第7話 花唄
☆
「愛妻弁当...か」
「羨ましいぞお前」
「嘘吐けテメェ。元から彼女居るじゃねーか」
「アハハ。私、確かに料理は苦手だもんね。お弁当なんて作れないかも」
そう話をしながら俺達は屋上に集まっていた。
3人で囲む様に食事をする。
その中で俺はお弁当を開いた。
するとそこには...海苔弁当。
それからおかずが沢山並んでいる。
「へぇ...料理も出来る彼女なんて羨ましいね」
「コイツ本当に料理が苦手だったんだけどな」
「練習したんじゃないかな」
「...え?」
「女の子は魔法の生き物。...恋すれば変わるんだ」
という感じで渚が言う。
俺は「...!」となりながら昨晩の事を思い出す。
すると日向が「おいおい。...お前もしかして何かしたか?その噂の女子に」とニヤニヤしながら言ってくる。
「ま、まさか」と俺は弁明した。
「そんな付き合ってもない男子と女子がそんな事をするか」
「え?付き合ってないの?」
「無い。...俺には...」
「...確かにお前の件もあるかもだけど待たせたらアカンぞ」
「...そうだな...」
俺は考え込みながら「放課後に告白を受諾しようとは思う」と言う。
すると日向が「それで良い」とニコッとした。
それから渚も「時間は待ってはくれないから急いで」と笑みを浮かべる。
その言葉をかけてくれる2人に頷いた。
「...今は勉強だな」
「そうだなぁ。中間考査も有るしな。まあそれが終わって集中すると良いかもなぁ」
「だね」
「にしても青春だねぇ」
「お前らも青春しているじゃねーか」
そんな感じで俺達は笑い合う。
それから昼休みが過ぎていった。
しかし...味わい深い弁当だったけど。
何時から作ったのかが気になるんだが...。
まさかと思うがそんな早い時間から作ってないよな?
☆
放課後になった。
私は優くんと一緒に帰りたいなって思ったから。
そのまま千佳に別れを告げてからオレンジ色の夕日の元駆け出す。
それから私は彼の高校まで来た。
男子生徒達が「ま、め、めっちゃ可愛いな」とかヒソヒソ話すけど。
私は興味が無い。
「...」
そして待って居ると優くんが出て来た。
私を見てから「はい!?」となる。
そんな姿に「優くん。一緒に帰ろう」と笑みを浮かべる。
すると優くんは「あ、ああ。...ビックリした」と苦笑する。
「じゃあ帰るか」
「そうだね。うん」
歩き出す私達。
だけど何だか優くんが元気が無いというか。
緊張している様に感じる。
私は「?」を浮かべながら「優くん。どうしたの?」と聞いてみる。
私達は河川敷まで歩いて来た。
「...なあ。星空」
「うん」
「...その」
「...うん?」
すると優くんは恥ずかしそうに俯く。
それから歩いて河川敷を降りた。
私はゆっくり後ろから付いて行く。
優くんは「か、川が綺麗だな」と呟く。
「...そうだね。...優くんの心みたい」
「...!」
「うーん。優くんなんかおかしいよ?アハハ」
「...なあ。星空。...俺達、付き合おうか」
その言葉に私は「...え?」とつい聞き返してしまった。
だって信じられなかったから。
風が吹く。
私達の髪の毛、服が靡く。
それから真剣な顔をする優くん。
「...俺は...星空。...お前の意見を尊重したい」
「...!」
「だからお前と付き合いたい」
「...ゆうくん...それって本当に?」
私はその言葉に涙を浮かべる。
そして優くんを見る。
優くんは「正直。恋ってもうしないって思っていたんだ。...だけど違う。...俺はきっとお前に告白されて恋に落ちた」と私に向いてくる。
その言葉に私は赤面する。
それから「...そ、そう」と俯く。
「...だから付き合ってくれるか」
「...」
私は思いっきり背伸びをした。
それから彼の唇を唇を押し当てて奪う。
そして涙を拭う。
彼は「!!!!?」となっていた。
だけどそんなの関係無い。
「...喜んで」
そして私は彼を見る。
優くんは「恥ずかしいから」と言う。
私は「そんなの関係無いよ。私の彼氏になったんだ。覚悟してね」とニコニコする。
ヤバイ笑みが止まらない。
正直、心臓もバクバク。
「...全くな」
そう呟く優くん。
私は満面の笑顔で優くんを見ていると拍手が聞こえた。
それからさっき優くんと居た男の子。
そして女の子が出て来る。
私は驚いていたが「お前ら!」ともっと優くんが赤面していた。
「いやー。やっとお付き合いですかー」
「長かったね」
「お前ら勝手な事をするな!?付いて来るなよ!」
「優くん。彼らは?」
「...彼らは俺の友人だ。...いつかお前を紹介してくれって俺に散々言っていた」
額に手を添える優くん。
私は「初めまして」と挨拶をする。
すると「初めまして」と相手も挨拶をした。
それから「梛野日向っす」と笑みを浮かべる男の子。
そして女の子の方も「大和渚です」と挨拶をしてくる。
「日向くんと渚さんですね」
「そうです。...優とは腐れ縁です」
「私は日向の彼女です」
「へぇ!凄いですね!?」
私は意外な事に驚きを見せる。
すると彼らは「「もういい加減に付き合ってくれ」って感じで見てました。...優を貰ってくれて有難う御座います」と笑みを浮かべた。
改めて言われると恥ずかしいな。
「心配していた。正直、独身かと思っていたし。永遠に...」
「あのな。日向...お前は」
「まあまあ。良いじゃん」
そして私に手を伸ばしてくる渚さん。
私は柔和な顔でその手を握る。
それから笑みを浮かべた。
「有難う御座います」と言いながらだ。
何だか恥ずかしい告白になっちゃったけど。
だけど楽しい。
とても...幸せだった。
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