策謀渦巻く文化祭<1>

−−週明け


体育祭終了の後片付けをしていた時に出会った佐野 優さの ゆうという女子。この件で次の日に何かくるかと意識していたのだが、この話は意外と学校中に広まらなかった。噂が簡単に広まるはずの学校でなぜ?仕方ない、情報収集のために自分から切り出すか。


「体育祭の時に凄え可愛い女子に話しかけられたんだよ」


「どこのクラスだよ?」


「・・・聞くの忘れた」


「名前は?」


「佐野って言ってたかな?」


佐野と言われて隣席四天王は顔を見合わせた。


「女子で佐野っていたっけ?」


「転校生か?」


誰なのか本当に知らないらしい。上級生だろうか?




−−文化祭の企画会議


中間テストが終わった頃、本格的に会議をする時期に入った。クラス委員の小野が教壇に立って司会進行をつとめる。この文化祭はクラス、学年対抗戦で、売上一位のクラスに景品が授与されるらしい。まぁ一人につき1,000円程度のAmazonギフトカードなのだが。


一つ課題がある。それは各クラスに予算が当てられ、用意する機材などはその予算の中からやりくりさせる、というもの。確かに売上のために無尽蔵に経費を使われては困るしな。


「どんな出し物にする?誰か案あるか?」


突然そう言われても誰も今考えたばかりの安っぽい案しかないだろう。


「ふっふっふ。私にいい考えがあるのよ」


珍しくクラスメイトの中で入宮が席を立った。


「カフェよ、カフェをやるのよ」


「お前まさかメイド喫茶をやろうとか言わないよな。一周回って時代遅れだろ」


「そこはどんな格好をしていてもいい。制服姿でも私服姿でもコスプレでも指名がもらえるなら何でもあり。メインはここからで、カフェと一緒にオセロやチェス、トランプといったゲームを追加料金でプレイしてもらうの。景品としてチェキの無料使用権二倍。クラスの中では客席を担当したくない人はゲームの方に、ゲームが苦手なら接客の方に、どちらも苦手な場合は注文の用意でクラスを別けて運用する。チェスなら本窪田もとくぼた君できるでしょ?」


「そのゲームの要素を入れると客の回転率が悪くなる。そこはどうする?」


「誰も使わない空き教室を借りてそこに移動してもらうの。場所取りって最上階なんか誰も行きたがらないじゃない。そういう所を狙っていけばスムーズに進むと思うの。どう?」


「・・・なるほど、アイディアとしてちゃんとしているし、いい案だと思う。これをベースにアイディアを出していかないか?場所の軒数など詳細を煮詰めていく参考にもなる。場所の確保で全学年相手にケンカを売る事になるからな。もちろんこの教室だけで完結する別の案が出てきたらそっちの可能性も考えてみよう」


「本当はクレーンゲームでおでんをすくい上げるってのをやりたかったけど、お金かかるからさぁ」


「それは衛生的にダメだろ」


他に入宮の案を超える提案は出てこなかった。こいつ随分前からこの日の為に備えていたな。空き教室が出る事も計算済みのようだ。


「問題はその空いている教室の確保よね。外で例えれば校門から校舎までに出店でみせが並んだりするじゃない?ああいうのだって許可いるでしょ。それにタダとは思えない。これも予算がからむんじゃないの?」


「そこは生徒会の俺から説明しよう。これは例年の実地軒数と配置図だ」


俺は持っているタブレットからクラス全員用のメールにファイルを添付して送信した。


「出店として使用できるのは今話した通り校門から校舎まで、軒数は左右合わせて18軒にグラウンド周りの20軒。出店に必要なガスボンベや調理器具などは学校に申請の上、支給・設置される。校舎内は自分の教室は無料。その他空き教室と多目的室、校庭、調理室と理科学室が使用可能。屋上は使用禁止。廊下は通行を妨げない程度なら許可されている。部室棟は二階まで。視聴覚室と体育館のステージは演劇部、吹奏楽部が優先で一時間制の使用が可能。この出店の場所や自分の教室以外の場所を使うのに場所代を投じる必要もある」


「どれも競争率が高そうだけど、かぶった時はやっぱくじ引き?」


「希望が重なったところは互いが納得するやり方で勝った方が占有権を持つ事になっている」


「お互いが納得するやり方って?」


「例えばさっき出たくじ引き、じゃんけん、オークション、教師の買収、校長の接待、何でもありだ。同一の場合は別の方法での再戦となる」


「最後の二つって高校生がやっていいの?」


「立会はとうやm・・・ゴホンッ生徒会長が行う」


「いや〜さすが生徒会。本窪田もとくぼた君がいてくれて心強いよ」


これも女子にモテる為の1ステップに過ぎない。そう、俺は計算高い男だ。

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