第102話 P.S.

「え?」


この娘今なんて?俺の物にとか言わなかったか?いや、言ってた。

なんで?どういうことなん?


告白のような・・・いや、もうプロポーズめいた事を言われた気がするんだが・・・。


「すまん、もう一度言ってもらってもいいか?」


人生で女性からの告白をされるなどという経験値が0だった俺には突然すぎて脳の処理が追いつかず、それの再消化と再確認の為に発言のリピートを求めた。


「だから!私は・・・はっ」


アンジュは最初は俺の求めに素直に応じようとしたが、途中で自身の発言の突飛性と男に馬乗りになっているという異常性に気がついたのか、ハッとしてセリフをキャンセルしたようだ。


「い、いや・・・すまない。少し興奮しすぎて取り乱してしまったようだ」


恥ずかしそうにしながらもモゾモゾと俺の上から降りるアンジュ。


「わ、私の里では使徒様が現れたら里を代表した者が付き従わなければならないという・・・決まりが・・・あー、その・・・・そう!掟が!そういう里の掟があってだな!だから私がサトルと一緒に居た・・・いなきゃいけないんだ!」


いやいや、無理ありすぎだろ、なにその説明。あー、はいオキテオキテって言って欲しいツッコミ待ちだったりするのかな?嘘下手すぎやろ。


だけど・・・まぁここは乗っといてあげようか。あえてね。

エルフ美人である娘がわざわざ向こう側から着いてきてくれると言っているのだ。断る理由もあるまい。美人だしな。

それに、先の戦いでかなりのレベルアップをしてしまったのでどうにかしないといけないなーと丁度思ってたところだったし、美人だしな。


「ちょっと無理がある気が・・・」


「そうですね」


あ、やっべ。心の中でツッコミを入れていたら疑念を先に口に出されてしまった。


「そ、そそそそそんなことはありませんよ従者様!ほ、本当に私の里では言い伝え・・・じゃなかった・・・掟が!鉄のきびし〜掟が・・・あ、あるのでしゅ!だ、だから・・・その・・・私は・・・」


「わかった、受け入れよう」


オリヴィエ達に疑念を持たれてしまったからそれなりの理由をつけなきゃダメかなとも思ったんだけど、なんかもう噛みはじめるわ涙目になるわで可哀想になってきたからすぐに答えを出してあげた。めっちゃわかりやすく嬉しそうにしてるわ。

オリヴィエ達には後でいい感じの説明をしておけば大丈夫だろ、レベルアップのこともあるし、受け入れる理由がないことはないからな。


「ほ、本当ですか!?」


「うん、いいよ。ただし、俺達に着いてくる以上、奴隷であるオリヴィエ達と同じ扱いを受けてもらうことは容認してもらう」


「わかりました。それでしたら奴隷商人の元へいけばよろしいですか?」


「あ、いや、別に奴隷になる必要はない。ただこの二人と同じ扱いを受け、その上で二人と仲良くできないのであれば連れて行けないってだけだ」


「なるほど・・・それならば私からは何の問題もありません!その・・・お二人がよければですが・・・」


二人と仲良くするという条件を聞いて、オリヴィエとミーナからも許可が降りないと行けないのかと思ったのだろう。アンジュは不安な目で後ろにいる二人を俺ごしに見つめた。

そんな心境を察してか、オリヴィエは優しい笑顔で応じる。


「私はご主人様がいいというのであれば大丈夫ですよ」


「右に同じです。サトル様がよろしいのであれば私も何も異はありません。先の件もありますしね」


さすがミーナ。こっちから何も言わなくても必要以上にレベルアップしてしまったことの問題に気がついていたか。レベルの概念すら教えてないし、俺のように鑑定を使えるわけでもないのにほんとよく気がつくよな。いや、あれだけ急激に力が増していればミーナじゃなくても気がつくか。


「それじゃ、これからよろしく頼むな、アンジュ」


「はい!」




ってなことがあって超嬉しそうな笑顔で返事したアンジュはその後もウキウキした気持ちをなんとか隠そうとしていた感じはしていたが、溢れ出すその感情を留める事が出来ずにいた。

