第4話 告白


「立宮君の事、久々に見たけど成長してとてもたくましくなったね」


叔父さんがそう言う。

俺はその言葉に「たくましくなった訳じゃないです。...何処にでも居る様な平凡な高校生に育ちました」と苦笑する。

目の前の叔父さんの名前は菅山浩紀(すがやまひろき)さんという。

丸眼鏡をかけた叔父さんだ。


「そういう割には...私達の大切な娘を預けるまでにはなったわよ」


今度は叔母さんがそう言う。

菅山美奈穂(すがやまみなほ)さん。

いつもニコニコしている印象的な女性。


「おにーちゃんは素晴らしくなったね」


一星ちゃんまでがそう言う。

俺は苦笑しながら「マジにたくましくなった訳じゃないです。...俺はただの男です」と答えた。

すると一星ちゃんは「でもどう育っても私はおにーちゃんが好き」と縋って来る。

少しだけ大きな胸の感触に赤面した。


「.....」


ほ、星空の顔が怖いんだが。

笑みを浮かべているが邪気を感じる。

俺はその様子に顔を引き攣らせていると一星ちゃんが「おねーちゃん嫉妬してる」とニヤニヤし始めた。

星空は「嫉妬してないもん」とそっぽを向く。


「お姉ちゃんの彼氏さんを奪ってしまってごめんなさい。返すね」

「そ、そ、そうね」


星空の顔が一瞬明るくなって俺を見てからまた逸らす。

忙しい奴だが俺達の関係はそんなのじゃ無いだろ。

俺はその姿を見ながら「星空。落ち着け」と言ってみる。

すると星空は「落ち着いているけど!」と目を回す。


「ま、全く」

「お前な。落ち着いてないだろ」


そんな顔を見ながら居ると浩紀さんが「ところでどっちが告白して付き合う事になったんだい?」と聞いてくる。

俺は「あ」と言葉を発しながら星空を見る。

星空は「私が告白した」と嘘ばっかり吐いた。


「そうなのか。...どういう言葉で?」

「私が貴方が好きって言った」

「そうなのかぁ」


「何だか娘がなぁ...」と悲しげな顔をする浩紀さん。

俺はヒソヒソと星空に聞く。

「オイ待て。お前嘘ばっかり吐くな」と言う感じで、だ。

すると星空はニヤッとして3人を見る。


「イチャイチャだもん」

「は!?」

「ほほう。イチャイチャ...」


どういう嘘だよ!

俺は唖然としながら3人を見る。

取り返しがつかない事になってきている。

何でこんな嘘ばかり吐くのだ。


「まあ学生の本業は勉強だから無謀な事はしない様にしなさいね」

「はーい」

「...」


俺は考えながらまた星空を見る。

星空は俺を見てから赤くなって目を逸らす。

嘘ばかり吐いても良くはない。

そう思い俺は話しをしようとして3人を見る。

だが3人は嬉しそうに盛り上がっている。


「...」


言い出せない。

思いながら俺は盛大に溜息を吐いた。

それから紅茶とか飲んでゲームとかして...1日が終わった。

俺は客間で夜、天井を見上げていた。


「...やれやれ。何であんなに嘘ばっかり」


そんな事を呟きながら俺は1人天井を見上げる。

すると襖が開いた。

それから...何故か星空が入って来る。

デジャヴかな?


「星空?」

「一緒に寝よ」

「いや。お前自室があるだろ。布団敷くのか?」

「敷かない。だってここにある」


そして何を思ったか星空は俺の布団に潜り込んで来る。

この野郎!!!!?あれほど忠告したのに!

そう思いながら慌てて俺は「待て。星空!」と言う。

星空の香りが俺を包む。

夜空の様な香りだ。

昼間と違ってしゃ、シャンプーの?柑橘系の。


「ま、待て。星空。駄目って言ったろ...お前」

「これぐらいなら良いでしょ」

「良くない...!男だぞ俺は...良くない!」

「べ、別にエッチする訳じゃないでしょ」

「もっと駄目だっての」


俺は星空から顔を背けながら目の前を見る。

すると星空は抱き締めてきた。

背後から抱き締めて胸を押し当ててくる。

俺は「ぐぁ」と小さく悲鳴を上げる。


「おま、マジに止めて...マジに。マジにヤバイ」

「...ねえ。優くん」

「な、何だ」

「...その女は良い女だったの?」

「...その女ってのはつまり...」

「浮気した相手」

「そうだ...な。まあ良い相手じゃなかったらこんな事にはならないだろ」


「そう...」と呟く声がしてからそのまま星空は俺に縋ったまま沈黙する。

まるで活動限界の様な感じで沈黙が流れる。

それから時計の針の音しか聞こえなくなった時。

また声がした。


「...ねえ。私にしておかない?」

「...私にしておかないってのはどういう意味だ」

「...いや。やっぱりいいや。忘れて」


背中が濡れる感触がある。

俺はビックリしながら背後を見る。

するとまた星空は泣いていた。

というか...10年前と同じだな。

ようやっと思い出したけど。


「...星空」

「...何。優くん」

「お前と一緒に夜空の星を見に行った時を覚えているか?」

「...覚えているよ。10年前の最後の夜。別れる時だよね?」

「そうだな。...俺さ。...あの時の事は忘れた事はないよ。今でもずっと。だけどあの女に裏切られた事で忘れていた。それだけショックだった」

「...うん」

「...ゴメンな。忘れてしまって」

「...いい。別に」


星空を見る。

その星空はジッと俺を見つめていた。

そして俺達はまるでキスするぐらいまで近付いている。

俺はビックリして「すまん!」と謝る。

何をやっているんだ。


「...優くん」

「...な、何だ?星空」

「私、貴方が異性として大好き」

「...え?」

「だから私にしておけっていうのは...私で決めて。...貴方の将来の花嫁をあの女じゃなくて」

「...な!?!?!」


そして星空は俺をジッと見つめる。

赤くなっているがそんな事も構わず俺をジッと見てくる。

熱が余りに籠っている感じだが、だ。


俺はあまりの事にそっぽを向く事しか出来ない。

汗が噴き出る。

あまりに衝撃的な告白に心臓がバクバク鳴り始めた。

ま、待て。好き?

は!?スキ?!透き!?鋤!?

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