第10話 死の三姉妹


菅山星空。

彼女は本当に幸せなんだろうな。

思いながら苦笑しつつ俺は翌日を迎える。

そして俺は驚愕した。


何故なら家が離れている筈の星空が俺の部屋に居た。

俺は「はぁ!?」となりながら目を擦りながら再度確認する。

だが星空だった。


「おはよう。優くん」

「な、何をしているんだお前は!?」

「見て分かりませんかねぇ。もーにんぐこーる、だよ」

「も、モーニングコールって!」

「...で。その...えっと」


星空は赤面してモジモジする。

俺は指差された方角を見る。

そこにパンツ姿の下半身があった挙句。

その。

もっこりしていた。


「...優くんのえっち。どんな夢を見ていたんだか」

「男子はこういうもんだ...すまない。出て行ってくれるか」

「はーい...あ。優くん」

「何だ?」

「朝ごはん作ったから食べようね」

「...あ、ああ」


俺は星空を見送る。

それからそのまま赤面のまま着替えた。

恥ずかしい所を見られた。

そう思いながら、だ。



全て準備してから星空と家を出る。

星空は朝食にトースト、ハムエッグなどを作っていた。

俺はその朝食を味わってからそのまま歩いていると星空が俺の手を握ってきた。

そして恋人繋ぎをする。


「えへへ。優くんの手って暖かいね」

「あ、当たり前だろ。人間だから」

「そういうものじゃないよ」


それから星空は俺を見てくる。

その言葉に目をパチクリして「どういう意味だ?」と聞いてみると星空は「えっとね。...優くんが生きているって実感できるって意味」と笑顔になる。

俺はボッと赤面した。


「私は...貴方が大好きだから」

「大好きだからってお前な...」


そう言いながら歩いていると目の前から中学校の制服を着た女子が歩いて来た。

その顔を見て俺は驚愕する。

コイツは。

思いながら相手も気が付いた様に俺を見る。

そして薄ら笑いを浮かべる。


「...久々ですね。先輩」

「お前なんぞに先輩と言われる義理は無い。何をしているんだ。...有山千尋(ありやまちひろ)」

「...見たら分かりませんかね。...私、先輩に会いに来ました。わざわざお姉ちゃんの為に。まあそれは今は置いておいても構いませんけど」


有山千尋。

名前から分かるかもだがコイツは有山弓の妹。

というかそんなのは問題ではない。

問題はコイツの性格だ。


「...」

「...おや?先輩。どうしました」


姉を常に慕う為。

性格が歪んでいる点が問題。

コイツ俺にちょっかいを良くかけていた。

だからコイツが嫌いなのだが。

そう思いながら居ると何故か星空が震えて居た。


「しかし新しい彼女さんってまさか菅山星空さんだとは思いませんでしたよ。...長女がお世話になりましたね」

「待て。どういう意味だ」

「おや。知りませんか先輩。...その人、私のお姉ちゃんがお世話になったんです」

「...どういう意味だ」

「どういう、とは?」

「...星空に何をしたんだお前の長女は」


「長女が誇っていました。手ごたえのある女子が居たと。そして動かし甲斐があるって。転校して居なくなったって言ってましたけど」と千尋は言う。

俺は「...は?」と目が点になる。

それから星空をばっと見る。

星空は青ざめて震えながら「...貴方は上級生の...有山瑞(ありやまみず)に酷似している。有山って聞いてまさかと思ったけど。だけど信じられない」と二の腕を持って震える。


「...そんな事をしていたのかお前の姉は」

「私の姉は面白がっていただけです」

「...それをいじめって言うけどな。世間ではな」

「アハハ。まあどう思おうが自由ですけど」


そう言いながら「いずれにせよ瑞はこの街を出ています。私が今問題にしているのは貴方ですよ。先輩」と...話を続けた。

俺はイラッとしながら「で?」となる。

すると「貴方は私のお姉ちゃんを捨てましたね。許し難い暴挙ですよ。...良いじゃないですか2人に恋するぐらい」と薄ら目をする千尋。


「しかしお前らって本当にまともなのが居ないよな。有山家って」

「...私は至ってまともだと思います。下の子ですが」

「洗脳されたんじゃないか。お前も姉達に」

「私は洗脳とは言いません。これは愛の教鞭ですよ」

「...それを洗脳と言うけどな」


本当にまともな奴が居ないな。

そう思いながら俺は「じゃあな。遅刻する」と話を切り上げた。

それから俺は星空の手を握って歩き出す。

すると「お姉ちゃんを馬鹿にした分はお返しします。...これで終わりじゃないですよ」と言葉が聞こえた。

俺は無視して歩き出した。



いじめをした相手は有山瑞という上級生の女子だった。

常に女子の主導権を握っており私にジュースを無理矢理奢らせる様なリア充だった。

まさかこんな形で全てに関わっているとは思わなかった。

有山で繋がっていたからおかしいとは思ったけど。


「...そんなの無視しておいたら良いよ。...何も出来ないって。相手も」

「...だね。でも朝は怖かった」

「...そうだね。...良く分かる。その気持ち」


そう言いながら千佳は眉を顰める。

私はその顔を見ながら「...なんでいじめってあるんだろう」と呟く。

すると千佳は「...馬鹿は馬鹿だからね。昔の人格形成に問題あったんじゃないかな。母親の愛情を受けてないとか」と考えを言う。


「流石は精神科医の娘だよね」

「...まあ興味本位だよ」

「アハハ。でも助かってる」

「...だけどまあ本当に気にしない事。...大丈夫だよ。きっと」

「...だよね」


私は考える。

それからチャイムを聞いてからそのまま席に座って授業を受ける。

だけど不安が拭えなかった。

そりゃそうなんだけど。

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