第38話 ルーティン
「クリエイトストーン・・・クリエイトストーン・・・」
粘土を生成しつつ、それをまとめてまた生成を繰り返すことで長さが20cm程の標準的なレンガのサイズを何個も作っていく。
「クリエイトストーン・・・クリエイトストーン・・・」
粘土は小学校の時に使用したような油粘土ではなく、天然素材のやつだ。
井戸掘りに使用する粘土は白い色のものがいいものとされていたが、理由は知らない。いいものだと上司が言っていたからへぇーそうなんだと思っていた程度だ。
そしてそんな俺が作り出したからか、俺の魔法で生成した粘土はその白っぽいものだった。
これがレンガに適していなかったらどうしようとか思っていたが、その時は違う感じの粘土をイメージして作ればいいか。
あ、そうそう。
ちなみにだが、こういったことはサポートシステムさん、最近は敬意を込めてサポシスさんと呼んでいたりするが、彼女・・・かどうかはわからない(俺の中では何故か女性のイメージなんだよな)が、サポシスさんに聞けば大体答えを教えてくれる。
だが、近々の俺はそれをやめていた。又、サポシスさんにも聞くまで出てくることをやめてもらっている。
なんでそんなお願いを聞いてくれるのかは知らないけど、試しにお願いしたらほんとに聞くまで一切出てこなくなった。
だって、なんでもすぐに教えてくれたらつまんないじゃん。
ちょっとやってすぐ飽きるようなゲームであればいくらでも便利機能は使用していくけど、俺はこれからここで生きていく覚悟がある・・・いや、望みか。
俺はもうずっとここで生きていきたい。
だから色々なことを楽しみたいのだよ。こういう検証もその一つだ。
ただ、絶対に使わないということではない。使いたいときは遠慮なく使わせていただきますよ。だって便利だもん。
そんなわけでこれからもよろしくお願いします、サポシスさん。
ピコ
・・・。
頭の中で電子音がした気がするんだけど・・・。
気のせいってことにしておこう。追及すると藪をつつきそうだ。
「おっし、MP切れた!」
何度も何度も粘度の高い粘土を何個も何個も製作してたらこの身の好みのMPが枯渇した。・・・この身の好みってなんやねーん。
という暇つぶしではMPの回復には至らない。
レンガ型にした粘土を乾燥させるために間をあけて均等に並べ、家の中に戻ってMPが回復するまでくつろぐ・・・途中でトイレに入ったが・・・宿の時も思ったけど、ここが一番異世界を実感するかも・・・。
いつかなんとかしたい・・・。
「ご主人様、替えの水をお願いしてもよろしいでしょうか」
トイレから出たところでオリヴィエと出会った。
「あー、スマン。丁度いまMPが切れたとこだったんだ」
「・・・えむ?」
MPは知らんか。
「魔力・・・?が切れて魔法が使えなくなったんだ」
「あ、なるほどです。それじゃ、私は井戸に水を・・・」
「魔法はすぐ使えるようになるさ。だからその間の時間を有意義にしてくれないか?」
オリヴィエの手を掴んで、意味深に2階へと視線を送る。
「あ・・・ハイ・・・わかりました」
それだけでオリヴィエはすべてを理解してくれる。
頬を染めて、俺の引く方向に一切逆らわずについてきてくれた。
いざゆかん、二人で作る有意義な時間へ。
MPが回復するまでと言ったが、あれは嘘だ。
というか一回で納まるわけがないんだからしょうがないよね。
その後はMPが切れても大丈夫なようにある程度水を用意してからレンガ作りを再開し、MPが切れたらくつろぎ、回復したらまたレンガ作りを再開した。
3回くらい繰り返したところで回復するまでの時間は裏の森で採取すればよかったかな、とか思った所で日が傾いたので、今日のレンガ作りは次にMPが切れるまでとした。
「おし、ここまでかな・・・おー、結構できたなぁ」
とりあえず乾燥を進めないと焼くことも出来ないからとりあえずはこのまま放置かな?