というのも、不意にスキップしはじめてそれに俺が気づくと突然辞めたり、ニヤニヤしながらこちらを見ている時に目があったりしたら慌てて逸らされるのだが、表情がそのまましまらないニヤけ顔だったりするからとてもわかりやすい。

むしろ逆にアピールしてんじゃないかと思うくらいだが、本人はあれで隠せている様な雰囲気を出しているんだから凄いよな。


どうやら俺についてくる理由を里の掟だか決まりだかなんかそんなものがあって仕方なく、というていにしたいらしいのだが彼女はどうも嘘が超絶下手くそらしく、掟とかの話になると目がクロールを通り越してバタフライしてるんじゃないかと思うほど豪快に泳いでいるからまるわかりなんだよな。


さっきいったように俺としては彼女が自ら望んでついて来てくれるというのであれば断る理由もないし、問題は全くない。


ちなみにスタンピードの魔物は俺達がアースドラゴンを倒した時にはほぼほぼ倒しきっていた、ドラゴンのこともあってすっかり忘れていた北門の方だが、あっちは予想通り魔物の数が西門に比べて少なく、合計でも20匹程しかこなかったらしい。


アースドラゴンを討伐した直後くらいのタイミングでダスティン達は念のために数名の冒険者を残して西門へと駆けつけてきた。


20匹もの魔物相手に少人数で怪我人もなく対処出来たことに当初は興奮を隠せない様子だったダスティン達も、カルロに促されてアースドラゴンの死体を見た時は開いた口が塞がらないとはこういうことをいうんだろうな、というリアクションをみせてくれた。


なぜ殲滅までの時間が西門とほぼ同時になったのかと疑問に思ったが、どうやら配置したメェンバーの二人が俺が思ったよりも活躍出来なかったみたいだ。


カルロはダスティンよりも当初のレベルは2高いLv10だったはずだが、原因はレベルではないはずだ。なんせこっちにいたマルクはダスティンと同じLv8だったが、関係なく無双していたからな。


だとしたらどうして同じレベルのダスティンがそれほど活躍できなかったのか。聞けばいつもよりは力を増しているように感じ、実際普段よりも短時間で魔物を倒すことは出来たらしいから、PT補正自体は乗っているのだと思う。


であれば・・・距離か。


PT補正は距離が離れすぎると効果が薄れるのだろう。

不幸中の幸いだったのは、〇〇m離れると100が0になる・・・のではなく、離れる毎に補正値の減衰が起こるということだったことか。


先の体験をするともう20匹の魔物なんて・・・とか思ってしまうが、20匹の魔物が同時に襲ってくるというのは結構な脅威だ。真っ向から戦うという選択肢がとれなかった今回の件ではそれこそ命の危険にまで及ぶようなものだっただろう。


だからこそダスティンは怪我人もなく対処出来たことに興奮していたのだろうからな。


だがこの意外だった北門の苦戦は俺にとっては逆によかったのかもしれない。

なぜなら、ダスティン達のレベルはそれぞれ1づつしか上がっていなかったからだ。


どうやら連続討伐による経験値ボーナスも俺のボーナススキルの効果も距離が離れていると加算されないようだ。向こうは向こうの連続討伐ボーナスがあったのだろうが、あれはおそらく普通ならほんとにおまけ程度のような微量な物なのだと思う。


だが誰が設定したのか知らないけどその計算式をかけ算にしたせいで、今回のような大量の敵を少人数で対処したときにその数値がどんどん膨らみ、最終的にとんでもない量の経験値が入ってきたのだろう。


まぁ普通はスタンピードをほぼ1パーティーで対処してしまうということ自体が異常なのだから、今回のようなことを俺抜きで再現するというのはほぼ不可能だろうな。経験値取得20倍もマルチジョブによる補正値上昇もなくなるからな。






結局、今回のスタンピードで高レベルになったのは俺とオリヴィエとミーナ、そしてアンジュとカルロとマルクの6人だ。


その内オリヴィエとミーナに加えてアンジュも俺のPTに入ったし、カルロは結構出来たいい貴族っぽいから大丈夫だろ。


マルクは・・・う~む・・・。

まぁ後でカルロかダスティンあたりに押し付けちゃえばいいだろ。しらんしらーん。

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