第69話 職業変更とマヨネーズ
昨日はベッドに入ったらすぐに意識を失い、何事もなかったように次の日の朝に起き、いつも通り朝のダンジョン探索を済ませ、今は家に帰ってきてステータスのチェックをしたところだ。
戦士 Lv12
魔法使い Lv12
僧侶 Lv12
盗賊 Lv12
奴隷商人 Lv12
村人 Lv10
パッと見はすべての職業が1上昇しただけに見えるだろうが、ずらっと並んだマルチジョブの中で一番下にある村人のレベルが10になっている。
密かに毎日楽しみにしていて注目していたのだが、6層に入ってレベルアップが加速したのもあって、かなりはやく目標のレベルに達することが出来た。
なんで村人のレベルを10にするのが目標なのかというと、オリヴィエを剣士にした時、サポシスさんが提示してくれた条件には「村人のレベルが10以上」という枕詞がついていたからだ。
剣士の条件にもあったように、おそらく戦闘職に変更するには村人レベル10以上が必要だと予想した俺は、どの職業を育てるにしても、村人のレベルは10にしておかないと変更も出来ないから、とりあえず10まで育てることにして商人を村人に変更しておいたのだ。
「どれどれ・・・お、やっぱりそうだったみたいだな」
試しに戦士の職業を変更してみようとしたら、変更可能の職業として、剣士、商人、武器商人、防具商人、薬草採取士、料理人の6つが出て来た。
商人は最初から持っていたから、一気に新しく5つの職業を取得したことになる。
どうやら戦闘職以外の職業も村人レベル10が必要なようだ。
「どうしようかな・・・これ以上村人のレベルを上げる意味ってあるのだろうか・・・」
もしかしたらとんでもないレベルまで上げれば特殊な職業を得られるかもしれないが、そんなあるかどうかもわからないやることなくなったRPGのやり込み要素のようなことを今の状況でやることがいいとは思えない。
それに、やっぱりほしいよね。ストレージ。
「ここはやっぱり当初の目標に進んだ方がいいかな」
俺は村人を商人へと変えた。
ストレージを使えるようになるには大商人になる必要があるが、その取得条件は商人、奴隷商人、武器商人、防具商人のレベルをそれぞれ20以上にするというものだった。
持ってなかった武器商人と防具商人も変更可能になった今、これらを20まで上げれば、大商人・・・というより、そのスキルであるストレージを取得できる。
・・・あれ、そういえばこの世界ってスキルあるんだよな・・・。
まさかストレージだけが唯一のスキルってわけでもないだろう。だとしたら、他の職業なんかにもスキルってあるのかな?
・・・サポシスさんにとりあえず戦士の・・・
戦士のスキルは「腕力上昇」です
おおふ・・・そんな目の前にでかでかと出さなくても・・・。
聞こうと決めた瞬間に出たし、素早いを通り越して予知に近いような反応速度だったな。
やっぱ君、自我あるでしょ。・・・あ、ウィンドウ消えた。
戦士は「腕力上昇」かぁ。
たぶんパッシブだよね、これ。使おうと心で念じても、魔法みたいに言葉にしてみても特に発動している気配もなく何の変化もないから、おそらくはその職業についている限り常時発動しているパッシブタイプのスキルなのだろう。
スキルは基本的にパッシブタイプが基本となるのか、それとも・・・。
まぁこの辺のことも今考えても答えなんかでやしないタイプのものだから、今のところはおいておこう。
朝食を済ませた後、俺達はまたダンジョンへと潜り、ハラヘリが発動するまで6層で狩り続け、家に戻ってきた。
「今回の収穫は凄い良かったな」
「はい!食料がいっぱいです!」
食料に限定すると、ブライトブルからはブルのミルクが5個とブライトブルの肉が1個、ミレアサーモンからはサーモン1切れ、そしてランバードからはまた卵3個とランバードの肉1個がドロップした。
卵ケースも上手く機能しているようで、手に入った卵はすべて無事だった。
6層のゴブリンも結構倒したのだが、あれから砂糖は一つもドロップしていない。
もしかしたらゴブリンのレアドロップは確率が他のレアドロップよりも低いのかな。
でも鶏肉と牛肉もそれぞれ1個しか手に入らなかったから、確率が隔たっているだけかもしれない。