乾燥ってどの位した方がいいんだっけか・・・うーん、思い出せん。
2日位放置して様子見てから決めるか。失敗してもまたチャレンジすればいいしな。
その後は夕食の用意をしようと炊事場で火の準備をしていたところ、後ろでオリヴィエが期待を込めた顔で廊下からチラチラとこちらの様子を窺っていたので、期待値が上がりきる前にもう魚の在庫はないと伝えた。
言葉にはしないけど、わかりやすすぎる位にがっかりされたから干し肉入りのスープは作れるというと、普通に喜んでくれた。
食事の後は掃除を手伝おうかと思ったが、ほぼすべて終わったのと、掃除は自分の仕事と断られてしまった。
料理は・・・という野暮なことは言わないのだよ、ワタシは。
部屋の掃除が終わっているのならばと俺とオリヴィエの掃除をはじめ、ベッドの掃除が必要な状態にした。
ちょっと念入りな清掃が必要になるかもしんない。
次の日もやはり日が昇る前に目が覚めた。
日が暮れてすぐに外での活動を止めるため、後は食事とハッスルしたら寝るだけだからしょうがない。その分、朝がはやくなるだけだから別に活動時間が減ってるってことはないか。
今日も朝はダンジョンに行って、お腹が空いたら戻ってきて食事をする。
そして今回でほぼすべての食材の在庫が尽きた。
早朝の成果をギルドに売りに行ったついでに市場でまた食材を購入しにいった。
魚を売っていた屋台をわざと一回通り過ぎたらオリヴィエがあまりに悲しそうな顔をしたからすぐに戻ってニジマスっぽいのに加えて今日はアジっぽいのも売っていたからそれも買った。もちろん小魚はあるだけもらった。
まぁもし飽きて食べきれなさそうだったら入れ物にいっぱいの塩と一緒に入れて魚醤作りにチャレンジしてみてもいいかな。
大量の魚を抱えてニッコニコのオリヴィエと一緒に家へ帰って食事を作る。
今度は一緒に作って魚のフライと小魚のフリットの作り方を教えてあげたが、もう凄い真剣で、俺のすべての挙動を逃さないように学ぼうとする姿勢に鬼気迫るものがあってちょっと怖かった。
けど衣が付いて揚がった魚を油から持ち上げるたびにキラキラした表情になるのはとても可愛かった。
食事を済ませた後はまたダンジョンへと潜り、腹が減ったら引き上げる。
また街に行くのはめんどうだったから、昼以降の戦果は家の物置部屋に保管しておく。この部屋って鍵ついてないからつけたいなぁ。
起きてダンジョン行ってご飯を食べる。街へ行ってギルドや市場に行って再びダンジョンへ。お腹が空いたら帰って一日の行動を終える。
今日のこの行動はおそらくなんの予定がない時のルーティンになるだろうな。
ちなみに今日一日では俺もオリヴィエもレベルは上がらなかった。
少なくとも100匹以上のモンスターを倒したと思うが、取得経験値20倍を持つ俺達でもほぼ一日中潜っても上がらない・・・しかも普通は倒すのにかなりの時間と体力を要する。
たまーにモンスターと戦っているパーティーを遠目に眺めてみたが、やっぱり複数人で囲んで何度も攻撃し、攻撃されやっと1匹倒すといった感じだった。
こんなんであの人数の生計は大丈夫なのかと心配になったが、ドロップアイテムの報酬をよく精査したら生活は全然できそうな感じだった。
そもそも一日の成果だけで家買ったり豪華なベッド買ったりする方が異常なだけなのだ。
あらためてこの世界の厳しさと楽しさを感じた一日をオリヴィエとの歳差運動で終える。今日も最高です。
そして次の日、起き抜けでなんとなしに昨日あがらなかったステータスの確認をたまたま行った時、それに気がついた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます