第14話 交渉

昼休みになりご飯を食い丁度時間は放課後になった。

帰宅時間にはなったのだが日直もありプリントを届けようと思ったのでまだ学校に居た。

日向と渚には先に帰ってもらった。

それから今に至る。


雨雲でしとしとと雨が降り注ぐ。

まあ言っても小雨だが。

霧雨だ。

俺はそんな状況を見ながら廊下を他の生徒とすれ違いながら歩く。

そして職員室まで来た。

それから俺はノックする。


「ああ。立宮、有難うプリント」

「いえ。あ、その。住山さんは」

「住山はお前に感謝していたぞ。有難うってな。部活に行ったが」


住山さん。

バレー部所属の女子。

今回は日直と部活が重なり先に職員室に俺が行かせた。

こんなつまらない事で部活が遅くなってもな、と思ったのだ。

だから半々で作業をしてから住山さんを先に行かせた。


「男前だなお前」

「いえいえ。そんな事は」


目の前の無精髭の生えた小島先生は後頭部をガリガリ掻いた。

それから小島先生は「時に」と言う。

そしてニヤッとした。


「彼女は出来たか」


いきなりの言葉に対し噴き出した。

何を言ってんだこの人。

思いながら俺は小島先生に「何故?!」と慌てて聞く。

すると小島先生は「だって興味があるしな。気に入った野郎の人生設計とやらが」とニヤニヤする。

俺はその言葉に「悪い癖ですね。居ますよ。彼女ぐらい」と口をへの字にする。


「他校の生徒ですけど」

「それは先だっての女子か」

「墓穴を掘らせないでください!」

「ほほう。お主も悪よのう」

「揶揄わないで下さい!」


全くこの人は変わらないな!

そう思いながら俺は「とにかく終わったんで失礼します!」と踵を返す。

すると小島先生は「悪かった」と両手を広げて降参ポーズで苦笑いを浮かべた。


「だけど俺さ。応援してるぞ」

「教師の言う事じゃないです」

「いやいや。そもそもお前が密会したのが悪いぞ。原因はそこだ」

「まあ確かに俺は悪いっすね」

「だけどまあ」


小島先生は「青春は一度きりだ。楽しめ。笑って死ねよ」と笑顔になる。

小島先生の最近婚約した証。

婚約指輪が輝いて見える。

俺はジト目をする。


「なんすか。自慢すか?」

「違う。...お前が落ち込んでいる様な。思い詰めた様な感じだから自慢をした」

「結局自慢じゃないですか!」

「まあ待て。話を聞け。何か困った事があれば俺を頼れって話だよ」

「...!」


「まあだから1人で思い詰めるなよ」と話をしてから俺の肩を叩く小島先生。

俺は「教師らしからぬ教師っぷりですね」と真顔で小島先生を見る。

小島先生は「よせやい。褒めても何も出ないぞ」と言う。


「まあ普段はろくでなしですけど」

「ふざけんな」

「いや。普段は真面目にろくでなしです」

「ウォーい」

「ですがまあ格好良い時はマジに格好良いっすよ。先生」


「...息子みたいに扱ってくれて有難う御座います」と俺は小島先生を見る。

小島先生は苦笑しながらやがて笑みを浮かべ。

そのまま俺の肩を叩いてからそのまま「今日は有難うな。気を付けて帰れ」と去って行く。

俺はそんな姿に頭を下げて踵を返した。



「それで話って何ですか?優さん」

「お互いにいがみ合っても仕方がない。だからお前らと話し合いがしたい」


俺は千尋を近所の公園に呼び出した。

千尋は即刻来た。

俺はそんな姿を見ながらブランコを動かす。

それから錆びた労力が動き出す。


「お前らの件は悪いとは思わない。だがこの先、いがみ合ってと互いにウィンウィンにはならない。そうだろ。千尋」

「...何が言いたいんですか」

「単刀直入で言う。俺はお前らと分かち合いたい。とは言っても仲良くするとかじゃない。お互いに不利益にならない様にしたい」

「そんなの滅亡的ですね。私達は許しませんよ。貴方達を」

「互いに何か出来る事は無いか話し合う。さもなくばお前も日本では恐らく暮らせなくなるぞ」


千尋はブランコを漕ぐ俺を静かに見据える。

それから俺を警戒する。

俺はそんな姿を予測済みだ。

だから俺は「お前らの生活と引き換えたい。そうしないと俺らは全て失う」と飛んだ。

それから着地する。

砂埃が舞う。


「安心して安定した生活と引き換えですか」

「まあそうだな。お前も警察には捕まりたくないだろこんなつまらない事で」

「まあ確かにですね。出来るんですかね?貴方なんかに」

「まあ出来なかったらその時は焼くなり煮るなりすりゃ良い。...その代わりだがこの間、俺達にちょっかいをかけるのを止めろ。良いか」


千尋は「全て状況次第ですね。私達が止めるのも止めないのも」と俺を見る。

俺はズボンの砂埃を払いながら「まあそれならそれでも何でも良い」と言葉を発してから鞄を地面から離す。

それから俺は「無駄にするな。安心を」と釘を刺す。

千尋は「...」となりながら俺を見送る様な視線になる。


「所で」

「何だ。千尋」

「私達なんかに提案ってどうしたのですか。貴方らしくないですし貴方の顔が変わった様な感じがしますね」

「そりゃ気のせいだ。俺は至って真面目にお前を恨んでいる」

「...」

「ただそれでも共倒れは死んでもゴメンだと思っただけだ」


俺はそう言いながら鞄を背負ってから雨上がりになった空を見上げながら歩く。

すると途中で...星空に偶然ながら会った。

俺は笑顔の星空を見る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る