第130話 モフモフ

「一応確認しておくが、貴族の使いに対してあんな感じの対応しちゃったけど、大丈夫だよね?」


自分が正しいと思ってやったことにも関わらず後になって心配になってきちゃうっていう・・・。こういうところに元小市民で下の立場でしか働いたことのない人間の悪いとこが出るよな・・・。


「正確には彼も騎士爵と言っていたので、貴族自身に対しての対応だったのですが、私としては特に問題ないと思います。一市民ならともかく、使徒様であらせられるサトル様に騎士爵風情がとっていい態度ではないかと」


あー、そういや騎士爵である・・・とかそんなようなことを言ってた気もするなぁ。騎士爵って俺の知識ではなんか褒章みたいな感じで一代限り貴族と名乗っていいよーって感じのやつだと思ったけど、なんであんなのが騎士爵なんだろう。それともこの世界は騎士爵にも継承権があったりすんのかな?


「全く問題ないぞ。考えてもみろ、サトルが使徒だと分かった瞬間、トレイルの領主で男爵でもあるカルロが無条件で跪き、周りのだれもその行動を不思議とも思わず追従していただろう?」


たしかにそんなこともあったなぁ。


「つまりはそういうことだ」


アンジュの言う通り、俺が使徒である・・・しかもあの時は「かもしれない」というような確定もしていない状況だったのに、カルロはその場に跪いたのだ。そしてその行動こそが正しく、さっきのデオードの態度の方が非常識であり、問題だった・・・ということだろう。


まぁ俺的にはあの時だけじゃなくて今も「かもしれない」と状況は変わっていないと思っているのだが、みんな的にはもう確定事項のようなので、特にこちらから否定することはしない。否定しきれないというのが正しいか。


「神の使いであらせられるサトル様とこの国の子爵風情の・・・しかもその使いの男が礼を尽くさないというのは、あり得ません!」


おこである。御狐様よ、鎮まり給え。

俺はデオードのことを思い出して、力を入れすぎているオリヴィエをなだめる為に、ピンと張って上を向いていたもこもこの尻尾をモフモフして、彼女をふにゃふにゃにしておいた。今日も最高である。


モフモフっていいよね。もっと欲しい。

この世界には投げてモンスターに当たると赤と白が上下にパカって開いて中に収納するのが成功すれば使役できるという伝説の魔物玉はないものか。

あ、そういやテイマーとかそんな感じの職業ってあんのかな?


「あります」


え、ポ〇モンあるの?


「ありません。獣使いの上位職業が魔物使いとなり、魔物使いは一定の条件を整えることで魔物を使役出来ます」


ポケ〇ンはないかー。

でも魔物を使役出来るってのはいい情報だぁ。これはモフモフ天国も夢ではないのか!?


でも魔物使いは上位だからまずは獣使いからってことになるんかな。ちなみに取得条件は?


「獣使いは、人種、竜種、神族、魔族、魔物、昆虫、植物、微生物・・・」


あー、待った待った。


「・・・」


要するに、それは俺が今頭に思い浮かべているような「獣」とされるもの、でいいかな?


「・・・はい、問題ありません」


たしかに獣の定義って難しいよな。四足獣だけが対象とかだったら簡単だったのだろうが、俺が思い浮かべたのは哺乳類や鳥類、両生類とか爬虫類まで対象らしいから、それをサポシスさんのような完璧主義の印象がある人が説明した結果、さっきのような対象外を省いていく作業になったのだ。

指定の物を指定せずに種族単位から外していったのはそれが一番高効率だったからだろう。


「その「獣」から64以上の信頼値を得た後、対象の「獣」が魔物を討伐することで取得することが出来ます」


テイムしたやつで魔物を倒す必要があるのか・・・まぁそうじゃなかったら犬を飼っただけで獣使いになれちゃったりするだろうしな。

しかし信頼値64って・・・よくある数値化されたステータスのようなものがあるなら鑑定で表示して欲しかったよなぁ。もう見れないことに慣れてしまったけど、数値が確認出来るのならば便利そうよね。


