第8話 (元)幼馴染

私は優くんと付き合う事になった。

それは...彼からの告白だった。

私はその事が滅茶苦茶...滅茶苦茶。

滅茶苦茶、嬉しかった。


そして良い気分で自宅に帰ろうとした時。

駅にその女は居た。

私を見つけてから「...アンタ...」となる。

真剣な顔になる私。


「...もしかして私を探していたんですか」

「...そうね。探していたって言えるかもね」

「何でこの場所が分かったんですか」

「...人づてでね。...アンタには恨みが沢山有る。優を奪ったしね」


彼女はそう言いながら死神の様な目を向けてくる。

私はその顔に「貴方はどこまで屑なんですか」と眉を顰める。

すると「私は屑じゃない」と言った有山。

それから「私の事を屑呼ばわりするな」と言ってくる。


「屑でしょう。心底の」

「私はどっちも愛している。貴方は何も分かってない」

「どっちが分かって無いのか言ってくれますか。貴方のわがままでこの世界は成り立っている訳じゃ無いですが」

「...」

「2つの愛情でもこの国では1つです。貴方は最低ですね。それすら分からないなら近付かないで下さい。汚らわしい」


「アンタ心底ムカつくね」と有山は言う。

私は「真面目な話をしています」と有山を見る。

そうしていると「そうだな。ムカつくな」と声がした。

私は「?」を浮かべて背後を見る。


「梛野くん...」

「たまたまこっちに用事があったから来たんだけど。久々だな。有山」

「...梛野」

「ああ。そうだ。梛野日向だよ。...正直お前本当にウザいよ。...有山。見苦しいっていうか」

「...」

「あれほど忠告したよな?だけどお前はラストチャンスも見事に粉砕した。...お前にはアイツを愛する権利は無い」


そう言う梛野くんの目が何だか悲しげに見える。

私は「2人はどういう関係なんですか」と聞いてみる。

すると梛野くんは「このアホは元幼馴染。...俺にとっては汚点だよ」と話す。

私は「!!!!!」となりながら2人を見る。


「...幼馴染...」

「そう。幼馴染。だけど今は縁を切った」

「...私は切ったつもりは無いけど。アンタが勝手に切ったんでしょ」

「そういう所。俺が嫌いな所」

「...」


だから縁を切った。

そう言い放ちながら梛野くんを見る有山。

私はその言葉に「...」となりながら見ていると「もう話し掛けないでくれるか。彼達の関係に口出しもするな」と梛野くんは言う。

すると有山は「...私は邪魔を止めるつもりは無い。だってその女は私から大切な...」と言った所で梛野くんが「お前いい加減にしろ」と目線を鋭くした。

ジョークを良く放つ彼だがジョークが一切無くなった。


「お前のせいだ。全てはな。...お前が悪い。だから彼女。そして優は何も悪くない。もう話し掛けんな。屑が」

「...」

「...俺はお前と幼馴染だった縁を葬り去りたいぐらいだ」

「訳分からない...」

「訳が分からない?じゃあ説明してやろうか。お前が全てぶっ壊したんだ」


そして私の腕を握ってから「行こう。コイツに何を説明しても無駄だ」と梛野くんは言う。

それから私と梛野くんは有山を見捨てた。

そうしてからそのまま私は梛野くんに見送られて電車に乗る。



最悪の気分であり。

だけど最高の気分でもある。

この理由は分かる。

星空が彼女になったのだ。

弓に朝会ったせいで最低な気分になっている。


「...だけど星空が彼女か。時代は巡るな...」


そんな事を呟きながら俺は自室でアルバムを観ていた。

アルバムには星空との絆が描かれている。

因みに弓との記憶は捨てた。

アルバムごとゴミに出してから捨てた。

頭が痛い。


「クソ女が」


そう言いながら俺はイライラする。

そして弓の事を考えるのを止めてからアルバムを閉じる。

それから俺はアルバムを本棚に直す。

そうしているとスマホに電話が掛かってきた。


「?...どうした。星空」

『うん。優くんの声が聞きたくなった』

「...そうか」

『...実はさっきね』

「...ああ。日向から聞いた。アイツの元幼馴染に会ったってな」


そう言うと『聞いたんだ』と聞いてくる星空。

俺は「...日向は「警戒しろ」って言っていたな」と答える。

星空は『うん』と言う。

その言葉に「...お前も気を付けろよ」と言う。


『そうだね...気を付ける』

「...やけくそになった女は何をしてくるかも分からないしな」

『何であんななのかな。有山は』

「...弓は飼い犬を交通事故で失った。それでおかしくなった、とは言えるかもしれないがな」

『...そうなの?』

「そうだな。だからまああんな感じだが。だからなんだ?って感じだ」


そう星空に言う。

すると星空は『今回は梛野くんが居て助かった』と言う。

それから『過去って難しいね』と星空は話す。

俺は「だな」と言う。


それからアルバムの背表紙を見ていると『で、そ、その』と言い辛そうに話す星空。

俺は「どうした?」と聞いてみた。

すると星空は『デートしようよ』と書いて切り出してきた。

俺は言葉に「!」となりながら赤くなる。

そして数秒後に「分かった」と返事をした。


それから俺達はデートの事で少しだけ互いに話し合って浮かれた。

そのお陰か俺はかなり落ち着いてきた。

正直、滅茶苦茶に心配だった。

星空は大切な人だから。

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