第134話 ギルドランク2
とりあえずギルドランクの名称と順番はカッパー、ブロンズ、アイアン、シルバー、ゴールド、ミスリル、プラチナ、アダマンタイト、オリハルコンの順とすることにした。
宝石を入れるとさすがに種類が多すぎるし、ランク順を決めるのもちょっと難しくなるから、俺の提案で金属限定にした。
マリアはダイアモンドを入れたいと最後の方まで食い下がっていたけど、なんか語感もランクっぽくないからと却下した。
金属だけと決めた後も、なにげに胴と青銅はどっちが上か・・・とか、ミスリルとプラチナだったらミスリルの方が強そうだけど、ミスリルってたしか魔法銀だったから、銀がこの世界の貨幣価値として最高である白金が上位であった方が分かりやすい・・・とか悩んだ部分も結構あった。
だけど、それほど明らかに感じてしまうような違和感はなさそうだったから、途中であれこれ悩むはやめ、もうこれでいいかと決定してしまった。
まぁこういうのは決めてしまえばそれが当たり前になりそうだし、そんな感じでもきっと大丈夫だと思う。
ちなみにプラチナより上のランクは完全に俺の趣味です。
だってあった方がいいでしょ。伝説系金属。
オリハルコンとかをマリアやミーナに聞いても知らないと言っていたからもしかしたらこの世界にもないかもしれない。
アダマンタイト以上は誰も上がれない位に難しい条件にしてもいいかもな。その方が価値でそうだし、カッコいい。
「それではギルドランクの等級順はこの案を提出したいと思います」
「へーい」
「次は・・・」
まだ続くのかぁ・・・と思っていたが、むしろここからが本番だった。
ランクを上げる基準や冒険者とランクを紐づける方法はどうするか。運用面の相談が始まったのだ。
ってか俺にそんなこと言われても困る・・・と思ってどうしようかと思って困った質問をサポシスさんに相談したら、優秀な彼女はその解決策を次々に提示してくれた。
冒険者とランクの紐づけは、今運用されているギルドカードにクイルで情報を書き込めることが可能らしく、それを利用することで簡単に出来そうだった。
そんでもって書き込みの際の手続きやその記録と履歴の義務化。そしてその改ざんの厳罰化。それを防ぐ予防策から運用をするにあたっての注意点etcetc・・・。
とにかくその指摘が的確で見事なものだった。
俺は次々来る質問を左から右に流して、即座に聞こえてくるサポシスさんの返答を左から右に伝言していただけだったのだが、一応ちゃんと聞いてはいた・・・つもりだ。
それらを聞いていて、たしかにランクが簡単に冒険者に偽造されたりギルド側の評価方法が地域や人によって変化してしまってはこの制度の意味も意義も信頼性もなくなって、せっかく作ったのにすぐ有名無実化してしまうかもしれない。
こういうのは新しく作り出すのも大変だが、それを運用し続けることの方がもっと大変なのだなぁ・・・と感心しきりだった。
「この項目は必ず記載し、厳重に保管する・・・っと」
俺(サポシスさん)に言われたことを一生懸命メモしていくマリア。
「ふぅ・・・しかし、サトルさんは博識ですねぇ。今まで接してきた印象ではそんなイメージはなかったんですが・・・あ、すいません」
「いや、別にいいよ」
実際博識なのは俺じゃなくて( )の中の人だしな。
「今日は本当にありがとうございました。これで現実的な運用まで可能になりそうです!」
本格的だったもんなぁ、サポシスさんの指摘。まるで会社運営を実質的に任されていた美人秘書みたいだったぜ。「日本有数の大企業は秘書の私が支配してます」とかいうラノベの主人公になれそうだ。ちょっと読んでみたいかも。
「それでは、私はこの辺で失礼しますね。・・・ギルマスや本部への報告に、ランク制度をはじめるにあたっての規約整備・・・これから忙しくなりますよ!」
忙しくなるって言ってるのになんだかウキウキして嬉しそうだな。そんなんじゃブラック企業でいいように使われちゃうぞ。昔の俺みたいにな。
前に勤めていた会社の上司なんて自分の机の後ろの壁に「月月火水木金金」なんて戦時中みたいな張り紙貼って、休日出勤をしろっていう無言の圧力かけていて頭イカれてるんじゃないかと思ってたなぁ。その部署全員が。
「あ、カードへランクを書き込むやり方は一度実際に見てみたいので、よろしかったら明日にでも冒険者ギルドへ来てもらうことは可能でしょうか?」
え、俺もやったことないんだけど。ってか俺にも出来るのかな?