まぁいつか手に入るだろう。
「ダンジョンからの食糧はどれも確率が低いからなかなか多くは手に入らないけど、俺達だけで食べるなら問題なさそうだな」
売ればかなりの額になるみたいだけど、金を手に入れても美味い食材は買えないからな。食いきれない量にならない限りは今のとこ売るつもりはない。
「毎日こんな贅沢な食事をさせていただいて・・・ありがとうございます」
「そうですね・・・。私たちの身分では少し贅が過ぎているかもしれません。こういった食事はサトル様だけにして、余った食材は売った方がいいのではないでしょうか」
あ、そんなこと言ったら・・・ほーら、横のキツネさんがこれ以上ない程悲しそうにしているぞ。
「わ、私も・・・我慢できます!」
そんなこと言ってるけど目の端に溜めた涙が今にも零れ落ちそうだぞ。
「いや、美味い飯はみんなで食べてこそだ。遠慮することはないからこれからも一緒のものを食べてくれ」
こんな胸が苦しくなる表情を毎日されたら俺の方が我慢できなくなっちゃうよ。俺は昔飼ってた犬にだってほんとは与えてはいけない人間の食べ物を横でずっと行儀よく座られて愛くるしい瞳でじっとこっちを見られることに耐え切れず、ちょっとあげちゃってたような人間なのだ。なるべく塩分の少ないものを選んではいたけどね。
オリヴィエに同じ事されたら自分の分まで全部あげちゃうと思うぞ。
「ご主人様・・・!」
「ありがとうございます。よかったですね、オリヴィエさん」
勢いがよすぎてお尻まで左右に揺れているオリヴィエは、うるうるした目で俺を見上げて感謝を示してくる横で、ミーナは微笑みながら俺に一礼した後、オリヴィエのことをにこにこしながら見ていた。
もしかしたらミーナは俺が食事の独り占めなどはしないことをわかっていて今の話を持ち出し、オリヴィエのことをちょっとからかったのかもな。
あまりいじめてやるなよ。反応があまりに可愛いからたまになら許すけど。
「肉やパンはもう買う必要すらないかもしれないけど、野菜の在庫が心もとなくなってきたから、明日の昼からは少し買い出しに行こうか」
「何を買うか言ってくれれば私が買いに行ってきましょうか?」
「そうか?・・・あ、いや・・・買い出しはみんなで行こう」
ミーナにお使いをお願いしようとも思ったが、前回街に行った時の不穏な気配のこともあるし、一人にはしない方がいいと考え直した。
今のミーナのレベルならば大抵の相手に後れを取ることなどないとは思うが、もし不意を突かれて卑怯な手を使われたらレベル差など無意味になるかもしれないしな。用心するに越したことはないだろう。
「わかりました」
ミーナもそこら辺の事情をわかっているのか、すんなり受け入れてくれた。
「とりあえず腹減ったから飯にしよう。今日は卵を使ってマヨネーズを作ってみようか」
「まよねーず?」
やっぱり知らないか。そりゃそうよね、卵がそもそも高価で手に入らないのに、それを日持ちのしない調味料になどしようとは思わんよな。
マヨネーズは割と簡単に作れる。卵を混ぜながら酢と油を入れるだけだ。
ただ、店で売っている何か月も持つようなものは特殊な加工が必要で、自家製マヨネーズは日持ちしないから、基本的にその日食べるものはその日に作らないといけない。
「作るのは結構労力がいるけど、一度食べたら病みつきになるぞっ」
基本的にマヨネーズはなんにでもあうからな。
マヨラーとかいう種族はそれこそすべての食材にマヨネーズをかけるらしい。
「楽しみです!」
久しぶりに食べられると思ったらテンションが上がって少し作りすぎてしまったが、結果を見ればむしろ足りないくらいだった。
最初はサラダに付けて食べ、揚げ物にもつけて食べた時、タルタルも作ればよかったなーとか思った。でもやっぱりマヨネーズはいいね。
オリヴィエなんかサラダだけじゃなくて最終的に肉にまでかけて美味しそうに食べてたしな。
マヨネーズ効果ではじめてサラダのおかわりも出たから、家にあるほとんどの野菜を使い切ってしまった。
明日街に行ったらいつもより多めに買っておくかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます