策謀渦巻く文化祭<2>
−−文化祭の企画会議
Dクラスの出し物について、入宮案で出てきた"空き教室の使用"について議論が集中していた。
「確保するって教室は空いているとは言え、自分の教室以外の部屋って予算がかかるとはいえ上限ないの?生徒会は何って言ってるの?」
いきなり予想外の話を出されてもどう反応すればいいのか困る。決定権は俺にはないしな。全員の目がこちらを向いている。
「空き教室をいくつでも使うのはありなのか、については調べておくよ」
「親戚なんでしょ。無理にでも強引に推し進めなさいよ」
無茶言うな。俺達は表向き親戚つながりはない事になっているし、第一、東山はその程度の関係では絶対に折れない。
「ただし聞いてはみるが、他のクラスに知れ渡ったら妨害工作の一環として場所取り合戦が始まる。情報は俺のタイミングで知らせる」
「俺達にも教えてくれないのか?」
「そうだ」
黙っていた親戚関係でさえ夏休みの終盤には学校中に知れ渡っていたのだ。誰かに話せば必ず情報漏洩が起きる。そこに妨害工作として不要な勝負を持ち込まれれば、いたずらに予算を浪費してしまう可能性もある。この事態だけは避けたい。
という訳で、生徒会に申請した結果は自分のクラスでも知らせない。準備は自分達の教室の中で希望を出した部屋の最大値を想定して粛々と進められている。落選した場合は予備として使えばいい。廊下から見た限り、他の教室を使う用意をしている様には見えないだろうしな。
「入宮さんの提案を元にテーブルクロスと造花を注文するけど、これでいい?」
経理担当の
「うん、いいと思うよ。田中さんよく安くていい物見付けたね」
「ありがとう」
その一方で、ゲームの内容を何にするのかという問題も出てきていた。
入宮のアイディアではオセロ、チェス、トランプと出てきたが、短時間で誰でもできそうなゲームが一つもない事が問題だった。
「将棋崩しとか」
「ジェンガとか」
「ダーツとか」
今すぐ結論を出さなくてもいいが、使える方法が多いにこした事はない。
「ちょっと3年の先輩に手伝ってもらうか」
俺は風紀委員の清水に連絡をとった。
簡単にできるゲームとして腕相撲をチョイスした。大学入試対策のおかげで3年はクラス単位の出し物は出せないが、個人がヘルプ要員として動く分には問題ない。なので筋肉に自信がある清水一人を調達できれる、というわけだ。本人の筋肉自慢も発揮できるしな。二つ返事で引き受けてくれた。ただし、子供が相手なら手加減してほしい、と注文をつけておいた。
さて、他のクラスがどんな出し物にするのか図書館にいる時に岡田に聞いてみた。
「ゲームとして、あらゆる場所にQRコード貼って、トレジャーハントをしてもらうという事らしいです。他クラスの出し物に目もくれずに集中してくれる算段だとか。当日教室で個人別にwebアプリを立ち上げてもらい、来客全員が情報交換をしながらあらゆる場所を探していくという他クラスからしたら迷惑この上ないゲームです。QRコードしか貼ってないとと他クラスも何のQRコードなのか分からないでしょうね」
なるほど、教室以外の場所を使った出し物か。Dクラスとは別のやり方だが、舞台を学校その物にするとはいい作戦かもしれない。生徒会も来客の邪魔にならず、通路をふさがないという条件付きでGOを出したに違いない。俺は聞いてないが。にしても高一でwebアプリを作れる奴がいた事自体驚きだ。背後に誰かいるのか?
Bクラスは縁日をモチーフに射的や水ヨーヨーすくい、輪投げなど、日本の伝統的なゲームに絞ったらしい。出店と教室で完結させる手堅いやり方。
Aクラスは体育館で演劇・・・他にも何か考えているが、そこは秘密らしい。
Bクラスとコンセプトが似通ってしまったな。まぁこっちには日本の伝統縛りはないからその分の優位性は確保できているのだが。
放課後、生徒会への空き教室の申請をしたのだが、俺は厳しい結果を持って教室に入った。
「それで?空いてる教室は確保できたの?」
由佳達女子が俺の所に詰め寄る。そのまま机に行っても囲まれて終わりなので、全員に聞こえる様に教壇に立った。
「やっぱりこっちが希望した教室の中の数ヶ所で対決が決まった。どれがどれかは秘密だ。向こうにも情報は非公開と承諾をもらっている」
「・・・内容は?」
「勝負内容はそれぞれ英語10門と数学10門。範囲は1学期の間。問題はそれぞれ先生が作成してくれる」
「指名って英語とか数学苦手な人を狙われたら終わりじゃない」
「それはこちらとて同じだ。弱い相手を狙えばいい。で、全てのクラスが指名してきた人物というのが・・・」
俺はクラスの中を一度見渡して口を開いた。
「
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