「以前触れたクイルには権限設定がされていませんでしたので、冒険者ギルドの物も同様であれば、可能だと思われます」
出来んのか。権限設定がされてないってことは誰でも書き込めるし変更できちゃうってことか・・・。それって危なくない?
「それによる危険性は先ほど伝えたことを組織的に実行すれば、余程の悪意が介入するか、相当のイレギュラーが無い限りは回避できるでしょう」
そういやそんな予防策めいたことも言ってたような気もしないでもない気がしたりしなかったり。まぁなんにせよ、俺にもクイルの書き込みが出来るっていうのなら・・・、
「じゃあこのまま一緒に行ってしまおうか」
後に延ばすとまた忘れてしまいそうだしな。
「よろしいのですか?クイルによる付与の可否確認は一番と言っていい程重要なことなので、こちらとしてはとてもありがたいです!」
「オリヴィエ達はどうする?ついでだし、帰りに買い物して行こうと思うから一人か二人はついて来てほしいんだけど」
「それなら私が行きましょう」
「私は残って掃除をしておきます。帰ってきてからできていなかったので」
オリヴィエはついてくるようだが、ミーナは残ってキレイキレイしてくれるようだ。そういや掃除してなかったな・・・と思ったけど、考えてみたら今までずっと任せっきりで俺は一回も掃除したことなんてなかったわ。かっこわらい。・・・今度手伝おう。
「私もランクのことは興味があるからついていこう」
「アタイはミーナの手伝いと、さっき教えてもらったことの練習をしておくよ」
ちょうど半々に分かれたね。ウィドーさんの練習とは俺(サポシスさん)から教えてもらった僧侶の魔法のことだろうな。
ウィドーさんが使う場合は詠唱が必要だから使う時は大変そうだった・・・ように見えたのは俺が必要ない側の人間だからかもしれないけど。
詠唱は魔法を使おうとした時に頭に浮かんできてそれを正確に実行しなくちゃならないみたいなんだが、やっぱり事前に暗記したり練習しないと、咄嗟の場面で使用するのは難しそうだと感じた。実際、最初の方は何回か失敗してたしね。
「それじゃ行こうか。ミーナとウィドーさんは一応気をつけてな、留守番頼んだ」
一応あんなことがあって間もないしな。もうウィドーさんも僧侶のレベルは13になってるからそんじょそこらのやつにゃ彼女には勝てないだろう。
ミーナと一緒なら盗賊団がまるごと襲って来たって無傷で全員倒しちゃいそうそうだよな。まぁその場合はきっと二人が無傷でも家の方は色んな所が風通しよくなってたりしそうだけど・・・。
「はい、いってらっしゃいませ」
「用事を済ませたら寄り道しないで帰って来るんだよ」
キミは俺のかーちゃんかね。母性が凄い。こんな感じも他の子達には無い特徴で、
実によい。そして癖になりそう。
俺はオリヴィエとアンジュ、それにマリアも引き連れてギルドへと向かった。
さっさと済ませて買い物へ行こう。
そろそろみんなの服も追加で購入するか。数着あってローテできてはいるけど、もっと色んな服を着ているところも見てみたいしね。
あ、でもオリヴィエが選ぶと・・・今から却下の理由を考えておくか・・・。
アンジュ、お前は大丈夫だよな?
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