第55話 不快
昼からはまたダンジョンに潜る。
出発前には指差し確認までして色情魔が外れていることをチェックした。
玄関で突然俺にしか見えていないステータス画面に人差し指を伸ばしたからオリヴィエ達には変な目で見られてしまったが、あれをつけっぱなしにすると暴走モードが終わらないから大変なのだ。
なんせ欲情したことに気が付いてから色情魔を外しても、それまでに溜まった沸き上がったスケベ心は解消されないからその場で襲うか帰宅するかの2択しか選択肢がなくなってしまう。
無理して続けようものなら戦闘そっちのけで二人の揺れる胸や弾む尻から目が離せなくなってとても危険だ。今の俺の発言の5億倍くらいにな。
だから出発前のステータスチェックはこれから毎回やっていこう。
どうせ今まで起きた時になんとなくやっていたものを出発前にもするだけだ。
鑑定でのステータス情報はそんなに複雑なことは表示されないから3人分やっても数秒で終わるしな。
さっきは俺だけだったし、どうせならもっかい全員分やるか。
そんなわけで・・・「鑑定」っと。
名前
アマノ サトル
性別
男
年齢
17
種族
人族
職業
戦士 Lv8
魔法使い Lv8
僧侶 Lv8
盗賊 Lv8
奴隷商人 Lv8
村人 Lv6
ボーナススキル
MP回復倍増(20倍)
PT取得経験値倍増(20倍)
マルチジョブ(6th)
PT設定変更
鑑定
詠唱破棄
システムサポート
所有奴隷
オリヴィエ
ミーナ
よし、色情魔はついてないな。
レベルは・・・あがってませんねぇ・・・。
まぁあせることもあるまい。
いつもはステータス出してもレベルまでしか目を通さなかったけど、今回はせっかくなので久しぶりに一番下まで目を通してみたが、所有奴隷の欄にミーナが加わっている他に変化は何もないな。
しかし、ボーナススキルの詠唱破棄ってなんの効果があるんだろうね。
魔法は念じるだけでは発動しないから詠唱破棄が有効になってないのかなぁ?
念じるだけで使えるようになったらそれはそれで便利だけど、今のところはまだ不便さより俺の内なる厨二の部分が勝っているからいいけどね。
次。
名前
オリヴィエ(奴隷)
性別
女
年齢
17
種族
狐人族
職業
剣士 Lv6
所有者
アマノ サトル
最近はオリヴィエのレベルの伸びも悪くなっている感じがするから、やっぱりレベルは高くなればなるほど上がりにくくなるってのは確定だろうね。
きっと表示されてない可愛さの数値はカンストして文字化けしていることでしょう。
はい次。
名前
ミーナ(奴隷)
性別
女
年齢
16
種族
人族
職業
槍使い Lv4
所有者
アマノ サトル
3とか4までは割とすぐに上がる印象があるんだけど、ここでは気軽に会える各地の王様があとどのくらいで次のレベルにあがるのかなどは教えてくれないし、そもそもどの魔物でどのくらいの経験値を貰えるのかもわからない。
これまで倒した魔物の数や種類を記憶しているわけでも、ましてや記録しているはずもなく、全てが鑑定の使える俺のみの感覚だよりだから全然あてにならない。
だが魔物を倒せば経験値が入り、レベルが上がるということだけは確実だろうから、その辺を無理に検証する必要も意味もないと思う。
いつかボーナススキルの鑑定の文字色が突然赤や金色や虹色になってグレードアップしてもっと詳細な情報が出たらやってもいいけど、今のこの少ない情報だけでそんなことするくらいならその労力はダンジョンアタックに割いた方が有益ってなもんだ。
考える必要のないものまで考える必要はないだろう。
「それじゃ、しゅっぱーつ!」
「・・・?」
「お、おー」
ステータスチェックを終えた俺が玄関を出たすぐにいきなり右手の握りこぶしを挙げて号令するもんだから、首を傾げるだけのオリヴィエと一瞬の沈黙が産んだ気まずさを感じたようなミーナが号令に答える姿を見て、俺は内心「満点の反応です」とサムズアップしておいた。二人ともちゃんと可愛いね。
家を出発してダンジョンの入口に着いた時、レベル2~3の冒険者のPTらしきが輪になって打ち合わせのような作戦会議のような話をしていた。
人数が8人居るからPTなのは間違いない。
これからダンジョンに稼ぎに入るのだろうな。
「お、最近よくギルドで見かけるあんちゃんじゃねーか」
「あ、どーも」
そのまま通り過ぎようと横を通った時に一人のスキンヘッドが俺達に気が付き、話しかけられてしまった。
社会弱者経験豊富な俺のメンタルでは無視することが出来ずについ返事をしてしまう。
ほんとはこんな男だけの集団などと話す意味も価値もないが、これはもう条件反射みたいなもんで俺の芯の部分に染みついてしまっているから今から変えるのはちょっと難しいかも・・・。
「ん?お前ら・・・まさか3人だけでダンジョンに入るつもりじゃないだろうな・・・?」
「あ・・・いやぁ、ちょっと入口だけ見学に来ただけですよ」
もういいかな?ちょっと臭いし。
お前らちゃんと毎日体洗ってんのか?