他の職業はHPを半分以上減らして・・・とかいう条件がついていたが、獣使い取得条件にそれがないってことは、とどめを刺すだけで大丈夫そうだな。

それならなんとか・・・なるか?まず魔物に獣が立ち向かっていくという時点でそもそも難しいような・・・。


「ご、ごひゅりんはまぁぁ~~・・・」


俺がサポシスさんと獣使い談義をしている間中、家電で長電話している時に受話器と本体を繋ぐぐるぐるコードをついつい指でくるくるしちゃうように、ずっと無意識に気持ちの良い感触の尻尾をにぎにぎさわさわしていたら、遂に耐えられなくなったオリヴィエがぐにゃんぐにゃんになって俺に倒れ込んできた。


「あ、ごめん。考え事してた」


「しっぽはらめれすぅ~」


体に力が入らないようで、完全に体を預けてきたオリヴィエ。ちょっと悪いことしちゃったかな。頭なでなでしてあげよう。

ちょっと前の俺だったらこんなエロゲーみたいな声出されたらその場で襲っちゃってただろうけど、今はちゃんと理性が頑張ってるぜ。我慢しているだけで血流はちゃんと下半身に向かって猛ダッシュしているから安心してほしい。何をとはいわんが。


「食事途中で邪魔が入ったが、料理を食卓に戻して食ってしまおう。そんでまたダンジョンに行こう」


貴族に軽く喧嘩も売ったのだし、ウィドーさんのレベルをもっと上げときたい。今の12レベルでもそこらのやつらには負けはしないだろうが、相手は腐ってても貴族だ。

金に物を言わせてカルロみたいな二桁レベルの実力者を刺客に使ってきたりするかもしれない。そんなことしやがったらそいつごとぶっ潰してやるけど、その過程でウィドーさんに危険が及ぶかもしれないしな。


20位まで上げちゃえば、安全だろ。そんくらいあればこの世界じゃ一騎当千出来ちゃうからね。



そして俺達はデオードのせいで中断していた食事を再開し、またダンジョンへと向かった。


「ご主人様、狩りの効率もよくなったので背負い袋を余計に持っていきますか?」


「あー、そう・・・いや、今までのままでいいや」


「そうですか?私は二つや三つは持てますよ?」


背負い袋をどうやって三つも持つ気なんだ・・・。そりゃあ今のキミなら持つこと自体は余裕だろうけど、パンパンに詰まった背負い袋を三つも持ったらいじめっ子にいっぱいランドセルを持たされてる小学生みたいになるぞ。


「大丈夫。荷物の問題はもうすぐ解決する・・・はずだ」


そう、俺の武器商人と防具商人の現在のレベルはもう14になっている。念願の大商人が持つ「ストレージ」のスキル獲得までもう少しなのだ。


ドロップアイテム目的の狩りなら遭遇してすぐに倒してしまうので、経験値的には美味しくない。といってもスピード自体がとんでもなく上がっているから前と比べたら全然レベルの上昇速度はあがってるんだけどね。


だが、今回はドロップよりもレベルの上昇重視だから、ちょっとダンジョン内の動きを変えようと思っている。

上手くいくかは分からないけど、うちには優秀なセンサーが備わっているからきっと大丈夫なはず。


出来れば今回の探索で手に入れちゃいたい。まぁ今日で行かなくても明日には確実に到達出来るだろう。






当初から手に入れたいと思っていたストレージ。

やっと手に入る。

ムフフ。なんか嬉しくてつい顔の筋肉が緩んじゃうよね。


どんなんだろう。

虚空に手を突っ込んでモゾモゾするタイプかな?もしそうなら猫型ロボットごっこが出来ちゃうね。


あー楽しみだ。


これで容量が宝石箱位とかふざけたこと言ったら許さないからな!

あ!これフラグじゃないからな!


やめろよ!


絶対だぞ!!

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