げるの日向さんは。全く。根性無しですなぁ」
「いや。あのな...」
大和さんに苦笑いを浮かべる梛野くん。
私はその姿にクスッと笑いながら居ると優くんが立ち上がった。
それから私達に微笑みながら「お手洗いに行ってくる」と言ってからそのままトイレに向かう。
私はそんな姿を見てから立ち上がった。
「梛野くん。大和さん」
「おう。気を付けて」
「そうだね。私達は私達ながらにイチャイチャしているから」
「まだ何も言ってないのに」
「だって行きたそうな顔をしているじゃないのぉ」
それから大和さんは梛野くんと一緒に手を振る。
私は恥ずかしかったがその姿を見ながら駆け出して行く、と...。
角を曲がったところで優くんは誰かと話していた。
それは...私が見た事が無い女子だった。
「久しぶりだね」
「大場加寿子(おおばかずこ)か?」
「うん。大場だね。あの時は...助けてくれてありがとう」
「...」
私はその姿をチラチラ見る。
一体誰だろう。
そう思いながら、だ。
何だか気になって仕方が無い。
「入学の時にあの時に。本当に貴方に救われた」
「...」
「それでまあ久々に姿を見たから声を掛けたよ」
「そうだったんだな。結局...別々の高校に行ったしな」
「まあそだね」
四角い眼鏡。
それから2つ編みの少女。
おさげ髪とも言える。
う、うーん。
「ところであそこでチラチラしているのはその例の彼女?」
「...うん!?」
「あ...」
バレていた様だ。
私はその言葉に姿を現す。
すると彼女は凍り付く。
そして「そ、そうなんだね」と動揺した。
私はその姿を近付いて見てから「!」となる。
「...どこかでお会いしませんでした?」
「...いや。人違いだと思いますよ。...はい」
「大場。お前どっかで会ったのか?彼女と」
「...」
大場という少女は...複雑な顔をする。
それから息を吸い込んで吐いた。
そして「...有山瑞を知っていますよね」と言い出す。
私は言葉に凍り付く。
複雑な顔をする優くん。
「...有山瑞がどうした」
「どうせいつかバレるなら今自供するけど。私は菅山星空さんを酷くいじめていたんだ」
「...どういう事だ」
「私の旧姓は清水だよ」
「...そんな...」
「清水加寿子ってあの」と唖然とする私。
すると「勘違いしないでほしいけど...私はいじめが嫌だった。だから「お前はよく出来たイジメっ子だ」とか言われるのが死ぬほど嫌だったから直ぐにリア充を辞めたんだ。1回しか参加してないけど今は毎回毎回、神に祈ってる。罪を告白してる。これぐらいしか私にできる懺悔はないから」とそう言いながら清水さんは口を閉じる。
「貴方の彼女が菅山星空だとは思わなかった」
「...お前はこの先はどうするんだ」
「私は早めにこの街から消えるつもりもあるよ。それは反省の意味もあってね」
すると清水さんは私を見てきた。
それから「気をつけて。有山瑞は今でも貴方に対して何かしたいんだと思う」と話した。
そして彼女は真っ直ぐに私を見てから優くんに小さく手を振って去って行った。
私はその言葉に少しだけ青くなり身震いが起こりフラッとした。
だけど直ぐに優くんがその姿を支えてくれた。
私はゆっくりと足で地面に立つ。
それから優くんをしっかりと抱きしめる。
だけど。
乗り越えなければならない痛みがある。
「大丈夫か。星空。もし...あれだったら」
「大丈夫。優くん。私ね。越えるよ」
「え?越えるってのは?」
「私はもう1人じゃないから。絶対に乗り越えられるよ」
「...お前...」
「...有難う。優くん。私の彼氏になってくれて。本当に感謝してる」
私はそう言いながら涙を拭う。
それから膝を叩いた。
もう大丈夫。
私はあの頃とは違う。
1人じゃない!
「強くなったな。...星空」
「私は周りの人達のお陰で強くなっただけだよ。私の努力じゃない」
「...そうか」
「だけど気付いたんだ。私も強くなってるって」
「...」
「だからもう大丈夫だよ。有難う」
そして私は清水さんが去った方向を見る。
彼女はきっと胸が痛くなっていた筈だ。
私もその事に応えれる様に頑張りたいと思う。
過去を乗り越える為もあるが。
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