第14話 レベル上げ





    名前

     アマノ サトル


    性別

     男


    年齢

     17


    種族

     人族


    職業

     戦士   Lv3

     魔法使い Lv3

     僧侶   Lv3

     盗賊   Lv3

     商人   Lv3

     奴隷商人 Lv3     





「まずはレベル上げだな・・・」


乗合馬車の人達を助けることに決めた俺は、歩きながら開いたステータスを横目に呟き、早速行動に移すことにした。


レベルは高ければ高いほどいい、いくつあったっていい。

が、レベル3が低すぎることだけは確かだ。


時間も金銭も実力すらも足りてない俺は、とりあえず森へ行ってモンスターを倒してレベルを上げることにした。


ついでにククレ草も採ってお金も稼ごう。

余裕が出来たら装備も整えたいが、装備よりは薬を揃えたいな。

回復魔法は便利だが、MPは有限なのでなるべく攻撃で使用したいし、回復はアイテムで代用できるならそっちでもいい。


ゴブリンからドロップしたポーションはあれから一個も出なかった。

ポーションは店で売っていた。


値段はたしか・・・1000ちょいだったような・・・はっきり覚えていないがたぶんその位で大きく離れてはいないはずだ。


安くはないけど、鑑定が使える俺にはククレ草は比較的簡単に採取できる。

最優先はレベル上げだが、道中にあったククレ草はしっかり採っていこう。



東門へ向かいながらも軽く方針を決め、森へとやってきた。


スキルで簡単にククレ草を見つけ、5個程腰紐にかけたところで、緑のあいつがやってきた。


最初に魔法を1発当てたあとに剣で牽制しながら時間を稼ぎ、次の魔法をくらわせたあとに全力で3度切りつけたところでゴブリンは倒れた。


明日までにどの位いけるかはわからないけど、なるべく街道からはずれたところを進んでいこう。


たまたまかもしれないけど、昨日は街道でゴブリンが出なかったからな。

ククレ草も採れないし。



俺は日暮れギリギリまで狩りと採取を行い、ゴブリンを丁度10匹倒したところでレベルが4に上がり、この勢いでレベル5まで上げられると思ったが、その後に12匹倒したところで日が落ちてしまい、ギブアップとなった。


