第216話 ドワーフ姉妹
「なんでリリアがここにいるんだ?」
「そりゃー、使徒様に魅惑的な体を捧げるた・め・に?」
右手を後頭部において胸を強調するように前へ突き出しているのだが、幼女の様な体型ちら側に悲しい感情がこみあげてくるからやめてくれ。
奥でミーナも「おかえりなさいませ」って言いながら困った顔をしているだろうが。
「くれるなら遠慮なく貰うけど、リリアってそもそもまだそういうこと出来る年齢なのか?」
「し、失礼なのだ!エルダードワーフは私くらいがピチピチなのだ!」
へー、126歳だからてっきり見た目だけ若いロリババアなのかと思ってたわ。ってゆーかエルダードワーフの平均寿命ってどんなくらいなんだ?
今でピチピチってことは300年とか400年とか・・・いや、それだと人族の年に換算すると40近いってことになるからピチピチとはいえんか。
だとしたらもっとってこと・・・?凄いな。エルダードワーフ。
「それで、リリアは今後一緒にここで暮らすのか?」
「え、ほ、ほんとに?」
「いや、冗談だが」
「・・・むーーー!なんなのだぁ!」
やっぱりリリアはまだまだ若いようだな。こんな反応するおばあちゃんとか嫌だしね。
はは、126にもなって真っ赤になってほっぺ膨らましとるわぁ。
「まぁそれは置いといて」
置いとくなぁ!とかいうツッコミはサラッと流して・・・っと。
「今日は何をしに来たんだ?」
「本日は新しく建築に携わっていただける職人の方をサトル様に紹介したいということで、間に入って下さったリリア様が打ち合わせついでにコチラの方を連れてきてくれたんです」
リリアが膨れ顔で腕を組み、どっかと席に戻ったことで、彼女の陰に隠れていたもう一人の人物が俺の視界に映った。
正確には最初からチラチラと見えてはいたんだけど、リリアが前面に出てきていたからその人物に触れる隙がなかったというのが正しいかな。
「あ、ドーモ。ウチは100年間全く成長していない姉を持つ不幸なドワーフのラスクっていいやす。どーぞよろしくっす」
名前
ラスク
性別
女
年齢
60
種族
エルダードワーフ
職業
鍛冶師 Lv21
ほんとだ。ラスクはリリアと同じエルダードワーフみたいだが、まんま幼女チックなリリアと違ってそんなに大きくはないけどちゃんと出ている所は出ているし、身長もミーナよりも小さいけれど、そこまで幼いといった印象はない。
年齢は60とまたバグったような数値だし、姉と66離れているというのも人族の俺からすると意味が分からない。親は一体それぞれいくつの時に産んだ子なんだ?
というか、ラスクの職業・・・鍛冶師って初めてみたな。しかもレベル21とかなり高い。戦闘職ではないだろうからレベルは恐らく鍛冶をすることで得た経験値で上げたのだろうが、そうだとしたら物凄い作業量だろうな。
他に比較対象がいないからほんとのところはわからないけどね。
「凄いな。成人しているのに年齢以上に歳の離れている姉妹とか初めて見た」
「まぁエルダードワーフは600年以上は平気で生きやすからね。繁殖力もあまりないもんで、姉妹でこのくらいの年齢差になるのはよくあることっすよ」
「へー、凄いな。600年ってのは平均寿命なのか?」
「んー・・・というより、実際のエルダドワーフがどのくらいまで生きられるのかはたぶん誰も知らないっすねぇ。老衰で天寿を全う出来たという話は聞いたことがないので・・・」
「老衰まで生きた人がいない?」
「えぇ、元々数が少ない上に、そんな長い時間を安全に生きられるような世界では無いですし、それに・・・理由は知りやせんが、ある程度の年齢を超えた人達は無気力になっていくらしいんすよね」
たしかにこの命が軽い世界でそもそも何百年もの間を生き抜くこと自体が難しいよな。魔物以外だって事故や病気もあるだろうし、サイボーグのように強い体を持っているならまだしも、寿命が長いだけで人種と同じような体の強度をしているのならば余計にな。
無気力の部分に関しては良く分からないが、きっと長く生きた者には長く生きた者なりの悩みというものもあるのだろうな。
「良く分からんが、長生きも大変なんだな。俺はサトルだ。ヨロシクな」
「オイコララスク。100年成長していないとはどういうことなのだ」
俺が自己紹介をすると、俺とラスクの間にまたリリアがカットインしてきた。今度はさっきとは逆で俺の方じゃなくてラスク側に体を向けているけどな。
「どういうことも何も、言葉通りの意味っすけど?」
食ってかかるリリアとは視線をわざと全く合わせずにそっぽ向いて言うラスク。
「ぬぬむぅ~っ!ラスクは昔から姉に対しての態度ってものがなってないのだ!もっとお姉ちゃんを尊敬するのだ!」
「それを求めるならそうなる行動をとってほしいものっすね。今日だってドワーフ族の存亡の危機とかいうから何事かと思って来てみれば、ただの新築工事らしいじゃないっすか」
手をブンブンと振りながら尊敬しろと言うリリアに、そういうとこだぞともっともなことを伝えるラスク。
「ただの、じゃないのだ!これは使徒であるサトルとの繋がりを持つための大事な仕事なのだ!」
あのー・・・そういうことはせめて本人の居ない所で言ってくれないかな?俺はどんな顔をしてここで立っていればいいのかわからなくなるじゃないか。
堂々と俺とのパイプを持つためとか言ったら逆に遠ざけたくなるぞ。
「大体、その使徒様っていうのは本当なんすか?ウチにはまだ信じられないんすけど・・・」
まぁ俺の噂が届いてない所から来たんだとしたらそう思うのも当然だよな。状況証拠でそうかもしれないと認めたけど、俺自身もまだ違うと思ってるしな。みんなが言う神様とも直接話したことだって無いわけだし。
「十人にも満たない数でスタンピードを止めて、その後すぐにたった三人でドラゴンを倒した人が神の使いでなければなんなのだ!」
「な、なんすかそれは・・・。本当の話なんすか?」
リリアの話に驚いた顔でコチラに目を向けてくるラスクだが、俺にはそんなことを自分で自慢げに語る趣味は持っていないので、どーだろうねといわんばかりに両手を広げてとぼけてみたが、
「私も最初は疑ったけど、これはトレイルのほぼすべての衛兵と冒険者、それに相当数の住民から目撃されている確実な情報なのだ。そんなに疑うんだったらラスクの年齢を当ててもらったらどうなのだ?」
そういうと、二人してこっちを見てくる。
これ言わないとダメなやつ・・・だよねぇ。
「60だろ?随分と年の離れた姉妹だとさっきも言ったぞ。」
「ハッ!たしかにっ・・・!全然気が付かなかったっす!」
さっき歳の話をした時に反応が無かったのは俺の事を知っていたのではなく、ただの天然だったのね。
「職業は鍛冶師でしかもかなりの実力者だろ?」
「そんなことまで!?クイルの鑑定なんてここ15年はしていないからウチの情報が洩れるなんてことはないはずなのにっ!!」
15年もクイルの鑑定をしていないって・・・大きな街に入るには必ずするものなはずなのに、彼女は一体どういう生活をしていたんだ?
「なるほど・・・それで私をこのただの大工仕事にかりだしたって訳っすか・・・」
悪かったな、ただの大工仕事で。
だが、新築物件はこの家より大きく作るつもりだからかなりの費用がかかるだろうし、その分取り掛かる者達への報酬も良くなるはずだぞ。
折角新しく作るのだからとりあえずとかそんな中途半端な物にはしたくないからな。
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