第11話 等身大の花束


有山一家。

三姉妹だがみんな狂っている。

どれだけ狂っているかといえば、姉がいじめをしている、にも関わらず次女、三女がそれを知っていて放って置く次第だ。

正直俺は彼女達にも変わってほしいと思っていた。

だけどもう望みは絶たれただろう。


「...正直、何もしてこないとは思うけど。...俺も大概だよな。そんな事にも気が付かないなんぞ」

「いや。仕方が無いでしょ。...日向は何も悪くないよ」

「そうだぞ。日向。...しょうがない」


そう言いながら俺達は日向に言い聞かせる。

日向は首を捻りながら「そうかな」と返事をする。

俺はその言葉に「ああ」と返事をした。

日向は「だけどいじめられている対象ぐらい気が付いても良かった」と言う。


「いや。無理だろ。教えてもらう訳でも無い」

「...そうか」

「ああ。...あまり気にするな。その点は」

「...」


日向は考え込む。

そして俺達は盛大に溜息を吐きながら考える。

するとチャイムが鳴った。

それから俺達は別れ別れになってから俺は外を見る。


「...頑張れ。...星空」


そういう感情を抱きながら俺は勉強を始めた。

そして昼間になる。

俺は星空から受け取ったお弁当を食べてからそのまま午後の授業を受ける。

中間考査が迫っている。



「ねえ。優くん」

「何だ?星空」

「今日、一緒にお勉強したい」

「...お、おう」


星空はグイグイ攻めて来る。

そんな言葉を受けながら俺は赤面しつつ...「分かった」と返事をする。

すると星空は「やった」と言いながら何かを取り出した。

それはゲーム機だった。


「...何でそんなもの持っているんだ?」

「学校にナイショで持って行った」

「はは。懐かし...うわ。本当に懐かしいな。ウォーか」

「そうそう。ストラップ嵌めて遊ぶゲーム」

「そうか。懐かしいけど...こんなもん隠し持つなよ。重たいだろ」

「重たかった」

「じゃあ持つなよ...」


「だけど優くんとどうしても遊びたかったから」と頬を膨らませる星空。

ウォーは2011年ごろに発売された赤外線のゲームだ。

だけどもう廃盤になった挙句にこの前はコイツの修理も終了した。

だから正直言ってコイツが壊れたら終わりだな。


「懐かしいゲームだな。家帰ったら遊ぶか」

「ぶー」

「...いや。その為に持って来たんだろ?」

「その前に勉強」

「...お前は手厳しいのう」

「そりゃそうでしょう」


俺達はそう言いながら笑い合う。

それから歩いてから俺の家に帰る。

そして...っていうか。

片付けしてない。


「...どうしたの?」

「いや。部屋が汚い」

「そう?気にしない」

「え?あ、いや。駄目だ」

「何で?」

「そりゃ...うん。色々あるから」

「えっちなもの?」


そう言われて俺はギクッとした。

そして段々とジト目になる星空さん。

俺は赤面しながら「片付けるから待って居てくれるか」と言ったのだが。

星空さんは容赦なくドアを開け放った。


「へー。グラビア。へー。胸が大きい子が好きなんだー。へー」

「...すいません」

「へー。えっちー」

「...」

「ま、まあそりゃ私は胸が無いけど」

「そんな事言って無いぞ!!!!!」


俺は真っ赤になりながら胸を揉む星空を見る。

星空はハッとして胸を揉むのを止めてから咳払いをする星空を見る。

それから目をーーにして俺を見る星空。

俺は赤くなって咳払いをする。


「とにかく。悪かったって」

「じゃあこの子より上だって証明して。私が」

「...ha?」

「私の事を愛しているって証明して」

「な、に?」


俺に一歩ずつ近づいて来る星空。

後退してしまった。

それから俺は壁際まで追いつめられる。

どういう意味だ!?、と思っていると彼女は赤面になって俺を抱き締めてくる。


「え、エッチするのか?」

「しないよ!変態!!!!?」

「じゃ、じゃあ何だってんだ」

「それ以外にもあるでしょ。証明する方法が」

「...あ」

「それ」


そして俺は彼女の腰に右手を回した。

それからそのまま彼女の頬に左手を回す。

そうしてから俺達はキスを交わした。

離れる星空。

俺に嬉しそうにはにかむ。


「えへへ。有難う」

「いや有難うじゃねーよ...」

「私、とっても嬉しい」

「いや。とっても嬉しいかもだけど俺はとっても恥ずかしい」

「それはお互い様でしょう」

「お互い様でしょう!?」


俺は盛大に溜息を吐いた。

それから苦笑いを浮かべながら星空を見る。

星空はとてもルンルンな顔をしていた。

俺は何も言えずそのままその顔を愛おしく見ていた。



「で。それはそうと分からない箇所とかある?」

「...分からない箇所かー。まあ結構ある」

「結構って真面目に勉強してる?」

「これでもクソ真面目だぞ」


そう答えながら俺は真面目に勉強する。

そして星空を見る。

星空は「もー」と言いながらひたすら真面目に俺に勉強を教えていた。

正直、その姿も愛おしいぐらいだ。

俺は苦笑しながらその横顔を見てみる。


「...ここをこうして。公式に当て嵌めて。...ねー。聞いてる?」

「聞いてる。...お前の姿が愛おしいなって思ってな」

「そう。愛おし...はぁ!!!!?」

「可愛いって事だ」

「はぁ!!!!?いきなり!もう!駄目!」

「ハハハ」


俺は笑みを浮かべながらその姿を見る。

みるみる真っ赤になっていくその顔を、だ。

だけどキスはアリでこんなに赤くなるのおかしくね?

そう考えながら聞いてみる。


「お主はキスはアリなのに褒められるのは全く駄目なのな」

「それはそうでしょ。論点が違う」

「そうか?俺はそうは思わないんだが。お前の事」

「...も、もう!勉強に集中!」


星空は怒りながらな感じで赤くなったまま勉強をする。

数学の問題の公式を指差しながら、だ。

俺はその姿を見ながら(怒ってないな)と思う。

何故ならニヤニヤしているから。

嬉しいからか何なのか。

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