第4話 告白
☆
「立宮君の事、久々に見たけど成長してとてもたくましくなったね」
叔父さんがそう言う。
俺はその言葉に「たくましくなった訳じゃないです。...何処にでも居る様な平凡な高校生に育ちました」と苦笑する。
目の前の叔父さんの名前は菅山浩紀(すがやまひろき)さんという。
丸眼鏡をかけた叔父さんだ。
「そういう割には...私達の大切な娘を預けるまでにはなったわよ」
今度は叔母さんがそう言う。
菅山美奈穂(すがやまみなほ)さん。
いつもニコニコしている印象的な女性。
「おにーちゃんは素晴らしくなったね」
一星ちゃんまでがそう言う。
俺は苦笑しながら「マジにたくましくなった訳じゃないです。...俺はただの男です」と答えた。
すると一星ちゃんは「でもどう育っても私はおにーちゃんが好き」と縋って来る。
少しだけ大きな胸の感触に赤面した。
「.....」
ほ、星空の顔が怖いんだが。
笑みを浮かべているが邪気を感じる。
俺はその様子に顔を引き攣らせていると一星ちゃんが「おねーちゃん嫉妬してる」とニヤニヤし始めた。
星空は「嫉妬してないもん」とそっぽを向く。
「お姉ちゃんの彼氏さんを奪ってしまってごめんなさい。返すね」
「そ、そ、そうね」
星空の顔が一瞬明るくなって俺を見てからまた逸らす。
忙しい奴だが俺達の関係はそんなのじゃ無いだろ。
俺はその姿を見ながら「星空。落ち着け」と言ってみる。
すると星空は「落ち着いているけど!」と目を回す。
「ま、全く」
「お前な。落ち着いてないだろ」
そんな顔を見ながら居ると浩紀さんが「ところでどっちが告白して付き合う事になったんだい?」と聞いてくる。
俺は「あ」と言葉を発しながら星空を見る。
星空は「私が告白した」と嘘ばっかり吐いた。
「そうなのか。...どういう言葉で?」
「私が貴方が好きって言った」
「そうなのかぁ」
「何だか娘がなぁ...」と悲しげな顔をする浩紀さん。
俺はヒソヒソと星空に聞く。
「オイ待て。お前嘘ばっかり吐くな」と言う感じで、だ。
すると星空はニヤッとして3人を見る。
「イチャイチャだもん」
「は!?」
「ほほう。イチャイチャ...」
どういう嘘だよ!
俺は唖然としながら3人を見る。
取り返しがつかない事になってきている。
何でこんな嘘ばかり吐くのだ。
「まあ学生の本業は勉強だから無謀な事はしない様にしなさいね」
「はーい」
「...」
俺は考えながらまた星空を見る。
星空は俺を見てから赤くなって目を逸らす。
嘘ばかり吐いても良くはない。
そう思い俺は話しをしようとして3人を見る。
だが3人は嬉しそうに盛り上がっている。
「...」
言い出せない。
思いながら俺は盛大に溜息を吐いた。
それから紅茶とか飲んでゲームとかして...1日が終わった。
俺は客間で夜、天井を見上げていた。
「...やれやれ。何であんなに嘘ばっかり」
そんな事を呟きながら俺は1人天井を見上げる。
すると襖が開いた。
それから...何故か星空が入って来る。
デジャヴかな?
「星空?」
「一緒に寝よ」
「いや。お前自室があるだろ。布団敷くのか?」
「敷かない。だってここにある」
そして何を思ったか星空は俺の布団に潜り込んで来る。
この野郎!!!!?あれほど忠告したのに!
そう思いながら慌てて俺は「待て。星空!」と言う。
星空の香りが俺を包む。
夜空の様な香りだ。
昼間と違ってしゃ、シャンプーの?柑橘系の。
「ま、待て。星空。駄目って言ったろ...お前」
「これぐらいなら良いでしょ」
「良くない...!男だぞ俺は...良くない!」
「べ、別にエッチする訳じゃないでしょ」
「もっと駄目だっての」
俺は星空から顔を背けながら目の前を見る。
すると星空は抱き締めてきた。
背後から抱き締めて胸を押し当ててくる。
俺は「ぐぁ」と小さく悲鳴を上げる。
「おま、マジに止めて...マジに。マジにヤバイ」
「...ねえ。優くん」
「な、何だ」
「...その女は良い女だったの?」
「...その女ってのはつまり...」
「浮気した相手」
「そうだ...な。まあ良い相手じゃなかったらこんな事にはならないだろ」
「そう...」と呟く声がしてからそのまま星空は俺に縋ったまま沈黙する。
まるで活動限界の様な感じで沈黙が流れる。
それから時計の針の音しか聞こえなくなった時。
また声がした。
「...ねえ。私にしておかない?」
「...私にしておかないってのはどういう意味だ」
「...いや。やっぱりいいや。忘れて」
背中が濡れる感触がある。
俺はビックリしながら背後を見る。
するとまた星空は泣いていた。
というか...10年前と同じだな。
ようやっと思い出したけど。
「...星空」
「...何。優くん」
「お前と一緒に夜空の星を見に行った時を覚えているか?」
「...覚えているよ。10年前の最後の夜。別れる時だよね?」
「そうだな。...俺さ。...あの時の事は忘れた事はないよ。今でもずっと。だけどあの女に裏切られた事で忘れていた。それだけショックだった」
「...うん」
「...ゴメンな。忘れてしまって」
「...いい。別に」
星空を見る。
その星空はジッと俺を見つめていた。
そして俺達はまるでキスするぐらいまで近付いている。
俺はビックリして「すまん!」と謝る。
何をやっているんだ。
「...優くん」
「...な、何だ?星空」
「私、貴方が異性として大好き」
「...え?」
「だから私にしておけっていうのは...私で決めて。...貴方の将来の花嫁をあの女じゃなくて」
「...な!?!?!」
そして星空は俺をジッと見つめる。
赤くなっているがそんな事も構わず俺をジッと見てくる。
熱が余りに籠っている感じだが、だ。
俺はあまりの事にそっぽを向く事しか出来ない。
汗が噴き出る。
あまりに衝撃的な告白に心臓がバクバク鳴り始めた。
ま、待て。好き?
は!?スキ?!透き!?鋤!?
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