争奪戦

−−プール


チェス部の三泊四日の合宿が終わり、それぞれが普通の高校生に戻っていく。本格的に夏休みを楽しむためにある計画を立てた。妹の千尋、幼馴染の由佳、図書委員の岡田真実、クラスメイトの入宮理音といった女性陣に加え、男性四天王(藤田達也、井上博之、市川徹、武田大輔)を連れてプールで遊ぶことになった。入宮と岡田は恥ずかしいのか、ワンピースの水着を気ている。他は色とりどりやフリル付きなどのビキニ姿だ。


プールでは、男性四天王と共に様々なアクティビティを楽しんだ。ウォータースライダーで競争したり、波のプールで遊んだり、ビーチバレーをやったりと、プールでの一日を謳歌した。


「よう本窪田もとくぼた。お前も来ていたのか」


げっ。風紀委員の清水だ。この脳筋の事だ、マジ泳ぎに来たに違いない。間違いなく連れて行かれるな。何とかして逃げなければ。


「やはり俺の見込み通りだな。いい筋肉してやがる。本当に何もやってないのか?」


あぁ〜やっぱりそこ見るのね。


清水の目が鋭く俺の体をチェックしている。彼の熱心さは本当に困る。


「さあ、一緒に泳いでトレーニングしようじゃないか」


「いや、俺はただ友達と遊びに来たですよ」


俺の目的は水着姿の女性達とキャッキャウフフな一日を送る事だ。筋トレに来た訳ではない。


「だったら全員鍛えてやるのみ」


こいつは何を言ってるんだ?今、女性陣が何を着ているのか理解しているのか?


清水の言葉に、女性陣も困惑している様子だ。妹の千尋が心配そうに俺を見ている。由佳や岡田も何が起こっているのか理解できずにいる。


「清水先輩、今日はリラックスする日だから、トレーニングはまた今度でいいんじゃないですか?」


俺は必死に説得を試みる。


「リラックスも大事だが、身体を鍛えることはもっと大事だ。さあ、全員で泳ぎのトレーニングを始めるぞ!」


清水の強引な提案に、周りの視線が一斉に俺に向けられる。これはまずい。なんとかしてこの状況を乗り切らなければ。


「清水先輩、私が兄に泳ぎを教えてもらいたいって言ったんです。だから今日は特別なトレーニングの日じゃなくて、家族と友達との時間を大切にする日なんです」


千尋が機転を利かせて言った。清水は少し考え込む。


「ふむ、なるほど。妹さんがそう言うなら仕方ない。今日は特別な日として見逃してやる。その代わり、次は絶対にトレーニングに付き合えよ」


清水はそう言い残して去っていった。助かった。千尋のおかげで難を逃れた。


その後、プールでの楽しい時間は続き、俺たちは一日の終わりを楽しんだ。妹の千尋、幼馴染の由佳、図書委員の岡田真実、クラスメイトの入宮理音、そして男性四天王達と過ごす時間は、本当に貴重な思い出となった。




−−別の日


今日、俺は隣に住んでいる幼馴染の由佳と映画を観に行く日。行きたがったのは由佳の方で、気になる映画をやっているのだが、一人で映画館に行く度胸がないらしい。要するに俺は付き添いと言う訳なのだが、これはこれで女性とデートしている感があって良い。


本窪田もとくぼたじゃいか。今日は鍛錬に行くのか?」


「オススメの一冊があるんだが、これから本屋に行ってみないか?」


「おっと、夏休みは生徒会らしく、皆の模範となるべき態度を取っているだろうな?」


「こんな所で会うとはな。せっかくだ。例の喫茶店に行ってチェスの手ほどきをしてやる」


風紀委員の清水、図書委員の田中、生徒会副会長の小林、チェス部の鈴木、何でこの四人が一度に現れるんだ?


「んだとこの野郎!生徒会に盾突くつもりか?!」


「そっちこそ生徒会の分際で表で張り合っていいのかよ?!」


本窪田もとくぼたはな、自ら立候補して書紀になったんだよ!」


「それはこちらとて同じ事。自分から副部長の座を選んだんだからな!」


歩道の真ん中で口論を始めた。えーっと、俺達は立ち去っていいんだよな。由佳が困った表情を浮かべて俺に小声で話しかけてくる。


涼真りょうま、どうするの?早く行かないと映画始まっちゃうよ」


「そう言えばムビチケで座席確保してたんだっけ?」


映画館に到着し、適当な飲み物とパンフを購入した。由佳は少し照れくさそうにしながらも、嬉しそうに笑っていた。


由佳が観たがっていたのは"星の王国と魔法の鍵"という作品。


遠い昔はるかかなたの銀河で・・・。

星の王国は魔法の鍵によって平和と繁栄を保っていた。

ある時、魔法の鍵を邪悪な魔女に奪われた。

取り戻すために心優しい農家の娘と勇敢な王子は旅に出た。


と言う話らしい。俺的には映画自体に全く興味はないのだが、この四人を巻くのは容易ではないだろう。その証拠に俺達二人の後ろをゾロゾロと付いてきている。


ふっ。ムビチケで座席の予約してないとシアターには入れないんだよ。と、勝利を確信した俺だったが、四人共当日券の券売機に向かった。全席予約じゃない?!当日券もあったのか!うかつー!


「「「こうなったら!」」」


と、全員スマホで誰かを呼び始めた。


「何するつもりですか?」


「応援を呼ぶ。映画が終わった辺りで合流する。下手に動くなよ」


応援?援軍の事か?と、映画館から出てみると、図書委員から岡田、生徒会から東山、チェス部から佐藤が現れた。全員女性。色じかけか。・・・あれ?とすると風紀委員は誰が来るんだ?会った事ないぞ。待っていたら歩道の人を避けながら一人の女性が現れた。


「なんで・・・いきなり来いとか言い出すの?!」


「紹介しよう。風紀委員長の・・・」


松山 瞳まつやま ひとみ


こちらが握手のつもりで手を出すと、松山は嫌な物を見るように手を引っ込めた。


「それで清水君、呼び出してなんの用事?」


「こいつ、本窪田もとくぼたって知ってるよな。今争奪戦をやっている。サポートしてほしい」


「はぁ?冗談でしょ?」


「こいつには未来の風紀委員を引っぱってもらいたいんだ」


突然現れた風紀委員長も委員長だが、清水も清水だ。入学式から今までそんな話は出なかった。あったとすれば筋肉の話だけだ。


「あれ〜偶然だね。君達とこんな所で会うなんて」


ここへさらに担任の永田先生まで現れた。頼むからこれ以上話をややこしくしないでくれ。

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