第52話 新職業
水路作業はちょうど腹が減ってMPが切れた日暮れに終わった。
「ご主人様、柵が作り終わりました」
随分はやいな・・・と思ったが、どうやら柵は森側とその両端を家側に伸ばした3辺のみで、家の正面にあたる森の反対側は作らなかったようだ。
オリヴィエの話では、森側からの侵入さえ警戒すれば反対側は必要ないらしい。
元々彼女の聴覚だよりの警戒網なので、オリヴィエが大丈夫というのならばそうなのだろう。
「それにしても、戦闘職になったとはいえ、この力の伸びは凄いです。・・・やはりサトル様の職業に秘密があるのでしょうか・・・?」
そうなのか。
確かに俺が水路を作っている横でサクサクと丸太から板を凄いスピードで作っていたし、杭を打ち込む姿もどこの屈強な工兵かと思うくらいに力強かったね。
もうレベル6になったオリヴィエは納得出来たが、まだレベル3のミーナもかなりのものだった。
もしかしたら職業には自分へのステータス補正だけじゃなく、PTメンバーにも補正値があったりするのかな?
そうだとしたら複数の職業を持つ俺の補正がオリヴィエ達にも働いていて、それが通常よりも強力な補正値の原因となっているのかもしれない。
「そうなのかもな」
「さすがご主人様です!」
俺の言葉にミーナは何かを考えているようだったけど、オリヴィエは・・・なんも考えてないな、これは・・・。可愛い笑顔を送ってくれるからいいけどね。
「よし、俺の方の作業もひと段落着いた。もう今日はこれくらいでいいだろう」
掘る作業と粘土でコーティングする作業は終わったけど、出来れば道路の側溝みたいな蓋がほしい。
コンクリートのしっかりとしたものは無理でも、今日のオリヴィエとミーナを見るに、結構なスピードで木材を作り出してくれるだろうから、ある程度の長さと厚さの板で蓋を作ればいいかな。
別になくたっていいからやる気が出た時に作ればいいや。
「これは何を作っていたのですか?」
「家のそばに肥溜めがあると嫌だし、汲み取る作業も無くしたいと思ったからな、トイレの水洗化の下準備をしていたところだ」
「トイレのすいせんか・・・ですか?」
まさか水洗トイレが全くないということはないはずだから、これはオリヴィエが知らないだけだな。
その証拠にミーナは疑問じゃなくて驚きの表情をしているし。
「まぁ、本当に出来るかどうかはわからないけどな、出来たらいいな程度に考えておいてくれ」
「わかりました?」
俺の言葉は信じるけど言っていることは理解できていない感じのオリヴィエが、肯定の語尾に疑問符を付けてしまうという高等テクニックを使いだした。
「それじゃ飯にしようか。今日も同じメニューになってしまうと思うが・・・」
「ありがとうございます!」
うーん・・・俺の意図が微妙に伝わってない気がするけど、嬉しそうだから別にいっか。
翌日。
俺の職業変更可能欄に異変が起きた。
昨日の作業で何かの条件がクリアされ、新しい職業が開放されていないかと思って確認してみると・・・それはあった。
色情魔
・・・。
確かに昨日はかなり頑張ったけど、俺だけのせいじゃないんだよ?
オリヴィエはなんか日に日に積極的になってくるし、それに触発されているのか何なのか知らないけど、ミーナもかなり・・・。
これの開放条件はやっぱり・・・昨日達成したんだろうな・・・。
条件はなんだろ。昨日の夜前まではなかったから2人同時は違うだろうし・・・考えられるのは2人同時に一夜で複数回、もしくは毎夜連続で性交渉をする・・・とかかな?
だけどオリヴィエは取得してないってことは・・・やっぱりタイミング的にも前者か。
・・・別になんでもいいか。
手に入れて何かデメリットがあるわけじゃないだろうし、他のメンバーにこんな職業をわざわざ取得させるなんてことにもならないだろうしな。
こんな条件のものをオリヴィエやミーナに取得させるなんて神が許しても俺が決して許さんぞ。絶対にだ。
もしかしたら色情魔が職業落ちに値するような職業だとしても、俺は既に盗賊を持っているから1個が2個になっても別に問題ないだろう。
あ、でも職業落ちって強制的に職業が変わるらしいから、色情魔はそれに準ずるものじゃないのか。
・・・いや、だって色情魔って言葉の響きがなんか性犯罪者みたいだもんな・・・。
まぁ日本だったらオリヴィエとミーナのような年齢の女の子と毎晩激戦を繰り広げている時点でそれに該当するか・・・。
俺も同年齢だからオッケーなんだっけ?え、なんで?大体年齢で・・・。
・・・今は日本にいないから別にそんなんもどうでもいいか。
せっかく入手したし、とりあえず奴隷商人とチェンジしてみる。
ないと思うけど、強力な職業の可能性も・・・ないとは思うけども、微レ存ってことで。ないと思うけどね、うん。
ストレージ問題もあるから実感のないようなものだったらすぐに元に戻せばいいだろう。
何事も試してみないとわからないしな。
しかし・・・何度も言うが、ステータスに色情魔という表示を見ると・・・。
もうちょい、こう・・・まぁいいか・・・。
「よし、それじゃダンジョンに行こうか」
「はい!」
昨日の最後はあんだけグッタリしていたのに元気だね、オリヴィエ君。
「5層からは3匹同時に行動している魔物が増えるようです。頑張りましょう」
3匹同時か・・・。
「それなら3匹同時の魔物に遭遇した時は、俺が2匹を請け負うから残りの1匹は俺が向かうまでの間、オリヴィエとミーナで頼む」
「「わかりました」」
俺の指示に神妙な表情で素直に頷くオリヴィエとミーナ。
「朝から飯までの間に潜る時は時間も短いし、層を進めるようなことはしないで5層を回って狩る感じにしよう」
「では、出入口からそう離れないような場所を重点的に回る感じでいきますね」
索敵役がいるってほんといいよね。
オリヴィエが居るのと居ないのじゃ効率が全然違っていただろうな。
「5層も森なんだけど、ここのダンジョンって地形の変化とかはないのかな?」
「ダンジョンの地形変化はどこも9層まで同じで、その先は毎層変わるのではないか、と言われてますね。現在知られている最高到達層は12層ですので、それ以降は」
12層が最高なのか。
ダンジョンは層を進めるたびに強さが上がるのはもちろんだが、一番問題になってくるのはやはり同時に出現する数だろうな。
5層の3匹でも普通ならかなり大変になるだろうに、PTの最大人数が8人なのにこのまま5匹6匹と増えていったら攻略難易度は跳ね上がるだろうな。
前衛のみや多めのPTなら一人に1匹といった対応も取れるが、そんなPTはやはりバランスが悪くなる。かといってバランス重視すると前衛が複数匹を担当することになり、戦闘の危険度は増すが、結局それを乗り越えられない実力がないとそれ以上進むことは出来ないし、それが難しいから到達層が12で止まっているのだろう。
俺のPTも今ならまだまだ大丈夫だが、層を深めてモンスターの数が増えれば俺だけでは対処しきれなくなるかもしれない。
そうなると他のモンスターを任せているオリヴィエの負担となり、いくら戦闘の才能がある彼女でもなにかあるかもしれない。
ダンジョンで何かトラブルが起こるということはそれすなわち命の危険に直結するということだ。
オリヴィエやミーナを失うことなどあってはならない。
だからPTメンバーはこれからも増やす必要が出てくるかもしれないな。
・・・女性限定だけど。
まぁ今後、いつかね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます