第215話 チラリ

「よーし!ココ、ユウキ。そろそろ終わりにしようか」


「ん!」


「は~い」


クールタイムが半減し、またその秒数を体感的に染みつかせるという目的もあって今回は魔法を多めに使ったが、やはり単純に今までよりも使用回数が倍になるので、魔法での戦闘はかなりいい感じだった。


これまでは開幕に魔法を使ってその後は剣で戦わなければやることが無くなっていたが、五秒間という短い時間ならばほんの少し手持無沙汰になるだけでまた次の魔法が使えるから魔法だけというのはベストではないが、悪くはない。


「それにしても、これだけ連続で戦っているのに、全然疲れない・・・今の私のレベルってどのくらいになっているの?」


「ユウキの剣士はレベル19だな。それ以外の3つもレベル16になってるぞ」


「え・・・今日の朝に見てもらった時からまた2つも上がっているの!?」


「そうだな。経験値はパーティーの人数で割られるから、少人数でやるとかなり効率が上がるんだ」


今日こっちの人数を削ったのは別に経験値のためじゃなくて、ファストのダンジョンで行う狩りは6層メインにしなくちゃいけなかった為、人数は多い方がいいだろうと思った結果だ。

まだココ以外の子達は飛べないからこっちに来るのは大変だという理由もある。


ちなみに今日の朝ははじめてというくらいに今まで日課にしていたダンジョン探索へは行かなかった。

というのも、そろそろ俺のストレージにストックしていた料理群の在庫が尽きそうだったので、その補充をするために朝からみんなで大量の食事作り大会を敢行していたからだ。

それに、焼きあがった窯に乾燥させていたものを突っ込んで火を入れたかったというのもあったしね。


「それにしても・・・ってことなんだけどね・・・」


「あるじ!ココは?」


ユウキに現在のレベルを伝えていたのを横で聞いていたようで、自分のレベルも見てくれと鼻息を荒くして俺の足元まで来てコチラを見上げていた。


「待ってろ・・・お、密偵のレベルが21になっているぞ」


ココとは盗賊団討伐の時以外はここ最近結構行動を共にしているからな。他の子供達とかなりレベル差がついてしまっているが、なんかココは他の子にない雰囲気を持っているからついつい連れて行ってしまうんだよなぁ。


「んふぅ」


俺から自分のレベルを聞いたココは目を閉じ、胸を張ってとても満足気だ。

ライとジンク、後はサン辺りもそうだけど、彼らは自分が強くなることを楽しんでいる節があるけど、その中でも特にココは顕著だ。

彼女がねだってくるというのもあるが、連れて行ってしまうのはそれも一つの要因なのかもな。


「んじゃ、帰るぞ~」


俺の号令で山を下り始める。というか飛び降りるに近い。

ここはファストのダンジョンと違って、帰りが楽でいいね。なんせ低い場所目指して飛んでいきゃいいんだからな。


すり鉢状になっているこのダンジョンでは一番高い場所に次の階層へ続く穴があり、一番低い場所に前の階層へ戻る穴がある。

だから帰る時はフライをかけて下へ降下していくだけでいいのだ。

万人が出来る事ではないけどな。


飛び降りて穴に入るを三回繰り返し、外に出て家へと飛び立つ。

クルクルと回りながら楽しそうにアクロバットを次々に決めていくココに対し、ユウキはまだ飛び方がぎこちない。


まぁここに来ながら飛行を教えたばかりだからしょうがなくはあるけどね。

しかし・・・制服のまま空を飛ぶのは控えた方がいいと思うぞ。この世界のかぼちゃパンツが丸見えだ。


ユウキは一応与えた替えの服を着ることはあるが、何故か優先的に制服を着たがっているように思う。それが何故なのかは聞いていないけど、彼女は俺と違って日本に帰りたがっている・・・と思う。


俺はこっちの生活の方が楽しいし、今までも楽しかった。それに元々望んでいたことだったから迷いも無くここに居たいと言えるのだが、彼女はそうではないからな。

今に至る経緯もかなり苦しいものだったようだし、元々異世界に来たかったわけでもないとなると、やはり日本に帰りたいと思うのは普通なのだろうね。


だから彼女は制服を身に着けることで日本を感じ、安心のようなものを無意識に得ようとしているのかもしれない。


「ちょ、ちょっと・・・!あまり後ろから見ないでよねっ!」


「いや、ユウキが手を繋いで慣らし飛行することを拒んだんだろ。こうやって俺が後ろにいないとバランスを崩して落下した時に誰が助けるんだ」


「そ、それはそうなんだけど・・・」


やっぱりユウキもかぼちゃパンツを俺に見られていたことに気が付いていたらしいな。元々履いていた日本製の物は汚してしまったらしく、捨ててはいないが今は使っていないらしい。


日本のパンツって何で出来ているんだろう。

俺は昔から服関係に無頓着だったからそういう系にはほんと疎いんだよなぁ。たぶんナイロンとかポリエステルなのか?高級だったらシルクがやっぱり定番なのかな?


今度トレイルとかに貴族が使うような高級な物を買いに行ってみるというのもアリだよな。

かぼちゃパンツもそれはそれでいい味があるが、いかんせん色気が無い。無いよりはあった方がいいよね。色気は。


豚の妖怪が龍に頼むほど欲しがったあのピッタリとした純白のパンツはやっぱり男の本能が求めてやまない不思議な魅力があるよな。

あれをオリヴィエやミーナが履いているのを想像すると・・・うーん、マーベラス。実に良い。よし、探しに行くことは決定だな。



「ただいま~」


「あ、おかえりなさい」


「おあえり~!」


家に到着して玄関を入るとネマと出迎えてくれ、遅れてイデルが奥の部屋から走って俺の足にピトッと抱き着いて来たので、俺はイデルを片腕に乗せ、食堂の方へと向かう。


「まだファストダンジョン組は帰ってきてないのか」


「そうですね、旦那様達の方が先に戻られました」


オリヴィエ達はまだ探索中か。

まぁ向こうは6層まで行ってるだろうし、俺達みたいに帰りは飛び降りるだけみたいなショートカットは出来ないしな。

ダンジョンから家までの距離は向こうの方が全然遠いけど、その分も考えて俺達ははやめに出てきたしね。


そういやなんだか最近突然ネマが俺の事を旦那様とか呼ぶようになったんだよね。

たぶんウィドーさんあたりの呼び方を真似したかなんかだろうけど、どっかの商売の元締めみたいでムズムズするよね。まぁ呼び方は好きに呼んでくれていいけどね。あまりに酷いものじゃなければ。


「特に変わったことはなかったか?」


「あ、それなら奥の部屋で今ミーナさんが連れてきた人達となにやらずっと話し合っています」


「へー、ミーナが人を連れてくるなんて初めてだな」


「たぶん新しい家のことだと思いますが・・・」


まぁそうだろうね。そのことで今日は別行動していたわけだしな。

これで実は全然関係なくて、急にミーナさんをください!とか知らんやつが待っていたら俺はそいつの首をとってしまうかもしれん。まぁあり得んけど。


でもなんでわざわざウチでやっているんだろう?この家を改築するわけでもないし、ここで話し合いをする必要性が無い気がするんだが。


とりあえず俺は食卓のある奥の部屋へと行ってみると、そこにはネマの言った通りミーナが座っていて、その向かいには・・・、






「お!帰ってきたのだ!?おかえりー!」


知らん男なんかじゃなくて、知ってるロリババアが俺を見つけて元気にこっちへ手を振っていた。


なんで見た目だけ幼女がここにおんねん。

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