最初は無理しても続けようと思っていたのだが、日が落ちた森というのが予想以上の暗闇だった。

月明りも木でほぼ遮られてしまうため、目の前のものすら全く見えない。


考えてみれば当たり前のことなのだが、現代で生きていた俺は夜の闇を舐め切っていた。考えが甘かった。


明かりの備えもしていなかった俺は撤退せざるをえなかったのだ・・・。



幸いそれほど街道からは離れないようにしていたためほぼ手探り状態でその方向を進んでいると、俺の目がほんの少しの光源を捕らえ始めた。


街道に出たことで遮っていた木がなくなり、月と星の瞬きがほんの少しだけ俺の道筋を照らしてくれた。


「月って明るかったんだな・・・」


足元が見えるか見えないかという、それだけでは明るいとはとても言い難い光量ではあるものの、森の中の闇に比べたら天と地の差だ。


「危なかった・・・もしあんな真っ暗な中で夜目の効くモンスターなんかに襲われていたりしたら・・・」


考えただけでぞっとする・・・。


と思ったその時



 グルルルルル



「余計なフラグを立てるんじゃなかった・・・」


振り返るとそこにはゲームで出会ったのと同じフォレストハウンドが1匹居た。


俺が気が付いた時にはもうこちらへ駆け出す瞬間だった。


「くっそ!!ファイヤーボール!!・・・ぐわっ!!」


即座に俺は魔法を放った。

直後・・・闇の先にいた敵を見失わないように凝視していた俺は火魔法の炎が出す光を失念していたため、開ききった瞳孔に多量の光が飛び込んでくる。

目の前が闇から一転して白に染まり、何も見えなくなってしまった。


「しまった・・・!!」


慌てて目を瞑ったがすぐに視界は戻らない・・・。


何処かを噛まれる覚悟をして身を縮めたが、予想外にやつからの攻撃はこなかった。


数瞬後に戻った視界に移ったのは、虚を突かれたような様子のフォレストハウンドがあった。


どうやら目つぶし攻撃を食らったのは俺だけではなかったようだ。

おかげでやつの突進はキャンセルされ、やつの攻撃に備えるだけの時間ができた。


俺と同時に視界を取り戻したフォレストハウンドはこちらに駆けだし飛びついてくる。


それを剣の薙ぎ払いで逸らす。

回避重視の攻撃だったため、それほどのダメージは与えられなかった。


だが


「ファイヤーボール!!」


クールダウンを稼ぐことは出来た。


火の玉は着地したフォレストハウンドの横腹にあたり、1m程その体を飛ばす。


俺はその隙を逃さないように駆け出し、起き上がろうとしているフォレストハウンドに剣を振り下ろす。


するとシステムサポートが表示され、フォレストハウンドの絶命を知らせてくれた。


「ふぅ・・・何とかなったか・・・」


やばかった・・・。

出会ったのが街道でよかった。あいつとあの闇の中、森で出会っていたら勝っても確実に攻撃を食らっていただろう。


戦ってみた感じ、フォレストハウンドのHPはゴブリンとほぼ同じくらいだと思うが、あの牙に噛まれたいと思うやつは命知らずか真正の変態だけだろう。


あいにく俺はそのどちらでもない。


「とにかくもうこの闇の中で戦いたくない。街へ急ごう」



やはりマイナスなことは口に出すべきではないのだろうか。


俺の行く先にゴブリンが現れた。

しかも2匹。


なんで初の複数相手が夜なんだよ。


昨日は街道で1匹も出会わなかったのに、今日に限ってこんなに出会うとは・・・。夜はモンスターの活動が活発になって遭遇率があがるのだろうか・・・。


だが、先に見えるゴブリン達はこちらに気が付いていなかった。


俺は街道横の木に隠れ、左手だけを出して小声で唱えた。


「ファイヤーボール」


今度は先の失敗を教訓に目をつぶっていたため、闇に目が慣れた状態のままだ。


火の玉が後頭部に直撃してゴブリンは苦痛の叫び声をあげながら突っ伏したが、すぐに起き上がり、横のやつと一緒にキョロキョロと周りを見ていた。


まだこちらには気が付いていないようだ。


俺はさらに最初に当てたゴブリンへと狙いを定めて魔法を放ち、倒す。


さすがにこちらに気が付いた残り1匹がこちらを見つけ、こん棒片手に向かってくる。

木の陰から飛び出して剣を構える。


暗い中だがゴブリンの無防備な雄叫びと足音で相手との距離は思ったよりもしっかりと計れた。


こちらの間合いに入った敵を渾身の力を込めた剣で迎え撃つ。

肩口から入った銅の剣がそのまま進み、ゴブリンの腹あたりから出る。


次の攻撃へ体勢を整えた俺だったが、システムサポートの表示が出てゴブリンを倒したことを知らせてくる。


なんと一撃で倒せた。


そしてステータスを確認すると、レベルが5へと上がっていた。


1匹目を倒したときには確認しなかったから今のであがったのか最初のゴブリンであがったのか確認してないが、たぶん最初の1匹であがったのではないだろうか。


剣がゴブリンにすんなり入る感覚がそれを知らせていた気がする。


「ゴブリンは1発でいける。まぁ剣の攻撃はムラがあるから必殺ではないかもだけど・・・」


もしフォレストハウンドも1発でいけるのであればかなり有利になる。

それを作戦に織り込むほどではないが、一つの指針にはなるだろう。



それ以降も一応警戒はしながらファストへ向かったが、そんな時に限ってモンスターには出くわさず、すんなりと街へとたどり着くことが出来た。


よかったのか悪かったのかといえばよかったのだろうが・・・なんか納得できん。

出るなと思うと出るのに出てもいいと警戒すると出ないという・・・。


まぁいいか。


俺はすでに閉じた門の左側についている通用門をノックし、マーキンを呼び出してファストへと入った。



その後に冒険者ギルドでククレ草を換金し、銀貨と銅貨をいっぱい受け取ってそのまま宿へとやってきた。


武器屋や万屋へ行って装備を整えようかとも思って寄ってみたが、日暮れと共にしまってしまうのだろうかすでに店は閉まっていたのだ。


こっちは早起きしていけばいいだろう。

どうせ宿に戻っても飯をくったらもうやることもないから寝るだけだし。


日は暮れたといっても時間にしたらまだ21時にもなっていないだろうし、こんな時間に寝ればしようと思わなくてもおのずと早起きできるだろう。




明日はいよいよ襲撃の日だ。

準備万端とはいえなくてもできることはやったつもりだ。


後は運を今持つ実力で引き寄せることにしよう。

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