第7話 花唄


「愛妻弁当...か」

「羨ましいぞお前」

「嘘吐けテメェ。元から彼女居るじゃねーか」

「アハハ。私、確かに料理は苦手だもんね。お弁当なんて作れないかも」


そう話をしながら俺達は屋上に集まっていた。

3人で囲む様に食事をする。

その中で俺はお弁当を開いた。

するとそこには...海苔弁当。

それからおかずが沢山並んでいる。


「へぇ...料理も出来る彼女なんて羨ましいね」

「コイツ本当に料理が苦手だったんだけどな」

「練習したんじゃないかな」

「...え?」

「女の子は魔法の生き物。...恋すれば変わるんだ」


という感じで渚が言う。

俺は「...!」となりながら昨晩の事を思い出す。

すると日向が「おいおい。...お前もしかして何かしたか?その噂の女子に」とニヤニヤしながら言ってくる。

「ま、まさか」と俺は弁明した。


「そんな付き合ってもない男子と女子がそんな事をするか」

「え?付き合ってないの?」

「無い。...俺には...」

「...確かにお前の件もあるかもだけど待たせたらアカンぞ」

「...そうだな...」


俺は考え込みながら「放課後に告白を受諾しようとは思う」と言う。

すると日向が「それで良い」とニコッとした。

それから渚も「時間は待ってはくれないから急いで」と笑みを浮かべる。

その言葉をかけてくれる2人に頷いた。


「...今は勉強だな」

「そうだなぁ。中間考査も有るしな。まあそれが終わって集中すると良いかもなぁ」

「だね」

「にしても青春だねぇ」

「お前らも青春しているじゃねーか」


そんな感じで俺達は笑い合う。

それから昼休みが過ぎていった。

しかし...味わい深い弁当だったけど。

何時から作ったのかが気になるんだが...。


まさかと思うがそんな早い時間から作ってないよな?



放課後になった。

私は優くんと一緒に帰りたいなって思ったから。

そのまま千佳に別れを告げてからオレンジ色の夕日の元駆け出す。


それから私は彼の高校まで来た。

男子生徒達が「ま、め、めっちゃ可愛いな」とかヒソヒソ話すけど。

私は興味が無い。


「...」


そして待って居ると優くんが出て来た。

私を見てから「はい!?」となる。

そんな姿に「優くん。一緒に帰ろう」と笑みを浮かべる。

すると優くんは「あ、ああ。...ビックリした」と苦笑する。


「じゃあ帰るか」

「そうだね。うん」


歩き出す私達。

だけど何だか優くんが元気が無いというか。

緊張している様に感じる。

私は「?」を浮かべながら「優くん。どうしたの?」と聞いてみる。

私達は河川敷まで歩いて来た。


「...なあ。星空」

「うん」

「...その」

「...うん?」


すると優くんは恥ずかしそうに俯く。

それから歩いて河川敷を降りた。

私はゆっくり後ろから付いて行く。

優くんは「か、川が綺麗だな」と呟く。


「...そうだね。...優くんの心みたい」

「...!」

「うーん。優くんなんかおかしいよ?アハハ」

「...なあ。星空。...俺達、付き合おうか」


その言葉に私は「...え?」とつい聞き返してしまった。

だって信じられなかったから。

風が吹く。

私達の髪の毛、服が靡く。

それから真剣な顔をする優くん。


「...俺は...星空。...お前の意見を尊重したい」

「...!」

「だからお前と付き合いたい」

「...ゆうくん...それって本当に?」


私はその言葉に涙を浮かべる。

そして優くんを見る。

優くんは「正直。恋ってもうしないって思っていたんだ。...だけど違う。...俺はきっとお前に告白されて恋に落ちた」と私に向いてくる。

その言葉に私は赤面する。

それから「...そ、そう」と俯く。


「...だから付き合ってくれるか」

「...」


私は思いっきり背伸びをした。

それから彼の唇を唇を押し当てて奪う。

そして涙を拭う。

彼は「!!!!?」となっていた。

だけどそんなの関係無い。


「...喜んで」


そして私は彼を見る。

優くんは「恥ずかしいから」と言う。

私は「そんなの関係無いよ。私の彼氏になったんだ。覚悟してね」とニコニコする。

ヤバイ笑みが止まらない。

正直、心臓もバクバク。


「...全くな」


そう呟く優くん。

私は満面の笑顔で優くんを見ていると拍手が聞こえた。

それからさっき優くんと居た男の子。

そして女の子が出て来る。

私は驚いていたが「お前ら!」ともっと優くんが赤面していた。


「いやー。やっとお付き合いですかー」

「長かったね」

「お前ら勝手な事をするな!?付いて来るなよ!」

「優くん。彼らは?」

「...彼らは俺の友人だ。...いつかお前を紹介してくれって俺に散々言っていた」


額に手を添える優くん。

私は「初めまして」と挨拶をする。

すると「初めまして」と相手も挨拶をした。

それから「梛野日向っす」と笑みを浮かべる男の子。

そして女の子の方も「大和渚です」と挨拶をしてくる。


「日向くんと渚さんですね」

「そうです。...優とは腐れ縁です」

「私は日向の彼女です」

「へぇ!凄いですね!?」


私は意外な事に驚きを見せる。

すると彼らは「「もういい加減に付き合ってくれ」って感じで見てました。...優を貰ってくれて有難う御座います」と笑みを浮かべた。

改めて言われると恥ずかしいな。


「心配していた。正直、独身かと思っていたし。永遠に...」

「あのな。日向...お前は」

「まあまあ。良いじゃん」


そして私に手を伸ばしてくる渚さん。

私は柔和な顔でその手を握る。

それから笑みを浮かべた。

「有難う御座います」と言いながらだ。


何だか恥ずかしい告白になっちゃったけど。

だけど楽しい。

とても...幸せだった。

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