第119話 上位職

「うおぉ・・・なんじゃこりゃ・・・」


決してベッドの乱れように驚いたわけではない。

だってそれは俺が原因なのだから驚くようなものではないからな。


俺がそうなったのは、みんながまだ眠っている中いち早く目が覚め、最近は目覚めの日課としているステータスチェックをしてから、一つ思い立って職業変更をしようとした時だ。


スタンピードの急激なレベルアップでストレージスキルを得るための商人と奴隷商人のレベルが目標値である20を大きく超えていたために、それぞれを武器商人と防具商人へと変えようと思って頭の中で商人を選択した時、その横にいつものように現れたサブウィンドウの大きさが、いつものそれとは少し異なり、縦にかなり伸びていた。



 戦士

 重戦士

 剣士

 騎士

 格闘家

 魔法使い

 魔道士

 僧侶

 神官

 盗賊

 凶賊

 村人

 村長

 農民

 商人

 豪商

 武器商人

 防具商人

 奴隷商人

 薬草採取士

 錬金術師

 料理人

 色情魔

 


なんか増えてるな。

重戦士と・・・騎士と格闘家に・・・村長?なんじゃこりゃ。俺は村を興したことなどないぞ。どんな条件で手に入れたんだ?

それとあとは魔道士と神官・・・それに薬草採取士と錬金術師・・・か。料理人はいつだったか、前に増えていたよな。


んー、重戦士は戦士の上位ジョブで魔道士や神官もそれぞれ魔法使いと僧侶の上位って感じなんだろう。騎士ってのが上位なのかどうなのかよくわからんなぁ。

格闘家とかもたぶん今持っている職業がレベルアップしたことで何かしらの条件を満たして入手したんだろうけど・・・いきなり40くらいレベル上げちゃったからもう何がどの条件でどうしてそうなったのかとか全然わからんな。まぁこの辺はサポシスさんに聞いたっていいけど、別に欲しい職業とかがあるわけでもないし、今は詳しく聞かなくたっていいか。


なんせ・・・今は超けだるい・・・。

何故かって問いはやめてくれ・・・な?


しっかし・・・いくらステータスが上がってるからって自分の体からあんな量が出るなんてな・・・ちょっと自分でも信じられん。明らかに両タンクの容量を超えている気がするんだが・・・色情魔は生産力もアップさせてるってことなのかな?


うわ、そんな色情魔もレベル3だったのが今はレベル11になっとる・・・ほんと、すんません。

・・・っていうか、いくら昨日が乱戦だったとはいえ、上がりすぎじゃない?これ・・・。


あ・・・もしかして、これも連戦ボーナスがついた・・・とか?・・・いや、この上がり方は絶対ついてるな・・・。重ね重ねすいません。いろんな意味で。

どうりで戦っても戦っても・・・なんか色情魔をつけるのがちょっと怖くなってきたな・・・。でもつけないとあんな連続では出来ないし・・・。う~む、なんていう贅沢な悩みなんだろう。至福。


でもそんなビーストモード中でも「初めて」だった二人にはちゃんと最初は優しくしてあげたんだから誉めてほしい。


その分オリヴィエとミーナにしわ寄せがいった気がしないでもないが、その内何回かはオリヴィエの方から挑んできたんだから文句は言わせないぞ。

彼女はそらもう勇敢だった。その後に見事散っていったがね。色情魔さんマジパネェっす。


さっきわざわざ強調したからもう気が付いているかもしれないが、残りの二人は共に、今回が初戦だった。


昨日あんなことになったウィドーさんだったが、どうやら服を剥ぎ取られたものの、俺の救出はギリギリ間に合っていたようで、結果的に見ればアレは未遂だったようだね。完全に入ってたと思ってたわ、俺・・・。


危なかったよ・・・襲われた直後だからと最初は優しくしてあげようとしたのが吉だった。どうりで反応がウブだったわけだよね。それも襲撃直後だからフラッシュバックとかしてのことかと思ってたけど、それは初回限定版のソレであってあのゴミを思い出してのことではなかったらしい。