「だよなー!3人でダンジョンなんて入ったらすぐにあの世行きだぜ!お、そうだ。よかったら俺らが少し案内してやろうか?」
こいつら・・・視線がもう誰も俺に向いてねー。
下心が大声で聞こえてくるようで丸わかりすぎるわ・・・。
いらんいらん。
お前らの存在ごといらんわ。
「結構です。行こう」
二人に目配せをしてさっさとダンジョンの入口へと進む。
「あ、おい!ちょっと待て!人のしんせ・・・」
そのまま無視して進んだため、ダンジョンに入った瞬間に男の声は途切れる。
入る前になんの打ち合わせも出来なかったから少し心配して後ろを振り向いたが、ミーナに続いて最後にオリヴィエもちゃんと5層を選んで入ってきてくれたようだ。
「なんか嫌な感じでした・・・」
「そうですね・・・。最後は私の腕を掴もうとしてきたので、強めにはたいてきました」
あいつら・・・今度見たらしばこう。
俺のオリヴィエに触れようとするなど、今頃罪人に職業落ちしててもおかしくない罪だぞ。
「オリヴィエ・・・グッジョブ!ほれ・・・グッジョブ!」
俺が差し出したサムズアップに玄関の時と同じ反応を見せるオリヴィエだったが
「ぐ、ぐっじょぶ・・・?」
うんうん。
今回は執拗に促す俺の行動をわけもわからずに真似てきたオリヴィエに満足。
あのむさい男達で下がったテンションもお釣りがくるほど戻ったぜ。
可愛いは正義です。
「よし、それじゃ気を取り直して狩りをはじめようか。オリヴィエ、いつも通り魔物の気配を感じたらその場所まで先導してくれ」
「はい!」
俺の指示に相変わらず反応する尻尾に癒されながら槍を抱えて真剣な表情になったミーナを間に挟み、オリヴィエの後をついていく。
数分直進すると、オリヴィエの歩が数瞬止まり、それまでせわしなく動いていた大きな狐耳が左右共に同じ前方やや右寄りの向きで静止する。
「こちらです」
少しひそめた声で伝えてきた後、耳の向いていた方向に向きを変えて歩きだす。
「オリヴィエさんは凄いですね・・・私には何も聞こえません・・・」
「そうだな、オリヴィエには本当に助けられている。だがミーナも色んなことを教えてくれるからちゃんと役に立っているぞ」
「あ、ありがとうございます」
肯定するだけでなく、ミーナへのフォローを忘れなかった3秒前の俺を表彰してあげたいが、そんなものより今の二人の反応で俺は満足したからやっぱり要らないわ。
ありがとうな、5秒前の俺。
「ご主人様、居ます」
さっきよりもさらに抑えた声で伝えてきたオリヴィエの視線の先に目をやると、そこには大きなスクリーンでは決して見ないが家では結構好んで鑑賞していた腐ったアイツらが居た。3匹。人?匹でいいか。魔物だし。
ウォーキングウッドじゃなくてデッドの方もちゃんと居るのね・・・。
とか思っていたら
「うげっ!」
横顔ではわからなかったそいつらが首の角度を変えた時に見えた神経だけでぶら下がっている眼球を見た時、つい声を出してしまった。
一斉にこちらを振り向く。きもちわっる!
辛うじて繋がってた球体も遠心力で飛んでるやん!きっしょ!
声を出すのはしょうがないじゃないか!
映画やアニメなんかでしか見たことがなかった死体が30m程先で蠢いてるんだぞ!
そして、そいつらは・・・「走って」きた。
「近年流行りの方なのかよ!ファイヤーボール!!」
まさかのダッシュゾンビに慌てて魔法を放ち、命中させ先行する一体を後方へ飛ばす。
「オリヴィエ達は右!俺は左のと今飛んだやつを倒す!」
どんどん迫ってくる相手に少ない言葉で手短に指示を出す。
「「はい!」」
魔法で飛ばした1匹を除き、ほぼ横並びで走ってくる2匹をもう慣れてきたフォーメーションでそれぞれが分担し、迎え撃つ。
映画で聞いたようなオクターブの異様に高い雄叫びをあげながら向かってくるゾンビは・・・
勢いそのままに殴りかかってきた。
「って、殴るのかよ!!!!」
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