というか襲われたうんぬん以前に、ウィドーさんもアンジュも結構なとs・・・ゲフンゲフン・・・なのに、初物だったというのはかなり意外だった。


まぁそれを突っ込もうと思った時に殺気が増したからすぐに取りやめたんだけどね。


激戦後にアンジュもウィドーさんも出会ったばかりの俺とこんなことになってよかったのかと聞いたのだが、その時二人に、


「私は貴方のものになるといったはずだぞ」


「旦那は自分の魅力に気が付いていると思ってたけど、意外に可愛いとこもあるんだねぇ」


とか言われて照れちゃった。

やっぱり俺は今どうやらモテ期に突入しているらしいです。やったぜ。


初めての二人の激戦後にそんなことを聞く余裕があったのかと疑問に思うだろうが、二人は数回ぶつかり稽古した後はギブアップし、後半はオリヴィエとミーナがメインだったので、全部終わった時には二人共結構回復していたんだよ。逆に俺はだいぶグロッキーだったんだけどね。


新しく職業が追加されたものの、とりあえずは予定通りストレージ獲得のために商人を武器商人に、奴隷商人を防具商人へと変更した。


後は他も変えるかどうかだが・・・重戦士はつけてもいいけど、問題はレベル55の戦士を重戦士レベル1に変えたら逆に弱体化してしまうんじゃないかってことか・・・。


まぁこういうのは将来的には絶対上位の職業の方が強くなったりするんだろうけど・・・あ、盗賊を重戦士に・・・ってこれは駄目なのか・・・。

どうやら上位ジョブと同系統の職業は共存できないようだ。結構シビアだな。


じゃあ戦士と取り換えるしかないか・・・。

凶賊っていうたぶん盗賊の上位ジョブもあったけど・・・これは重戦士がある程度育つまではそのままにしておくか。つけている前衛職を急に全部入れ替えたら急に弱くなっちゃいそうだしな。まぁオリヴィエ達が居るから大丈夫だろうけど。


色魔も外して・・・う~んと・・・じゃあコレをアレして・・・これでいいか。


すったもんだして色々考えた結果、俺の職業はこうなった。



 重戦士  Lv1

 魔道士  Lv1

 僧侶   Lv55

 盗賊   Lv55

 武器商人 Lv1

 防具商人 Lv1



うん、レベルの高い盗賊と僧侶を残すことで前衛と後衛両方に必要なステータスを確保し、他はなるべく上位ジョブを入れる構成にしてみた。

後は武器商人と防具商人をレベル20まであげて大商人を獲得できれば枠が一つ空くから更に自由度も増すだろう。

はやく上げちゃいたいね。


「ん・・・ご主人様?」


「すまん、起こしてしまったか?」


職業を変更する際には特に体を動かす必要などはなく、考えるだけで実行できるのだが、色々思考する中で無意識にした細かい身じろぎなどを敏感なオリヴィエは感じ取ってしまったのかもしれない。


「いえ、自然に目が覚めただけです。・・・他のみんなは・・・まだ眠っているようですね」


目を二度三度擦った後に視線を足元に向けたオリヴィエはそこにスヤスヤと寝息を立てている三人を見て言った。


「昨日はちょっと無茶をしたからな・・・」


このベッドは大きいから五人が並んで寝ることも出来るが、昨日はくんずほぐれつした後にそのまま眠ってしまったから各々姿勢も体の向きもバラバラだ。

ミーナは端っこで小さくなっているし、アンジュとウィドーさんは俺とオリヴィエの足元で向かい合って抱き合うような形になっている。・・・なんかちょっといいな。それ。


「昨晩はご主人様に可愛がっていただいて、みんな幸せそうでした」


「そ、そうか」


嬉しいけどそんなことを面と向かって言われるとめっちゃ恥ずかしいな。






ちょっと二度寝してしまいたい気持ちもあるが、オリヴィエも目覚めたことだしこのまま起きてしまおう。

やらなきゃいけないこともあるしな。

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